8:00 いよいよ最終日。疲れた体にむち打って、いざ出発!

電車に乗って20区へ。2005年度パリ市主催「バゲット・トラディション コンクール」で見事優勝した、「ブーランジェリー エリック・サンナ」に向かいます。

「あれ?ここかな?」

到着した「エリック・サンナ」は、町のパン屋さんを思わせる、小さな、そして飾らない店構え。しかしながら、そこには優勝者の証ともいえる、お客さんの列がありました。



(飾らない店構え。朝食用のパンを買う人でにぎわいます)


店内には、無造作に焼き立てのバゲットが並べられ、あたりには甘く芳しいパンの香りが!ここ「エリック・サンナ」のバゲット“レトロドール”は、粉のおいしさに定評があるVIRON社(※製粉会社。日本のVIRONはVIRON社の粉を使用)の小麦粉“レトロドール”を使用したもの。バゲットに対する思い入れが強いためか、パンオレザンなど定番のヴィエノワズリーにはあまり力を入れていない様子。お客さんもバゲットだけを買う人がほとんどでした。とにもかくにも、バゲット命!の職人さんのようです。


(バゲットがこんなにたくさん)(エリック・サンナ氏)


レトロドール  

手に取った時はまだ焼き立て。しっとりと温かいクラムは、モチモチとやわらかく、口いっぱいに広がる粉の香りと甘みにただただ感動!カリカリッと香ばしいクラストは厚みが絶妙です。今回食べた中でも上位1,2を争うバゲットでした。(夜、冷めてからも旨みが深く、おいしかったですよ!)


すぐ近くの「フルート・ガナ」へ



(白く清潔感のある店構え)


元はと言えば、ベルナール・ガナショーさんが生んだブーランジェリーですが、現在は3人の娘さんが父の意思を継ぎ、ピレーネー通りとヴァンセンヌ、そしてこのガンベッタに3軒の店を構えているのだそう。店内は、頑丈な木の梁にステンドグラス、そして鉄の照明や鎖などを飾った、田舎風ながら洗練された雰囲気。もしかしたら中世のパン屋さんはこんな感じだったのでしょうか?そんな夢のある雰囲気です。



(鉄のシャンデリアや所々に見えるマークが中世風)



名物のバゲット「ラ・フルートガナ」を始めとするハード系やヴィエノワズリー類、そしてプルーンのピュレがたっぷり入った地方菓子「ショーソン・プリュノー」までと、とにかく種類が豊富!パンの向こうに見える厨房では、大勢のスタッフがいそがしそうに働いていました。


(オーナーだけでなく、
3店舗のマネージメントも務める
長女マリアンヌ・ガナショーさん)


ラ・フルートガナ  

白っぽくグレーがかった色と細いスタイルが特徴的。きめ細かく、しっとりした食感です。生地には全粒粉など、種類豊富な穀物が入っていて、非常に深みのある味わい。
クロワッサン  

思い描く“パリのクロワッサン”のイメージに一番近かったのがこれ。薄めの層は美しく折り重なり、口の中でカシャッと崩れる軽い食感が見事。対して、中央の部分はもっちりと弾力があり、噛みしめるとジュワッとバターのコクのある風味が広がります。
パン・オ・レザン  

ダノワーズ生地にたっぷりとクレームパティシエールを巻き込んでいるためか、プリンのような味わいともっちとした食感。入っているのは、ごく普通のレーズンですが、プルーンのようなコクのある味がします。
ショーソン・プリュノー  

中にはピュレ状のプルーンがたっぷり入っています。一風変わった生地は、バターの配合が少ないサブレ生地のようなもの。意外にあっさりとしていて、素朴な味わいです。



実は、この試食の間に、またまたお間抜け事件が起こっていました。


「「シュクレ・カカオ」(パティスリー)ってすぐ近くですよね?みんながパンの写真を撮っている間に、ちょっと行って来ますっ!」


そう言って颯爽と走り去っていったスタッフS。 残った私たちは、写真撮影ができそうな場所を探し、いざパンの撮影開始!


