フレンチの名店「ランベリー」の移転リニューアルと共に、同じフロアに、同規模で作られた、デセールを主役とするという、全く新しいコンセプトで生まれたレストラン「リベルターブル」。7月12日に一周年を迎えました。

店名の「リベルターブル」(Libertable)とは、Liberté(自由)・table(食事・食卓)から作り出された造語。既成の概念にとらわれず、自由な表現をテーブル上で繰り広げていくという想いを表現した言葉です。

ランベリーのシェフパティシエでもある森田一頼氏は、吉祥寺「レピキュリアン」、新潟「ルーテシア」を経て、渡仏。パリの三ツ星「アストランス」など複数のレストランやパティスリーで研鑽を積まれました。帰国後、ランベリーのシェフパティシエに就任、そして、リベルターブルオープンと同時に、シェフに就任。「フランスの三ッ星レストランで出会えるようなデセールの魅力を知っていただきたい」と熱く語る森田氏の存在があったからこそ生まれたレストラン「リベルターブル」。その魅力の一端をご紹介したいと思います。
(メニューは6月のものです)


席に着くと、まず出迎えてくれるのは、ゴールドに薔薇とシュガーを配した、印象的な美しさの位置皿。華やいだ気持ちになり、期待が膨らみます。


華やかな位置皿
ランチのメニューから、sensibilitéをお願いしました。
位置皿に並べられるアミューズは、繊細にして、変化に富んだ品々。

手前には、芽キャベツのシュー。シュークリームを表わすフランス語(choux à la crème)のchoux(キャベツという意味)に掛けた品でしょうか? 素揚げした芽キャベツを飾り、クリームにも芽キャベツのジュを加えた、遊び心あふれる一品。
トマトの風味のぎゅっと詰まったメレンゲとソルベ。
軽快なチップスは、モロヘイヤ、それにグリュイエールと島唐辛子。
続いて運ばれるのは「緑のサラダ <春> 柑橘とアボカドのムース」

素材の良さが感じられる新鮮なお野菜やフルーツを使ったさわやかな一皿。
バジルとパセリのエッセンスの軽い泡に、緑鮮やかなグリーンアスパラガスのソース、お野菜の下には、柑橘をたっぷりとちりばめたアボカドのムースが隠れていて、変化に富んだ味わいを楽しめます。
グリーンでまとめられたお野菜は、日によって違いますが、緑色のトマト「グリーンゼブラ」、薄く縦にスライスし、くるくると丸めたズッキーニ、中央に大きくあしらわれたグリーンアスパラなど、プレゼンテーションも楽しい。必ず一品添えられる揚げ野菜は、季節により、スナップえんどうや、シェフの故郷新潟からのふきのとうやこしあぶらが使われていたこともありました。


添えられる自家製パンも印象的。
カヌレ型で焼いた苺と赤ワイン入りのライ麦のパン
クミンと塩でアクセントをつけた、美しいオレンジ色の人参のパン。



個性的なパン2種
通常のコースのメインともいうべき一皿。
「ピンクペッパーのクレームダンジュ、ビーツ ラズベリー チェリー
沖縄産純朴島豚のグリエ」

味覚・視覚共に、デセールのエッセンスが加えられたお料理は、他にはない品。
ビーツ、ラズベリー、アメリカンチェリーが添えられ、ビーツとアメリカンチェリーのソースの鮮やかな紅色に目を奪われます。じっくりと低温調理し、仕上げに、皮の部分をカリッと焼き上げたお肉は、しっとりジューシーなお肉と皮の食感の違いを味わえます。ソースに加え、ごく軽く、ふんわりと仕上げたクレームダンジュの優しい甘酸っぱさ、その上に散りばめられたピンクペッパーのアクセントも楽しめる逸品。

「リュバーブと苺 シャンパーニュとレモングラスのジュレ
リュバーブのソルベのタルト」

二皿で供され、ショーフロワが楽しめる構成となっています。
グラスの中には、甘酸っぱい苺とリュバーブのコンポートに苺とリュバーブのソルベ、さわやかな青っぽさが楽しめるレモングラスのジュレに、繊細なシャンパーニュの泡。
そして、お皿には、可愛いリュバーブの温かいタルト。フリーズドライのラズベリーが散らされています。



お口直しに「オレンジとシェーブルのマカロンとごく薄いポテトのチップス」

はらはらと口の中で砕ける繊細なチップス。しっかりとシェーブルが味わえるマカロン。サレ系の品でリフレッシュ。


「熱いエクレールショコラ、トンカ豆のグラス」

熱い状態で供されるエクレールは初めて!
ほどよく香るトンカ豆のグラスとの温度差も楽しめます。
エクレールは、ガナッシュとフォンダンショコラの生地を入れたエクレール生地を7分通り焼いておき、出す直前に焼いて仕上げるのだとか。エクレール=冷たいお菓子という概念を覆される驚きの一品。仕上げるときに、食感として、サブレを挟み、グラサージュの上には、口の中でパチパチと弾けるチョコレートコーティングしたキャンディーを散らしてあります。
エクレールの語源の稲妻をイメージして、パチパチとした食感をプラスしたもの。シェフの遊び心が楽しいですね。

