パン・ア・ラ・ビエール

山宮 賢一 氏

今年で130年目という熊澤酒造の6代目蔵元、熊澤茂吉さんが、ビールの視察でサンディエゴに行ったそうなんです。そこで、ビール工場とパン工場、それを見事に調和させたレストランというのを発見したそうなんです。

熊澤さんは日本に帰って、まず地ビールである『湘南ビール』を誕生させ、同時にビールが飲めるレストランをはじめました。これが6年前のことです。そして「いつかはパンを」って思い続け、レストランの経営も落着いた2年前、「そろそろパンだ」って思ったみたいです。自分は今年に入ってから、「パン職人を捜している人がいるから紹介したい」と知人に言われ、初めて熊澤さんに会いました。

自分はそれまで、ホテルを中心に大手のところでしか勤めたことがなかったんです。作っても、お客様の顔が見えない。声が聞こえてこないんですね。だから、「こぢんまりやりたいんだ」という熊澤さんの言葉にまずひかれました。そして次の段階でここの場所を見に来たら、もっと気に入っちゃったんです。確かに便利な場所ではありません。でも、広い駐車場があるし、緑は多いのどかなところだし、レストランにはテラス席もある。そのテラス席の正面にある倉庫を改装してパン屋にするという話で、すぐに「是非やらせてください」と話がまとまったんです。

パンに関しては、完全に任せてもらっていて、アイテムも自分で決めていますし、素材を選ぶこともできます。今、店にあるのは18種類。その中でお酒に関係しているのは一つだけ。水のかわりにビールをそのまま入れた<パン・ア・ラ・ビエール>というパンです。せっかくだから、あといくつかこういうパンを増やしていきたいというのは、自分の考えでもあるし、熊澤さんの意見でもあります。例えばビール酵母を使ったパンとかですね。常に頭の片隅にあるので商品化ももうすぐかな。ちなみにビールの酵母には、ライ麦が合います。できたパンで、ソーセージとか挟んだサンドイッチなんて面白いかなと思っているんです。今、惣菜パンが一つもないのですが、お客様からニーズもあるので、まずサンドイッチを作りたいんです。

レストランでもこのパンを出しているのですが、食べた方が「美味しかった」って帰りに買って帰ってくださるのは嬉しいですよね。買ってくれることも、そうした声が届くのも、自分にとってどっちも嬉しいんです。

取材日 2001年10月





山宮さんと熊澤社長





パン・ア・ラ・ビエール
茅ヶ崎市香川2292
TEL:0467-52-6144

山宮さんの秘密