・・・ところが。


「あれっ?ない!さっき買ったパンがないですよ!」

「も、もしかして、Sが持ったまま『シュクレ・カカオ』に行っちゃったんじゃ・・・!?」


そうなのです。パンの撮影をしている間に、買い物に行ってくると宣言したのにもかかわらず、肝心なそのパンを全部自分で持っていってしまったのでした。



どうすることもできず途方にくれていると、なんとウロウロと道に迷っているSを発見。結局、「シュクレ・カカオ」のすぐ目の前で撮影をすることに。またしても、焦りのあまりドジをやらかしてしまったパナデリアでした。



(問題の「シュクレ・カカオ」。素朴な焼き菓子類もおいしい)



10:45 電車に乗って7区へ

水色のミニバンが目印の「プージョラン」は、カントリー調の内装が可愛らしいブーランジェリー。隣には両方の店舗のオーナーを務めるステファン・セッコさんのパティスリー「SECCO」が仲良く並んでいます。
ここでは、最後を飾るにふさわしい素敵な出会いが待っていました。


(これが目印!いつもお店の前に止まっています)


まずは外観写真を撮ろうと、店の外でカメラを構えていると、



(ショーウィンドウからこちらを見つめるつぶらな瞳)


「こんにちは」

と日本人の声が・・・。

こんなところで知り合い?と思って振り返ると、そこには見覚えのある姿。

それは、「ムッシュ・ソレイユ」や「パリセヴェイユ」で活躍していた福士さん。パン、ケーキの両方を巧みにこなす器用さとセンスに、パナデリアでも一目置いていた人なのです。伺ってみると、ちょうど1年前にパリに渡り、修業をしているとのこと。「SECCO」は、3軒目の店なのだそうです。

そして、福士さんの計らいで、オーナーのステファン・セッコ氏にお会いすることになりました ポロシャツ姿で爽やかに登場したセッコ氏は、明るくてとってもユニーク!なんと日本にいた経験もあるのだとか。


(セッコ氏(右)と福士さん(左)。
ワンランクアップした勇士をご覧あれ)


「これは、すごくおいしいよ!」

と言っては、自慢のチーズケーキやモワルーショコラを次々に試食させてくれました。
ケーキはどれもツヤツヤと美しく、丁寧な仕事振りが伝わってくるよう!全体的に甘さが控えめで、繊細な味作りなので、非常に日本人好みといえそうです。
「SECCO」の風通しが良く開放感のある雰囲気は、セッコ氏そのものなのでしょう。思ってもみなかった福士さんとの再会、そしてセッコ氏との出会いに心温まるひと時を過ごしました。


(お店の前で思わずパクリ)



モワルーオショコラ  

フォークを入れると、中からトローッとショコラが流れ出てきます。苦味のしっかりある風味豊かな生地ですが、キレがあり上品な味わい。
チーズケーキ  

中のチーズは、トロッとクリーミーで、フロマージュブランのようなフレッシュな風味。チーズケーキという名前を良い意味で裏切る洗練された味と食感です。
トロペジエンヌ  

ふんわりとした生地に、甘さ控えめのアニス風味のクレームパティシエールの組合せ。フランスのケーキとは思えないほど、アニスの使い方が控えめです
タルト ショコラ  

グラッサージュのつややかさが見事!タルト生地に、ビターなガナッシュというシンプルな組合せですが、苦味と酸味の聞いたキレのある味わいが秀逸。
ミルフィーユ  

パリで違いを感じてしまうのは、フィユタージュのおいしさ。ミルキーで香りの良いバターの風味は、まさに幸せの味です!




13:00 最後を飾る「ブリストル」のランチ

慌しかったパナデリアパリツアーもいよいよおしまい。最後を飾るのは、ミシュランで三ツ星を誇るホテル「ブリストル」のダイニングです。あー、なんという贅沢!

