「三本足烏堂」 店主




山形県出身。
19才から27才まで京都の菓子店で修業。
その後、東京で営業の仕事に3年ほど就く。
94年に三本足烏堂を開店。
「自分はまだ33才で過程の状態。
瞬間だけ見られて、固定されたくない。」
とのことで、お名前、お写真は控えさせていただきました。



店先の看板には「三本足烏」の文字。三本足烏とは、高句麗の神話にでてくる太陽神からとったものだとか。ぱっと見、洋菓子店とはわからないような店構えだが、そこには丁寧につくられたお菓子達がいた。

「こだわらないようにこだわっています。」といきなりやられてしまった。(最近こだわりって言われたくないという職人さんが多く、このコーナーの題名も存亡の危機って感じですが…)「俺はこれだけこだわってるっていうのは、人ってイヤだと思うんですよ。うるさくて。だから自分の食べた感じ、気持ちいいとか、うれしいとか、豊かになるとかそれだけですよ。」と店主。ここのお菓子を食べて感じたのは、口あたりはさっぱりだが、後からコクがでてくる感覚。特にクリームは、さらっと入ってきて嫌味のない味。さりげなさがありがたい。

この仕事をはじめたのは、ボランティアで露天をやったのがきっかけ。クレープやチョコバナナを作って、お客さんに喜んでもらえたのが大きかったそう。もともとお菓子の職人でやはり自分を今、生かせるのはここだと思ったといいます。「例えば、大好きな人と一緒に何かを食べたとするじゃないですか。別にどうってことないケーキでもすごくおいしく感じられたり。そんな時、この人はこういうとこがあったんだとか新たな関係性に気づいたりとか。そういうところで役に立てたり、やりがいを感じたりしていきたいので、そのコンセプトの一つとしてお菓子屋さんを選んだんです。」うーん確かに。お菓子や料理で人が楽しくなったり、新たな発見ができたり、すてきなことですよね。私(筆者)も、こんなつたない文章ではありますが、読んでる方が「ほっ」としたり、「ふっふーん」と思っていただけたらと常々考えているのですが…店主は、別にどうってことないケーキと例をあげられていましたが、三本足烏堂さんのお菓子はさらりと美味しいので、いっそう人との関係にいい影響を与えられるのではないでしょうか。


今後の夢は「サロンのようなものをつくって、サラリーマンや主婦にそこで安らげるときをもってほしい。」また技術を教えていくこともしたいと。「上手な人がどんどん出てきてくれたらいいと思います。」と結んでくれた。

秘密はこちら。

取材日 1997年