ベッカライ 徳多朗

徳永 淳さん
   久美子さん

(お話は久美子さん)

地元の人に愛されるお店でありたい、パン屋はそうでなくてはいけないなって思っているんです。だから、90年から99年まで店のあった場所から、今の場所に移る時はやっぱり抵抗がありましたね。移転先は前の店から遠くはないけれど、それでもね、よくいらしていたお年寄りの方など、こっちまで来るのは辛いだろうなとか思うと、なんだかとても悲しかったです。前のお店を閉める日、とても嫌だったのを今でもよく覚えています。

こちらの店は、前の店より広くて、オーブンも大きくなりました。だから、今までどれだけフルに作ってもできる数が限られていて、「買いたくても品切ればかり」と思っていた方も結構いたと思うんですけれども、そんな方が少しでも減ればと思います。
新しい場所でも、もちろん、地元の方に愛されたいですね。「今日はこのパンが食べたい、明日はあんな味が食べたいな」なんていうお客様との会話が自然にでるような、そんな店にしたいんです。

パンは、"手をかける"というより"目をかける"のが大切だと思っています。うちには3人子供がいるんですが、手をかけすぎてはいけないって子育てと同じだなあと思います。私、「まいっか」という言葉が嫌いなんですね。そうやって流した仕事にならないよう、しっかりパンの様子を見ながら作業して、最終的に一番いい状態で焼きあげる。だけど、焼き上げたまでで終わりではないと思うんです。できるだけいい状態でお客様の食卓まで運びたい。

だから、通信販売はお断りしているんです。天然酵母のパンとか、二日目、三日目のほうが美味しいから通信販売も問題ないって言われますよね。でも「二日目、三日目のほうが美味しい」って断言していいものかと疑問に思うことがあるんです。お客様の中には「私はあの皮の固さ、なかのモッチリ感が好きだから、天然酵母といえども一日目が断然美味しいと思う」という方だって結構いらっしゃいますよ。だから、必ずしも押し付けないで、一日目に手元にあって、そこから毎日食べて頂けたらいいんじゃないかと思うんです。味の変化も分かるし、自分の好みも分かります。なのに、いきなり三日目で手元に届いて、「これからが食べ時です」というのもどうかなあと。

今、注目している素材は玄米ですね。玄米は、自分が家で毎日食べているんです。今もそれを入れたパンはありますが、もっと増やしてみたい。夫が生地、私がフィリングというのが主な役割分担です。惣菜パンのアイディアは日常の食生活から出てくることが結構多いですね。普通の食事や、子供に作ったおやつなんかからも。
あんこをたくとか、クリームを作るのは「大変ですね」と言われることもあるけれど、当たり前のことだなって思っているんです。安全な食材とか、手間のかかるものにはちゃんと手間をかけるとか、当たり前のことをしっかり当たり前にやって、美味しいパンを作っていきたいですね。

取材日 2001年8月








徳多朗
横浜市青葉区美しが丘5-12-6
TEL: 045-902-8511


徳永さんの秘密