最後の事件


こうして旅は終わった。
戻ってからも、引き続き右の下っ腹が少々痛いというマダムまゆみは、きちんと病院に行き、診てもらった。やはり盲腸でも何でもないと言われ、本人はもちろん、みんな一安心した。
旅の興奮もさめて12月になれば、恒例の、パナデリアクリスマス会をやることになっている。そのころには、肩を骨折したスタッフも完全復帰しているはずだ。

しかし12月には、この旅の最後の事件があったのだ。
なんとわたしが盲腸になってしまったのである! クリスマス会は中止。マダムまゆみは、
「あんなに面白おかしくフランスでのわたしの腹痛を書いたバチがあたったのよ」
と言う。そうなのだろうか。そうかもしれない。
悲しいかな、みんな楽しいクリスマス・イヴに手術をし、年越しは病院でであった。病院食のおせち料理が意外と悪くなかったのは救いだったけれど、なんとも冴えない年末年始であった。
半月の入院からやっと復帰したのはついこの間のことである。