「マルメゾン」
 大山栄蔵 氏


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1949年、埼玉県生まれ。香川栄養専門学校卒。同校製菓部で助手を務めた後、
六本木「ルコント」にて修業。'71渡仏。トゥール、パリで修業後「プラザアテネ」に勤務。
'75年一時帰国。スイス「コバ製菓学校」を経て、'78年「マルメゾン」を開店。'93年、赤堤店、'97年、新百合ヶ丘店をオープン。


「オリジナリティが大事」と大山シェフ。それが長くお店をやってきた秘訣のよう。成城に店を構えたのは20年前。‘2階でベランダがあったこと’がここにする決め手となったそうだが、まわりからは「2階で成功した人はいない。」とずいぶん反対されたとか。
そんな言葉とうらはらに店は有名店に成長。取材の日もカフェには、ベランダの花を眺めながら、ケーキをほお張る老婦人の姿があったが、なんともいい雰囲気を醸しだしていた。

オープン当時、フランス菓子の個人店は都内にまだ4、5軒しかなく、「マルメゾン」のプティフールを通じてフランス菓子の美しさや美味しさを知った人も多い。こうした本場仕込みのフランス菓子をベースに、最近では旬のものや新しい素材を使った目新しいお菓子も増えてきた。季節のフルーツをふんだんに使い、ヨーグルトクリームと合わせた「プランタン」くるみのクリームをンドした「そば粉のダックワーズ」などがそれだ。大山シェフは「邪道でないようなところまではいこうかと思う。」と笑う。

また「ミルフィーユ」や「トルネード(アーモンドパイ)」などのパイ生地も特筆すべきものがある。クリームをはさんだり、時間がたっても生地のサクサク感が失われないのだ。
理由をうかがうと「生地を練るときに水を使わず、低脂肪の生クリームで練っているので、食感がとても軽く、普通のものよりサクサク感が持続するんです。」とのこと。お店では特にこのことはうたっていないが、一口食べたら違いがきっとわかるはず。

味についての考えは、「一般的に砂糖、アルコール、バターなど使う量は昔より減ってきていて、時代に合わせて、変えるべきだと思います。ただ生地類の砂糖を減らしてしまうと良いものはできないので、シャンティ(泡立てたクリーム)の砂糖を減らしたりと工夫が必要。」ということだった。そして自分自身も年とともに食生活が変わり、好みの味も少しづつ変化してきたそうだ。

「月並みだが、いい材料を使って、できるだけ買いやすい値段で提供したい。こちらから強くアピールするんじゃなくて、お客さんわかってよって感じですかね。」 じわじわっとおいしさを浸透させていくのが大山シェフのスタイルのよう。「今後のことはあまり考えてないですよ。」というシェフだが、オリジナルのお菓子を考える日々はまだまだ続くのだ。

取材日 1998年