2013年4月12日、白金にフランス菓子のお店「パッション ドゥ ローズ」がオープンしました。早くも、そのおいしさが評判となり、お客様が絶えまなく訪れるお店となっています。

白を背景に、お店のコンセプトカラ―である華やかな赤が印象的な外観。

数ある赤い色から、こだわり抜いて選ばれた美しい赤い色は、お店のレジ台、ショーケースを始め、至る所で使われて、店内を華やかに彩っています。







オーナーシェフの田中貴士氏は、「タイユバン・ロブション」にて、お菓子の基礎を学ばれ、「BENOIT」のオープニングスタッフを務められた後、渡仏。パリでは、「des GATEAUX et du PAIN paris」で、オープニングからスーシェフを任されました。帰国後、「be」、「BENOIT」のシェフパティシエに就任。さらに、ピエール・エルメ氏のもとでスーシェフを任され、この春、33歳で、「Passion de Rose」をオープンされました。

店名の「パッション ドゥ ローズ」の由来をお聞きしました。「パッション」は、情熱という意味がある他、シェフが大好きなパッションフルーツにも通じる言葉。また、シェフは、赤い薔薇がお好きで、その花言葉は情熱。渡仏前から使われていた「パッション ドゥ ローズ」という言葉を、「ケーキひとつひとつに情熱を注ぎ、お客様に喜んで頂けるお菓子を作り続けていく」という思いを込め、店名となさったそうです。

小さなお店ですが、スタイリッシュな店内は、こだわりの空間。薔薇のロゴは、シェフ自らデザイン。通常、路面店では、LEDが1列のショーケースが使われるのですが、あえて、LEDが2列の明るいショーケースを採用。美しいケーキ達が、一層映えるショーケースです。


シェフのこだわりは、「素材」「作り立て」「商品の品質」「豊富な品揃え」。 お店のコンセプトとしては、フランス伝統菓子を広く紹介していくこと。 まだ、あまり、一般に知られてはいないフランス伝統菓子。シェフオリジナルのアレンジを少し加え、そのおいしさをお客様に知っていただきたいと思っていらっしゃるそうです。


美しく繊細なケーキは、味も極上。ひとつひとつの要素がおいしく、バランスのとれた構成。こだわりの焼き方のパイ生地。自家製にこだわり、自家製ナパージュも10種類にもおよびます。中でも、シェフがこだわられているのは、クリーム。独自の作り方のクリームも多く、大変おいしいものとなっています。


まず、シェフのスペシャリテをご紹介したいと思います。


ローズ

まるで薔薇のような仕上がりが印象的な人気のケーキ。
店名を表わすケーキだけに、試行錯誤の上、作られたそうです。単純に、ローズのフレーバーを使うことはしたくなかったので、仕上げの絞りで、薔薇を表現。チョコレートと相性の良いフランボワーズとの組み合わせ。タルト生地の上にはビスキュイザマンドショコラ。こだわりの製法のマスカルポーネ入りのフランボワーズのクリームの中には、ガナッシュが。ひとつひとつ絞って仕上げる手間のかかるケーキ。絞れるぎりぎりの量のゼラチンで食感にもこだわっています。



オペラ

クレームオブールにも、たっぷりと打ったアンビバージュにも、自家製のリキッドを使い、しっかりとしたコーヒー風味をつけているのが特徴。クレームオブールをしっかりと立てているので、冷蔵庫から出したてでも、おいしくいただけます。 ほろ苦いコーヒー風味が大人っぽい味わい。



サバラン オ アルマニャック

ラム酒ではなく、アルマニャックを使っているのが特徴。柑橘とバニラで香りをつけたシロップに、アルマニャックを加えた香り高いサバランは、甘さもほどよく、美味。

パッション

シェフの大好きなパッションが主役の美しいケーキ。飾りのパッションの花の繊細な仕上げにもご注目ください。底生地はレモン風味のジェノワーズ。こだわりの製法で作られたクレームパッションは、クリームでありながら、まるでムースのよう。軽さの中に濃厚な味わいがあるのです。中には赤いフルーツのジュレ。



エキゾチック・ショコラ

シェフが25歳のときに考案されたケーキ。ビスキュイザマンドパッションに、バナナのロティを加えたムースショコラ、アールグレイのブリュレ、トップには、パッションのソース。構成要素が多いケーキですが、すべてが絶妙なハーモニーを奏でます。


さらに、「今月のスペシャリテ」として並べられているケーキも多く、その多くは月替わりで変わります。
5月のスペシャリテをご紹介します。


ヴァシュラン・フレーズ

デセールとして提供されることの多いヴァシュランを、ぜひケーキとして紹介したいと思い、作られた品。ココナッツをまぶした軽く繊細なメレンゲ。いちごのソースで飾ったシャンティの下には、マスカルポーネを使ったクリームと、たっぷりのいちごのジュレ。いちごのジュレは、いちごをフォークでつぶして、あえて食感を残し、いちごそのものが感じられます。メレンゲの甘さといちごの酸味、クリームの味わいのバランスが非常に良く、軽い味わいで、その美しい仕上がりもあり、ローズと並んで人気の高い一品です。 季節によって、フルーツを変え、6月は、パイナップルのロティを使った「ヴァシュラン・アナナス」となります。




