ル・パティシエ ヨコヤマ

横山 知之

フランス料理をやりたかったんだけれど、気づいたらケーキにはまっていました。いざ働き出すとき、個人店か大きな会社かというこだわりはなかったのだけれど、とにかく美味しいケーキを売っている店で働きたかった。それで、当時「あそこのケーキは美味しい」ってとにかく評判だった大阪のホテルに行きたかった。希望がかなったのは嬉しかったですね。

そのあともいくつかのホテルで働きました。ホテルのいいところは、個人店ではなかなか機会のない細工菓子をやる環境に恵まれていること。毎日のように宴会などはいりますからね。おのずと、コンクールに出やすい環境ともいえます。特に最後に勤めたホテルではコンクールに精を出しました。40才や50才になって振りかえったとき、何か「あのときこれをやった」という証が欲しかったんですね。

逆に、ホテルで働く欠点はといわれたら、ケーキだけに集中できる反面、お客様の顔が見えにくいところかな。今、店を持ってみて、こんなにもお客さんの声がダイレクトに伝わるんだ、と一番の変化と喜びを味わっています。予期していたことではあるけれど、本当に嬉しいですね。

店は、少しでも焼き立て感や出来立て感が伝わる作りにしようと、売場から直接見える位置にオーブンを置きました。さらに、シュークリームはその場でクリームをつめています。これは個人店ならではですよね。実はこのシュークリーム、400個用意するのに昼前に売れてしまうんです。だから午後からその場で重ねあわせるミルフィーユができたらいいなと今計画中なんですよ。僕はお菓子において食感というのはかなり大事だと思っているから、その場でクリームをつめたり重ねるからこそ伝わる、シュークリームやパイの美味しさを味わって欲しいですね。

それから、食感といえばアップルパイ。ふつうは紅玉を使うでしょう?うちはふじなんです。ふじの何がいいかって、固いこと。焼いても、さくっとした食感が残るんです。自信作なんですよ。秋冬がさくっとしたリンゴなら、夏は口どけのいいアイスクリームなんかも出せたらいいなあと思っています。

ホテル時代と、材料は大きくは替えていません。だから、ホテルのときのお客様もその時の味を求めて来てくださいます。最後にいたホテルは幕張だから、同じ千葉ですしね。でも、この場所を選んだのはホテルからそう遠くないからというより、実は自宅に近いからなんです。通勤が長いのが嫌だったこと、ごみごみしたところが嫌いだという2点から、都心で開店しようとは思っていなかった。まだ開店して間もないし、夕方4時には完売という予想外の出来事に戸惑いもありますが、これから徐々にペースをつかんで、地元の方を中心に愛されるお店を作りたいですね。

取材日 2001年10月










ル・パティシエ ヨコヤマ
千葉県習志野市谷津4‐8‐45
TEL:047-453-3888

横山さんの秘密