Sweet Sanctuary ISO

磯崎 賢博(よしひろ)

秋田の、洋菓子店の息子なんです。継ごうと思って東京に出てきたんですよね。最初にいたのが銀座の三笠会館。ウエイターを1年やった後、パティスリーに2年いました。そのあとルショワで6年。ショコラティエのほうにもいました。そしてヨーロッパに渡り、パリとリュクセンブルグで修業。戻って大泉学園にある老舗の洋菓子店で製菓長をし、渋谷のフレンチのパティスリーに1年。それからここに来たんです。
その間、自分の中でお菓子に対する意識は色々変わりましたね。

ルショワにいた頃は、先端のフランス菓子というのを意識し、一部の人だけを相手にしていた気がします。でも、ヨーロッパに行ったら、もちろん有名店のお菓子もあるけれど、もっと気取らないお菓子を、街のパティスリーでみんなが買っている気がした。日本に戻って入った老舗の洋菓子店も、とても庶民的で地元に愛されているお店です。
この頃、お菓子っていうのは、一部のマニアックな人たちだけのものじゃない、と強く思ったと同時に、日本人にとってはまだ非日常的なものだから、お菓子の持つ華やかな部分というのも大切だと感じました。先端のものと、昔ながらのものが融合したような、そんなお菓子を作れたらいい、それが今の自分の考えなんです。

この店は会社経営ですが、お菓子だけでなく、経営面もほとんど任されています。店の場所を選ぶときも参加しました。下町を選んだのは、昔ながらの面影を残す場所でありながら、それを感じさせない非日常の華やかな部分を持つ店を作るというのが面白いと思ったんです。始めてみたらこの土地って面白くてね、大家族が多いのか、お遣い物でもないのにたくさん買っていく人が多いんですよ。意外とパリの人々のスタイルに似ているじゃないか、なんて思っています。

内装は、現代的でシンプル。装飾は一切ありません。目の前にあるお菓子だけを見て欲しいと思ったからなんです。お菓子は、気取らず大き目サイズです。味も多くの人が食べやすいもの。シャンティを作るめずらしい機械があるんですよ。フィルターを通した衛生的な空気を、目盛りを合わせて含ませる量を替えられるんです。空気をかなり多めにしているので、軽い仕上がりなんです。昔、フランス菓子を意識して「小さく味が濃い」というのを追求していた時期から随分変わったなあと自分でも思います。

この道に入ったきっかけであった実家の店を継ぐというのは、自分の方向としては違うと思い、やめました。今、職人としての仕事と、経営面での仕事は半分半分くらいです。だんだん経営の仕事が増えていく予感はあります。より美味しいお菓子を目指し、職人として作るのはもちろん楽しい。けれど、経営者としてのお菓子屋にも興味があります。多くの人にここで作ったお菓子を広げていく、それをしっかり考えるのもいいなあと思うんです。
だからスタッフにはしっかり育ってほしい。無意味な時間はないようにしてあげたいんです。できるならどんどん新しい仕事をさせるという姿勢で、効率よく成長させたいと思っているんです。それが効率よく美味しいお菓子ができることと同じようなことだと思うんです。

取材日 2001年11月











Sweet Sanctuary ISO
墨田区東向島2-37-5
03-5630-8200

磯崎さんの秘密