サントノーレ クラシック

サントノーレ アブリコ エ アマンド


「サントノーレ クラシック」として、オーソドックスなサントノーレを出されると共に、「今月のスペシャリテ」として、アプリコットに相性のよいアーモンドを合わせたサントノーレを。プチシューには、きゅんと酸味の効いたくっきりとした味わいのアプリコットのクリームを詰め、トップはキャラメルではなく、クッキー生地。パートダマンドを加えたクレームシャンティ。見た目も味わいも印象的なサントノーレです

6月からは、すみれとブルーベリーを使った「サントノーレ ミルティーユ ヴィオレット」に変わるそうです。





エクレール パンプルムース ローズ

ピンクグレープフルーツのエクレール。たっぷりと詰めたクリームは、しっかりとグレープフルーツが感じられるもの。フォンダンに飾った自家製コンフィも非常においしく、良いアクセントとなっています。6月のエクレールは、ピスターシュとフランボワーズになります。




モンモランシー

深紅のナパージュが印象的なお菓子。その中身は、キルシュ風味のグリオットを詰めたカスタードクリーム。しっかりと焼かれたクランブルパータフィロと。


その他にも、魅力的なお菓子が色々。



フィユテ オ フリュイ

長方形のパイ生地に、ピスタチオのクリームを詰め、色とりどりのフルーツを乗せ、メレンゲを可愛く絞って焼いた、印象的な仕上がり。




ガトーショコラ

グラサージュ、クッキー、生地、ムース、クリームと5種類のチョコレートが味わえるケーキ。個性的な仕上がりですね。




ルリジューズ キャラメル

ゲランド産のフルールドセルを使った濃厚なキャラメルクリームを詰めたルリジューズ。 こだわりのクリームがおいしくて人気。




タルト フラン パリジャン

タルトの中には、カスタードクリームとキャラメル。
もっちりとしたクリームがおいしい。5月のテーマであった「パリ」にちなんだお菓子として、「今月のスペシャリテ」として出されましたが、大人からお子様まで人気の品なので、しばらく続けられるそうです。




6月の新作としては、その他に、
「クレーム ダンジュ ソース フランボワーズ」
「アブリコ エ アマンド」
アーモンド風味のクラフティ生地にバニラとアプリコットのナパージュ。
また、「シャンティ フレーズ」は、レモンを使ったさわやかな「シャンティ・シトロン」になりました。
シャンティ フレーズ




また、できたてのおいしさを味わっていただきたく、ミルフィーユとシューアラクレームは、お客様の注文を受けてから、クリームと合わせる形となっているのも、大きな特徴。

ミルフィーユの仕上げは、お店のロゴとなっている薔薇があしらわれ可憐な仕上がりです。1時間かけて焼きこんだこだわりのパイ生地に口当たりのよいクリーム。
ミルフィーユ



そして、ショーケースの上には、伝統的なドゥミセックのお菓子が並べられています。どれも、たっぷりとしたサイズで、やはり個性的。



5月のテーマは「パリ」

ビィション

パイ生地にレモンクリームを閉じ込め。キャラメルでコーティング。しっかりとキャラメリゼされた香ばしい生地と甘酸っぱいレモンクリームが好相性。




コンベルサション アグリューム

まるで会話をしているように聞こえるパリパリとした生地の食感を楽しむお菓子。柑橘を合わせています。




ポンヌフ

パイ生地と共に、しっとりとしたアパレイユを楽しむ手の込んだ伝統菓子。




6月のテーマは「ロワール」。地方をテーマにしている点が興味深いですね。
「トゥルト プリュノー」
フランス産のプラムを使用

「ヌガー ド ツール」
リュバーブのコンポート入り

「プランタジュネット」
ロワール地方の貴腐ワインでマリネしたレーズン入り

いずれも、かなりマニアックな地方菓子ですが、5月同様、シェフならではのアレンジを加え、どのような形で出されるのか楽しみです。
新作のプティガトー、クレームダンジュも、ロワール地方発祥のお菓子ですね。



焼き菓子にも、個性が感じられます。
お店で一番人気という15種類のドライフルーツを使ったケークは、生産が間に合わないほどの人気。



サブレ ジャンドゥージャ

香ばしいサブレに、濃厚なジャンドゥージャ。




ケーク オランジュ

三種類の自家製のオレンジのコンポートを使用した香り高い品。




ケーク アブリコ

アプリコットのジャム、アプリコットブランディーなどを使用し、アプリコットの風味がぎゅっと詰まっています




キャレ アルザシエンヌ

しっかりと焼きこまれたフィユタージュが美味!


伝統菓子の紹介に力を入れつつ、ケーキの造形などに、新しさを感じられるお菓子達。
しっかりとした技術に裏打ちされたおいしさが感じられる品々。
まだ、オープンしたばかりですが、これからが楽しみなお店です。
毎月1日に、新しいケーキを出していく予定だそうですが、その前の第4金曜日には、新作の試食ができるのも魅力。

現在、お店では、アントルメ以外の予約を受けていません。オープンと同時に、お菓子が揃い、売り切れ仕舞い。次々とお客様が訪れ、早い時間に売り切れるお菓子が多いので、早めの時間にいらっしゃることをお勧めします。




SHOP DATA
パティスリー パッション ドゥ ローズ
東京都港区白金1-14-11(白金高輪駅徒歩数分)
TEL 03-5422-7664
10:00〜19:00(売り切れ次第終了)
火曜定休



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