パティスリー ペルティエ
(パン)

志賀 勝栄

新潟の出身で、大学浪人中に東京に出てきました。当時北区に住んでいて、予備校の授業が昼過ぎに終わって家に帰るとき、『オルブロート』というパン屋の前をいつも通るんです。しかもその時間って、ちょうどフランスパンの焼き上がりなんですよ。「大きい割に結構安いじゃないか」と思い、いつも買っていたんです。この思い出が、就職を考えたとき蘇って、パン屋に就職しました。

今の店は3店目です。この店に来たとき心に誓ったのは、「形で媚びないぞ」ということ。何を置いても味重視です。バゲットを見ると分かるかもしれません。他の店より決してきれいな形ではない。ボリューム感に欠けると思う。でも、美味しさを追求し、自分の持つ技術を集結した結果がこれなんです。生地を、20〜22度で15〜20時間熟成させるという方法で、噛むほど小麦の味がする、一番素材の美味しさを感じる作り方だからこそ選んだ製法。考えられるベストを尽くした結果が、今作っているパンなんです。

もちろん、素材も味重視。「あの粉を使えば形はよく仕上がる」というのが分かっていても、「この味が旨い」と思う粉を、迷わず使います。塩はブルターニュの塩をすべてのパンに使っていますが、これもいろいろテストした結果、一番他の素材が引き立つと感じたものだから。

なんでも自分で実際試すのは大切です。実は『アートコーヒー』にいたとき、商品開発をしていたんです。商品にならなかったパンもたくさんあるけれど、ありとあらゆることを実際に試したことは、今でも自分のベースや蓄積となって役に立っています。

先日、パリに行ったとき、「これはかなわない」と思うほど美味しいバゲットを食べました。その味を越えたいと、今、また新しい製法など考えています。だって、その店と同じ製法でやったのでは、どうしたってその味は越えられないわけでしょう? 誰にも負けたくないから、発想から変えて、世界一美味しいバゲットを焼きたいんです。夢は、年に一度パリで開催される、バゲットコンテストで優勝すること。ちなみに優勝すると、それから1年、大統領に毎朝パンを届けられるんだそうです。パリに住まなくちゃいけなくなるかもしれません。

継続は大事だと、自分が師匠と仰いでいた人に言われたことがあります。「第一線で、職人で居続けられるならそこで続けるべきである」と。だから、続けられる限り、パンを焼き続けていきたい。とどまっていないで、常に今より上の美味しさを求めていきたい。そして、自分ひとりの職場ではないから、上に立つものとしてまわりのスタッフのいいところを伸ばしていきたい。そうするとチームワークが生まれ、必ずいいもの、すなわちますます美味しいものが生まれてくると思うんです。

取材日 2001年11月










パティスリー ペルティエ
東京都港区赤坂3−1−6ベルビー赤坂1F
TEL:03-3588-5023

志賀さんの秘密