パティスリーSATSUKI 中島 眞介さん 

   


ホテルっていうのはね、本当に面白いところです。和食、フレンチ、イタリアン、中華、それぞれ本格的なレストランが入り、外国の方も多い。独特のグローバルな感じがあるでしょう。これはケーキ作りの厨房にも言えることなんです。

例えば胡麻を使って何か作ろうとしたとき、やっぱり手に入る最高の胡麻が使いたいじゃないですか。自分がいいと思うのはこれだけど、もっと上があるかもしれない。そう思ったら和食の料理長に聞きに行きます。

アンズの知識が欲しかったら中華。「あそこの地域で取れるものは香りだけで味はいまひとつ。こちらの地域でとれたものの味は最高で、中華ではこれを使っている」と料理長に教えられ、食べても納得しました。じゃあケーキに使うにはどうしたらいいか、と考えた結果、今は"あそこ"のと"こちら"のをブレンドして使っているんですよ。お菓子には香りもとても重要ですからね。




それぞれのレストランからの要望でお菓子を作ることも多いです。アイスクリームなんかは全部うちで作っているので、種類で言ったら、40は下らないはずです。

厨房には41人のスタッフが入れ替わりで入っていますが、毎日誰かが何か面白いものを試作していますね。自由にやらせていますし、私としては、いいものがあったら積極的に商品化する姿勢でいます。でも、実は商品化はそう容易ではないんです。
アイスクリーマー

うちに和素材を使ったものが多い理由にもなりますが、となりに「ピエールエルメ」があるでしょう、そことはある程度差別化したお菓子をおかなければいけない。だから「ピエールエルメ」のこともちゃんと知らなくてはならない。

それにホテルは数が出ますから、ごく少量しか手に入らない素材のお菓子を商品にするというのも難しい。ホテルの客も理解した上で、売れるものでなくてはいけないから、商品化は結構大変なんです。それでも「こんなの作ったんですけど、どうですか」と持ってこられるのは、シェフとしては嬉しい限り。若いスタッフが開発してショーケースに並び、人気商品になったものも、もちろんあります。
ピエールエルメ専用厨房

厨房では、「明るく楽しく美味しいものを作ろう」がモットー。自分はそれほど厳しいシェフではないと思うんですが、上の立場として、言うべきことははっきりスタッフに言うようにしています。みんなにはドンドン伸びて、いいパティシエになって欲しいですからね。

先ほども話したように、各国の色々なアドバイザーも近くにいるし、牛乳やバター、チョコレートなど使っているアイテムも多い。こういったホテルならではの環境で、幅広く学んで大きくなって欲しいと思っています。その手助けは私の義務。最近は女性パティシエの活躍もめざましい。しっかり目標が見えている人が多いように思います。

ピュアメロンゼリー

あと、スタッフにいつも言っているのは、語学をやりなさいということ。外国に行ったとき、文化も技術も早く吸収しようと思ったら、まわりの人と仲良くなることがキーでしょう。そのためにある程度の語学は必要。英語とフランス語で、少なくとも自分の仕事の範囲のコミュニケーションがとれるくらいには、なって欲しいですね。

パティシエブームといわれて久しいですが、自分としては意識していません。やるべきことをしっかりやるのみ。本物の味が大切な時代です。しかもお客さんにお金をいただいているわけですから、ごまかしのないきちんとしたものを作り続けたいと思っています。

え? うちのケーキ、他店より大きいですか? 確かにそうです。「もうちょっと」がいいのは料理。「もういいや」までいっちゃっていいのがお菓子かなあと。あまいものが好きな人には特に喜んで頂いている大きさです。なんといっても、自分自身甘いものは大好きなのでこうなっちゃうんですよ。


パティスリーSATSUKI
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中島さんの秘密