切花用を食用に転用して、化学農薬不使用で栽培に挑戦!
平塚より、新しい食用バラを発信する横田園芸を訪ねました


東京から車を飛ばして40分、平塚市にある食用バラを育てる横田園芸に伺ってきました。食用バラのハウスに入ると、森林にいるような土の香りがします。バラ農家の3代目、横田敬一さんは、花と食をつなげることで花の文化を広げたいと、園芸用だけではなく、国産の食用バラの栽培に挑戦しました。

横田園芸3代目、横田敬一さん


そして試行錯誤の末に、化学農薬を一切使わずに、ハウスでバラを育てることに成功します。バラ栽培で一番苦労したのは害虫駆除。食べるものなので駆除には、でんぷんや還元水あめなど、食品由来のものが使用されています。コーヒーの絞りかすを、虫よけに使ったりもするそうです。また、害虫に対する天敵、たとえばアブラムシにはてんとう虫を使って退治したりします。
バラは肥料を多く必要とする作物なので、有機肥料と化学肥料をそれぞれ足りない部分を補いあわせながらバランスよく使用。もちろん、土からの栄養素も充分、吸収させて、バラ本来の香り、色、形を保ったまま食用にしています。

ハウスに入ったとたん、湿った森の香りが。実はバラの肥料のため、腐葉土に入れ替えたという


栽培しているのは、濃いピンクの「イプピアッチェ」、白の「アンタルティック」、アイボリーの「フェアビアンカ」など、どれも色合いも香りも素晴らしい全6種類。切り花用を食用に転用し、自ら100種類以上のバラから品種ごとの個性によって、香りが強いピンク(花びらを砂糖漬けに)、渋みの中に旨みがあるアイボリー、酸味があって旨みがあるホワイト(グレープフルーツなどに合う)、明るい柑橘類の味がするイエロー(日本の柑橘類に合う)、ハーブのような香りのグリーンローズ(ハーブのように使える)などを選び出しました。バラを摘むのは朝。ある程度、咲かないと香りもとぼしくなるため、摘むタイミングもむずかしいとか。

■イブピアッチェ(ピンク)
大輪で、渋みの中に甘みがあり、強い香りがあります
■フェアビアンカ(ホワイト アイボリー)
中輪で、渋みの中に独特の旨みがあります
■ジャンヌダルク(イエロー)
大輪で、渋みがなく、明るい柑橘系の香りと味がします
■アンタルティック(ホワイト)
中輪で食感がよく、グレープフルーツの皮のようなうすい香りがします
■バタデコーラ(しぼり)
小さな花で、香りは薄めだが、見た目に特徴あり
■グリーンローズ(グリーン)
ハーブのようなスパイシーな香りで、どこか和風な味わいも

食用のバラ栽培を始めてから2年目。まだまだ収量が限られています。注文は1ケース(12輪入り)単位。冷蔵庫で保管すれば、5日間から1週間以上は鮮度が保たれるそうです。 また、横田園芸では、その貴重な食用のバラを使ったジャムも販売しています。ただ、その貴重さゆえ、作られる量も少ないので、なかなか需要に追いつかないのが現状のようです。
これからは、食の世界でも、エディブルローズの本物の香りと味を求める時代がくるのではないでしょうか。最近になってようやくパティスリーからレストランまでが、天然のバラの新たなる可能性にひそかに注目をし始めてきました。香料ではなく、本物のバラの香りを嗜好する時代が、そしてバラを味覚で楽しむことが普通になる。そんな時代が、すぐそこまで来ているのかもしれません。

左から
■フェアビアンカ
魅惑の香りと気品高い大人の甘み
■バタデコーラ
カップに1さじ、お湯を注いで優雅なローズティーに
■ジャンヌダルク
柑橘、蜂蜜のようなやさしい風味
■イブピアッチェ
薫り高く、もっともバラらしい仕上がり
■アンタルティック
柚子と合わせ、さっぱりとした味




横田園芸
神奈川県平塚市城所127
http://www9.plala.or.jp/yokota1/



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