食後の飲み物のプレゼンテーションも素敵。
飲み物は、コーヒー、紅茶、ハーブティーから選べます。
フレッシュのハーブを使ったハーブティーは、ミントやレモングラスのブレンドで爽やか。たっぷりとポットで供されます。小さなお絞りと薔薇のジャムを添えて。

ハーブティーの演出も素敵涼しげなハーブ

コーヒーは、グランクリュ。宝石箱のように美しく並べられた中から好みのフレーバーを選ぶのも楽しい。
コーヒーはこの中から選びますキューブ状に仕上げられたミニャルディーズ

ミニャルディーズは、すべて、同じ大きさのキューブ状。
普通、丸く仕上げることの多いお菓子もキューブ状に仕上がっているのが新鮮。
特有の食感の楽しめる香ばしいガレットブルトンヌ、
少し塩の感じられる、緑が美しい金時草のケーク、
ほろほろと口の中で崩れるコーヒーのポルボロン、
ふんわりとしたショコラのギモーヴ
食感の全く異なる小菓子の組み合わせ。
シンプルに見えて、非常に完成度の高い品々。
そして、ケークなどは、焼き立て。
これだけのコースを出して、さらに、ミニャルディーズも、タイミングを合わせて焼きあげるのは、手間のかかることですが、できたてならではの美味しさを追求するその真摯な姿勢に頭が下がります。

アミューズからミニャルディーズに至るまでの流れが本当に素晴らしい。
一級品の素材に、シェフの思いと技術と創造性が加わったデセールを一度食べるとその魅力に、何度も通ってしまいたくなるお店です。





他のコースのメニューも素晴らしかったので、ご紹介したいと思います。

Actualitéのコースから
「軽快なムラングシャンティー <レモンとコーヒー>」
ムラングシャンティといえば、フランスの伝統菓子のひとつ。
星型の口金で大きく絞って焼いたメレンゲにクレームシャンティを挟んだお菓子です。
リベルターブルのムラングシャンティは、意表を突いた形。メレンゲを四角く焼いているのです。
そして、アパレイユも個性的で、レモンとコーヒーのアンサンブル。きゅっと酸味の効いたレモンのソルベを挟み、上にはコーヒー風味のクレームシャンティを絞っています。
仕上げに、レモンで風味づけしたタピオカとレモンのゼストのコンフィを散らして。
さらに、アクセントとして、自家製のヘーゼルナッツのプラリネとヘーゼルナッツが 添えられています。
シェフがこの一皿を考えるとき、重視されたのは、軽い食感のメレンゲを作ること。
四角い板状であることもあいまって、サクッと歯にあたる軽快な食感は、他のムラングシャンティとは一線を画するものです。
甘さが勝ってしまいがちなイメージのあるムラングシャンティですが、レモンの酸味にコーヒーの苦みが寄り添い、非常にさわやかに仕上がったお勧めの逸品です。


「杏とフォワグラ、パンデピスのラビオリ」

Libertéのコースでは、前菜の後に、フォワグラのデセールが出されます。
このときは、杏やパンデピスと組み合わせた個性的なものでした。
パンデピス風味の生地の中に、パンデピスとフォワグラのペーストと杏を入れてラビオリ仕立てにしたもの。杏やキューブ状のフォワグラを散らし、杏のソースに、パンデピス風味の泡のソース。白い粒々はピスタチオです。
フォワグラと相性の良い甘酸っぱいフルーツに、ふんわりと香るスパイスが絶妙な一皿。


「“白”の創造」

お皿の中の素材はすべて白!
オープン時に出されていた「“黒”の創造」と対をなす一皿でしょうか?
核となるのは、ランベリーの看板デセール「アーモンドのブラマンジェ」
仕上がりはシンプルに見えますが、非常に手間をかけた、こだわりの一品。
スペインマルコナ種のアーモンドを、香りを損なわないように、極力、余分な熱を加えずに、丁寧に皮をむき、ローストして香ばしさを加えて作る、非常になめらかで口どけのよいブラマンジェです。
それに、様々な味や香り、食感と温度を組み合わせて楽しめるように考えられたデセール。
ほんのりアーモンドの香る泡のソース、スティック状のヨーグルトのさわやかなソルベ、スティック状の甘さ控えめのホワイトチョコレートのムース、ベルベーヌの香るグラニテ、ホワイトチョコレートのパウダー状のアイスクリーム、そして、薄く焼いた飴とメレンゲの軽い食感。すべてが口の中で混ざり合って、儚く溶けてゆきます。



SHOP DATA
Libertable(リベルターブル)
東京都港区南青山5−2−11 R2-A棟 B1F
03-6427-3229
Lunch:11:30〜14:00(LO)
Salon de thé :14:00〜17:00(Close)
Dinner:18:00〜21:00(LO)
不定休
ドレスコード:スマートカジュアル



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