SAKURA BAKERY (さくらベーカリー)
佐藤秀彦さん
子供の時からサラリーマンの父の姿を見ていて、自分にはスーツを着る生活は向かないと思っていたんです。食べることが好きだったので、フランス料理か日本料理、お菓子のどれかの道に行こうと思っていました。選んだのはお菓子。

一年間の製菓学校だったので、夏頃には就職活動をしなくてはいけないんですよ。普通ならお菓子屋さんをまわるところですが、自分はパン屋を。というのも、ほんの数回しか受けていないパンの授業に興味を持ってしまって。お菓子よりおおざっぱさなところが自分にあっているかなと思ったんです。もちろん製菓学校からパンに行く人はほとんどいません。60人くらいのクラスで、僕ともう1人だけで、寂しいなあと思ったのを覚えています。


そんなことだったので、最初の就職先『シェ・カザマ』で一からパンを学ぶという感じでした。天然酵母に触れたのも、飾りパンを習ったのもここでです。今、うちの店で食パンが人気でとても嬉しいのですが、多分これは 「食パンがおいしくなかったら駄目だ」 と風間さんにさんざん言われた成果かな。といっても、特別なことはしていません。素材も製法もごくごく普通。いたってシンプルです。

『ビゴ』(鷺沼)でハード系を中心に勉強した後は、開店準備のために自宅でパン教室を開いたり、地元桜新町の『藤屋』という店にもしばらくいました。いずれはこのあたりで店をと思ったので、業者さんなどを知れたらいいなと思ったのです。パン教室も、人に教えることで自分自身勉強になりましたね。




2000年に開いた店は、今の店からすぐの場所で、広さはここの5分の1ほど。1人でやっていました。その2年後、今の場所を紹介されて移ったのですが、広くなった分、おのずと作る量も種類も増え、そうなると仕入れ、経理など、圧倒的に仕事が増えました。大変になるだろうと思ってはいたけれど、これほどとは、という感じでした。今いるスタッフは全員パン作りの経験のある友人です。若い人を雇って一から育てるという余裕はまだ当分難しそうです。




忙しくなると、なかなか勉強する時間がとれず、こんなことならもっと時間のある時に学んでおくんだったと悔やまれるこの頃なのですが、それでもがんばって月に1つ2つ新製品を出しています。料理や食材と組み合わせた、季節感も出るようなパンが今興味のあるところ。色のキレイなパプリカを使ってなにかできないかと思案中です。パン屋さんってどうしても茶色一色になりがちですよね。それを打破できるかなと思って。

店にはやきそばパンとかコロッケサンドもあるんですよ。風間さんが聞いたら 「なんだそのパン?」 とびっくりされちゃいそうですが、僕自身は日常の気取らないパン屋を目指しているので、こういうのもありなんです。


取材日 2002.9.13

SAKURA BAKERY
東京都世田谷区若林4-6-1
03-3414-3338

佐藤さんの秘密