ら・くら

倉本 勝 氏


1968年生まれ、奈良出身、浜松のケーキ屋で3年働いた後、キャトルで10年。2000年10月3日ら・くらをオープン。

2000年10月3日、店をスタートさせたあの日は正直驚きました。ずらっと、畑の中に、自分の店のケーキを買うために行列ができているのですから…。
開店を知らせるためにやったこといえば当日近所に配ったビラくらい。ただ、こんな畑に囲まれたところですが、店の前の道路は国道から国道への抜け道で、意外と車が通るんです。工事中の時から『10月3日オープン』という看板だけは出していたので、毎日のようにそれを見ていた方が、どっと来て下さったのかもしれません。
初日、2日目と、商品の生産が追いつかず、午後3時に店を閉めることになってしまいました。これはもう無理だと、この時点で週休3日を決意しました。
4日目には店を閉めて5日目の分を作ることに徹したんです。最初の一ヶ月は、本当にもう毎日徹夜でしたね。

東京の『キャトル』という店で10年働いていたんですが、オープンにあたってはそのキャトルの社長も駆けつけてくれ、色々なことを手伝ってくれました。それから、今に至るまで様々なアドバイスをしてくれます。いまこうやって、自分が経営もする立場になったからこそ分かる当時の社長の話などもありますよね。

東京を離れ、故郷である奈良の、市にもなっていないような小さな町に店を出すことは、最初もちろん不安もありました。「古風な土地だから、和菓子なら受入れられても洋菓子は無理」なとど言われ、悩むこともありました。でも、思ったんです。時代は和菓子より洋菓子だし、本当に美味しいものならどこでも受入れられるはずだって。東京で作っていた時よりも、少しだけふんわりしたスポンジにしたり、値段をおさえたりと、お客様に喜んでいただけるための若干のアレンジをすることはあります。

一番売れるのはシュークリーム。毎日買ってくださるお年寄りの方などもいて、それはもう、嬉しいですよ。それからプリン。これは、キャトルにいた時の<うふプリン>というのとほとんど配合は同じなんです。違うのは火の通し方。ゆるすぎでしゃばしゃばにならない、でも普通のプリンのような硬さまではしない。この微妙なところで勝負しています。バニラは使いません。濃厚すぎずシンプルなんです。毎日でも食べてもらいたいから、プリンに限らず、「もうちょっと食べたい」と思う味にしているんです。

勝手にね、時々想像するんです、お客さんを見ていて。例えばお父さんらしき人なら、家にお土産かなあって。ケーキを買って帰って、子供たちが集ってきて、箱を開ける。そこで「わー、嬉しい!!」ってなるようなケーキ。もちろん、食べながらも笑顔がこぼれるケーキ。箱を開けてがっかりされてしまったら、お父さんや子供たちの気持ちは…と考えると、絶対に手なんか抜けないです!
取材日 2001年
※ 現在は週休2日(日曜月曜休み)

ら・くら
奈良県磯城郡田原本町三笠107−4
TEL:07443−2−8639


倉本さんの秘密