オーブンミトン
小嶋ルミ 氏


小嶋さんをクリックすると声が…





1958年、鹿児島県生まれ。日大芸術学部卒。
フランス料理のシェフであるご主人と結婚。
その後、製菓学校を卒業し、中村屋「グロリエッテ」で修業、
横溝春雄氏の指導を仰ぐ。
'87.3月、東京・小金井市に「オーブンミトン」をオープンし、現在11年目。


バターの香りがするお店、ケーキ屋さん多しといえどもなかなかないのでは。
「オーブンミトン」が近づいてくるとバターの何とも言えない香りが漂ってくる。子供の頃、母の作ってくれたケーキが焼き上がるのを待ちわびるような、そんな懐かしい気持ちにさせてくれる。
オーナーの小嶋ルミさんは、女性シェフの草分け的存在で、雑誌・テレビでも活躍されているのは皆さんご存知の通り。お店のドアを開けると、小嶋さんが笑顔であらわれた。

"いつ辞めてもいい"と軽い気持ちで始めたお菓子の修業。まさかお店を持つとは思ってもいなかったそう。「夫がフランス料理をやっていたので、自分はデザートができたらいいなというのがプロを目指したきっかけなんです。お店はたまたま物件があったから。」と笑う小嶋さんだが、女性なりの苦労もあったはず...「長い修業をしていないので、ケーキ屋さんやオーナーの苦労とかわからないまま始めてしまったんです。女性がやってるお手本もなかったし。"こうやらなきゃいけない"とかないので、自分がいいと思うことをやってきて、逆にやりやすかったですね。」との答え。お菓子づくりについても「業務用の作り方っていうのは少ししかマスターしてなくて、本当においしいのは、手作りの小ロットで作るものというのが身にしみて分かっているので...最近、業務用の汎材料がなんでも揃っていて、そういうものを当たり前のように使うお菓子屋さんも多いですからね。自分たちが女でよかったなと思います。」と安心して食べられるものの重要さを最近ひしひし感じるという。

スタッフは女性のみ。特に募集したわけでなく、皆ここで働きたいと集まってきた人ばかりだ。他のお店で働いていたとき、どうしてフルーツ漬けを自分の店で作らないのかとか、なぜ添加物を加えるのかなど疑問をもっていたスタッフもオーブンミトンのケーキでその疑問が解消されるとか。
とはいうものの、家庭のお菓子の延長では売りものにならず...小嶋さんのめざすお菓子は添加物、香料、汎材料は使わず安全性の高い、そして「味がうすいのはイヤなんです。」というように素材の持ち味をきっちり生かしたもの。
こうしたお菓子を広く伝えるため、オーブンミトンでは教室も開いている。そこでは家庭でできる、だが今までの菓子研究家とは違う、プロの仕上がりをめざすような作り方を教えているそうだ。
さて、小嶋さんは近々フランスへスタージェ(研修)に行かれる。昨年は、ムール・ア・ガトーという菓子店と2つ星レストラン・アピシウスでチョコレートのお菓子を中心に腕を磨かれたそうだが「今年は素朴な焼きっぱなしのお菓子とか粉の味に注目しようと思ってるんです。」と今からワクワクしている小嶋さんである。
この研修のため、お店は約4ヶ月休業となるが、秋には現在の店舗のすぐ近くにサロンドテをオープンされる。どんなフランスみやげを持って帰ってくるのか大変楽しみだ。

小嶋さんには、気負いのようなものがなく、とってもチャーミングなひと。"あたたかみのあるお菓子はこうした人柄から生まれるんだ"と納得しつつお店を後にした。
取材日 1998年



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