お菓子の家 サンタムール
清水 克人さん
<プロフィール>
昭和37年生まれ。東京都江戸川区出身。
18歳でコック修業をはじめ、22歳で渡仏。仏にてコック修業をする予定だったが、都合によりパティシエに転向。
帰国後青山「ル・コント」に3年、その後神戸・元町「コム・シノワ」でチーフを4年、さらに神奈川県・藤沢「ラ・シェット・ブランシェ」でチーフを4年経験し、1999年5月同店をオープン。

もとからケーキ職人だったわけではないんです。もとはコック。18才からコックをはじめ、国内で4年修業しました。22才のときにフランスに修業に行ったんですが、コックとして入れてくれるお店がなくて。結局、知人の紹介でパリのケーキ屋さんに入ることになったんです。で、いつしかケーキ職人に。



もともと甘いものが好きで、コック時代からデザートの方が好きでした。パテやソーセージなど、食べるのはいいのですが、作るのが気持ち悪くて(笑い)。ケーキの方が相性が合うんでしょうね。ただ、コックをやっていた分、食べるほうの勉強はしてきたし、現在、ケーキ屋をやる上で役にたっています。当時作っていた菓子はデザート。料理の後に食べるものなので軽いんですよ。日本人にはそういった軽さのあるデザート的菓子の方が好まれるのでは、と思っています。ですから、フランスで学んだケーキをそのまま踏襲し、作ってはいないのです。



例えば、ガトーオペラ。フランスではちょっと乾いた感じの仕上がりで、味も主張が強いですよね。そのバランスだと、かなり日本では難しいと思うんです。スキヤキの後にそういうケーキ、ちょっと無理だと思います。でも、デザート的要素のある軽いお菓子ならいけますよね。クレームブリュレとか。表面は焼き色がついてカリッとしていて、けれども中はクリーミー。食感的おもしろさがある。こういったものが日本人に好まれるのではないかと思います。そう思うので僕がオペラを作るとしたら、ただ単にコーヒーとチョコレート、あとアーモンドのスポンジ、その3つの組み合わせのケーキを作る。つまり、オリジナルの構成要素を一度バラバラにして、もう一度組み立てるんです。ただ、その加減を一歩間違えるとオペラというケーキではなくなってしまうので、非常に難しいのですが。




この歳になると、柔軟性がでてきたのか、"どうしてもこうだ"と、いうこだわりはなくなりますよね。"自然なものを自然に"。それを基本的なラインにして、地域の嗜好にあわせて、甘さを加えたりして地域にあわせて味を変える、という姿勢です。というのは、ケーキを作り続ければ作り続けるほど、お菓子にしろ、美味しさにしろ、いろんな要素から成り立つんだな、と。





"美味しさ"と一口にいっても、住んでいる人達の文化とか、ファッション性だったりとか、店の良し悪しも併せて総合的なものから"美味しさ"ができあがると思うんです。30代は"美味しいもの"を追い求めてきたつもりなんです。けれどゴールはなかなかない。結局、自然なものを自然なスタイルで作る、最高のものは使わなくても、地域の人が美味しく思ってもらえるものを、作り立てで提供する。それでいいかな、と今は思うようになりました。地域の人に地域のどこよりも美味しいと言ってもらえれば、という感覚です。



そういった意味で、東京と守谷では、やはり望まれるケーキは違います。東京という土地で成功しようと思ったら、トータル的に、つまり味だけでなく接客やらインテリアやら、そしてファッション性とか、総合的に優れていないと、この業界は難しいです。かなり柔軟性のある人しか成功していませんね。もしくはカリスマ性があるとか。商品だけでない、別の要素のファッション性が必要です。それもあって、東京ではやりたくなかったですね。ここで店をやるのは地味です。だけれども、お客さんの顔を見ながらやっていくのが、僕にあっているな、と。自分にとっても70点であっても、この守谷のお客さんに100点と思ってもらえるケーキ。これが僕が満足できるケーキなんです。




お菓子の家 サンタムール
茨城県守谷市松前台2-2-7
0297-47-0030

清水さんの秘密