リヴゴーシュ・ドゥ・ラセーヌ

礒部 功 氏

パリにあるお菓子屋さんみたいなイメージでこの店を作りました。好きなお菓子は伝統的なフランス菓子。パリに修業にいったとき、必ず食事にデザートがついてくるというお菓子と生活の密着を強く感じたと同時に、伝統の凄さというのも感じました。今、店でも自分なりに伝統のお菓子を再現して作っています。それから食べて飽きのこない焼き菓子や、ヴィエノワズリも好きですね。自分が好きなものだから、ヴィエノワズリは売れても売れなくても意地で作り続けていきたいと思っているんですよ。

出身は東京です。実家がお菓子屋なのでこの仕事を始めました。北海道は妻の出身地。東京に比べ、ケーキではいわゆる"フランス菓子"にまだなじみが薄く、パンではハード系を求める人が少ない土地です。でも、ここでオープンして3年ですが、徐々にそれも変わりつつあるのを感じます。甘さについては、冬が寒いからか東京より強くても抵抗なく食べてもらえている気がしますね。北海道に来て感じたのは、ベリー系をはじめとしたフルーツの良さ。同業者やレストランのシェフなどから情報をもらったりして、プルーン、洋梨、りんごなども道内の果樹園の人と積極的にコンタクトをとるようにしています。生の果物を使うのは味の安定の面で難しいのですが、小ぶりで味が濃く詰まったものを使うと、煮ても水っぽさが出ずとても美味しいケーキができます。そんな果物が北海道にはあるんですよ。乳製品もいいですね。牛乳は道内の生産者から直接送ってもらっていますが、これが濃くて美味しい。生クリームやバターは道内のものは使っていませんが、東京で使っていたものと同じ物が問題なく手に入ります。海を渡る分、ちょっと輸送コストは高くなりますけど。

店に来るお客さんは30代から50代の人が多いかな?週末は車で、平日は主に近所の人が買いにきます。このあたりは下町の住宅地という感じです。近所の人にヴィエノワズリを朝買いに来て食卓に並べてもらえるようになると嬉しいですね。東京とは違い、車での移動がメインな北海道。多くの方々にお店の存在を知ってもらえば、繁華街でなくとも気軽に買いに来ていただくことができるんです。フランス菓子は札幌で一般にウケている味とは違うけれど、ウケている味や形状にあわせてしまおうとは思いません。ケーキの飾り付けもシンプルです。うちの味を美味しいと思った人から口コミで広がっていくと嬉しいですね。情報誌よりなにより、美味しいと思った人の口コミが一番だと思っています。
取材日 2000年9月


礒部さんの秘密