豪華なタペストリーで飾られた品の良いロビーを抜け、いざダイングへ。 足を通して感じるフカフカした絨毯の感触、つややかなベルベット張りのイスに座れば、気分はセレブ! 背筋がすっと伸びる、気持ちの良い緊張感が走ります。

そして食事がスタート。さすがは三ツ星の貫禄!そのおいしすぎる料理をご紹介します。


フォアグラのフラン  

フワフワ、トロトロ!口に入れた途端に溶けてなくなってしまいます。表面にうっすらとかけた、シナモンのスパイシーな香りが何とも上品。
キジ、栗、鴨フォア・グラのテリーヌ仕立て トリュフ風味  

“フォア・グラ”の文字にメッポウ弱い私たち。気が付いたら全員同じものを頼んでいました・・・(笑)。まず感動したのは、盛り付けの美しさ。ピンク色のテリーヌの細いシルエットが美しく、艶やかに飴がけされた栗が添えられています。とろけるようなフォア・グラの濃厚なコク、そして広がるトリュフの香り!あーおいしい!!
帆立貝、トリュフ、栗の白ソーセージ“ブーダン”仕立て ポロネギ添え  

“ブーダンノワール(豚の血のソーセージ)”とはよく聞くけれど、“ブーダン”仕立てとは一体どんなもの?と楽しみにしていたのがこの一品。サーブされたのは、大きな白いソーセージのようなもの。ナイフを入れるとプルンとやわらかい食感。口に入れると、クリームの深いコクの中に、帆立貝、トリュフ、栗の風味がブワッと力強く広がります。味が深いのに、決して重くないのがさすが!
ソルべ  

白く立ち昇る煙と共に登場したのがこのソルべ。なんとその正体は、二重のグラスの間に仕込まれたドライアイスでした。さりげなく、こんな楽しい演出をするのがさすがです。軽いビスキュイココをちょこんと乗せた、爽やかなパッションのソルべです。
パイナップルとリンゴのタルトタタン シトロネルのアイスクリーム添え  

パリパリのパイナップルは、ビジュアルだけでなく食感も楽しい!少し食感を残した硬めのリンゴとパイナップルが爽やかで、力強い食事の後にもスルッと体に入っていきます。喉越しの爽やかな、繊細な味わい。
プティフール  

ほっそりとしたグラスの中に積み重ねた、小さなマカロン。そっと上に乗せたバラの花びらが何とも粋な演出です。



極上のランチを終え、身も心も満たされたパナデリア一行。

・・・のはずでしたが、物欲に勝てるはずもなく・・・。
「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」や「ラデュレ」など、時間の許す限り買い物に奔走してしまいました。




(おみやげには、ラデュレのマカロンを。キャラメルソースが絶品!)



(ちなみに、KとMはこの時間に奇跡のメダイユ教会(シャペル・ノートルダム)を訪れ、心清らかなひと時を過ごしたとのこと。私たちにも行きたい気持ちはあったんですよ!)


(物欲にまみれた私・・・。心が洗われます)



23:25パリ発、成田へ

「あー、せっかく行ったんだから、やっぱり凱旋門くらいみたかった!もう一度、今すぐにでもパリに行きたい!!」

罰当たりにも、成田に降り立った最初の台詞がこれでした。
凱旋門にエッフェル塔、ショッピングにのんびり過ごすカフェでのひと時・・・
パリに残してきた思いは、それこそ山のよう!




(機内のおやつは、SECCOのタルト・オ・ポンム。
フランスの思い出が鮮やかによみがえるおいしさ)




それでも、今も目をつぶると鮮やかによみがえって来るのです。
口を開けばケーキやパンのことばかり話していた時間、足が棒になる程歩き回ったこと、数々のドジ、そしてパリで出会った人々の笑顔。
やっぱり気の合うメンバーとの旅行は最高です!

またいつか、パナデリア珍道中をお聞かせできる日がやってきますように。



(ただいまー!荷物の80%はお菓子です(笑))






〜 Shop Data 〜
<ブーランジェリー エリック・サンナ>
3 rue de Retrait 75020 Tel:01.47.97.53.04
<ラ・フルート・ガナ>
226 rue des Pyrenees 75020 Tel:01.43.58.42.62
<シュクレ・カカオ>
89 av. Gambetta 75020 Tel:01.46.36.87.11
<セッコ>
20,rue Jean Nicot 75007 Tel:01.45.55.00.96
<ル・ブリストル パリ>
112 Rue Du Faubourg St. Honore 75008 Tel:01.53.43.43.00





←パリ特集へ戻る↑この日のトップへ戻る