【 ソルレヴァンテ 藤田統三氏による ワインを使ったイタリアンデザートの実演講習会 】 |
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ソルレヴァンテの藤田シェフが得意とするのは、イタリアの郷土菓子。 「イタリア菓子にはお酒をよく使います。そこで今回は、イタリアワインを使った大人のイタリアンデザートを3品ご紹介しましょう」 まずは「マルサラワインで作る、ヴェネツィアンデザート『ザバイオーネ』とクリームデザート」から。始めに、ビスキュイキュイエールに似た、サボイアルディを作ります。粉は薄力粉ではなく、中力粉を使うのが、イタリア菓子の特徴。シェフは江別製粉の「タイプER」と、それから片栗粉もブレンドしていましたが・・・? 「片栗粉はジャガイモ澱粉からできています。これを使うと、ふんわりさっくり仕上がるのでシロップなどの水分を吸いやすくなるんですよ。イタリアでは澱粉を使うことが多いですね」 更に、生地の合わせ方にもポイントが。全卵+卵黄と砂糖を泡立てたところに、メレンゲ1/3量→粉類→残りのメレンゲを混ぜていきますが、粉を入れたらさっと合わせただけで、残りのメレンゲを入れてしまいました。そんなに粉気が残ったままメレンゲを入れてしまって大丈夫・・・? |
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サボイアルディにかける粉糖の量も半端じゃない! |
「いいんですね〜これで。メレンゲを混ぜるうちに粉も混ざってくれるから、粉を練りすぎる心配もないんです。イタリア人って、合理的でしょう(笑)」 瞬く間に生地を絞り出し、砂糖をふってオーブンに入れている間に、次の作業へ。卵黄+砂糖にマルサラ酒を入れて湯煎にかけて泡立てていきます。この泡立て作業が、意外と時間がかかるもの。でも、そこは大阪出身でサービス精神旺盛な藤田シェフ。黙って作業するなんてありえません。 「世界パティスリーに出場する、イタリアチームを応援しようと、彼らのところに行ったんですよ。そうしたら、初日なんて、遅れてきた上に何も練習しやしない。いやあ、さすがはイタリア人だなあなんて感心しちゃって(笑)。2日目。ようやく計量だけやりました。・・・で、3日目。ついに、本気です。すごい集中力で猛練習していました。4日目なんて、更にすごいですよ。予定時間よりずっと早く来てやっていましたから!」 会場中が笑いに包まれる中、トークも作業も軽快に進めて、あっという間にサバイオーネクリームが完成。コーヒーカップにクリームを注いでソーサーにサボイアルディを添えれば立派なデザートに・・・?! 「はい、これでも立派なひと品なんですが、もう一工夫しましょうか。このクリームが余ったらどうしようっていう時には・・・」 |
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気取らない飾り付けもいい感じです |
なんと、再利用できるとのこと!ゼラチンとバニラを入れ、粗熱をとったらマスカルポーネクリーム、蜂蜜を加えたクリームを作ります。これとサボイアルディ、エスプレッソシロップ、ココアパウダーを使ってアントルメ状に仕上げれば、 「なんか見たことあるでしょう?そう、ティラミスなんです!」 ティラミスにもいろいろあって、これは北イタリア地方のもの。トスカーナ地方ではメレンゲを加えたりするそうです。それにしても、生地にうつシロップの量が半端じゃない!“うつ”というよりも、ドボドボ注いでいるんですから。クリームにマルサラワイン、エスプレッソシロップにサンブーカリキュール(アニスのリキュール)を使ったデザートは、卵や乳の優しい風味の中に、甘〜い香りとキリッとした苦みが効いた一品でした。 ああ、おいしい〜なんてゆっくり堪能する間もなく、2品目の「ピエモンテ州の微発砲甘口マスカットワイン『モスカート』のゼリー」へ。1時間に3品という強行スケジュールだから、シェフも大忙しです。 「これはせっかく炭酸があるので、泡を残して作ろうかなと」 え、でも、どうやって・・・? |
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ワインを注ぐ時もそう〜っと。できるだけ衝撃を与えないように! |
「勢い良く注いだり混ぜたり、それから温めたりするとシュワシュワって泡が出るでしょう。だったら、それをしなければいいってこと!」 というわけで、できるだけ加熱しないこととショックをあたえないことがポイント。鍋に少量のワインとオレンジの皮、砂糖を入れて温めたらゼラチンを加えてゼリーを作ります。残りのワインは冷凍庫へ。といっても凍らせるわけではなく、キンキンに冷やしておきます。ワイングラスや器具なども同様に冷たい状態に。後は冷えたグラスに苺やラズベリーなどを入れて、上からそっとワインを入れ、更にゼリーを注げば出来上がり。ワインそのままのフレッシュな味わいも、お洒落な演出も、大人のデザートにぴったり! |
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とっても簡単なのに、素敵!これなら家でもできそうです |
さあ、勢いにのって3品目の「聖なる黄金色のワイン「ビンサントワイン」の生チョコ仕立て」へと進みます。このワイン、なんでも普通のワインの20倍もの量の葡萄からできているということで、味わいもお値段も贅沢なもの。そのおいしさを活かすため、温めすぎないように注意します。 |
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シェフのお気に入りという聖なるワイン、「PACINA」 |
「チョコレートは難しいんですけど、今日は難しいことは一切言いません(笑)。でも、水分と綺麗につながると口溶けも良いし、日持ちもするんです。ミルクチョコレートを40℃位に溶かし、ここに30℃位に温めたワインを少しずつ入れてください。そしてしっかり馴染んでから次を入れます」 見ていると、ボウルの中のチョコレートとワインは綺麗につながって・・・ない!それどころか驚くほどボソボソです。これで本当に大丈夫? 「はい、今、明らかにまずいなっていう状況ですね。でも、1度分離させるとその後はすごく強い乳化が始まるんですよ」 その言葉どおり、暫く混ぜ続けていくと、みるみる艶々の状態に!更に真空状態にしてあげると完璧なのだそう。最後にチョコレートと同じ位の温度に戻したバターを入れて混ぜ、バッドに平らに流して冷やします。さあ、冷蔵庫へ・・・。 |
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生チョコには、エクアドル産アリバ種のミルクチョコレートを使用 |
「いえいえ。いきなり冷蔵庫には入れません。まずは15℃位の涼しいところに1日置いておくんです。そして2日目に冷蔵庫へ。最初から冷蔵庫に入れてしまうと室温で溶けやすくなっちゃうんですよ」 これは、バターとチョコレートに含まれるカカオバターとの、固まる温度とスピードの違いを配慮したもの。すぐに冷蔵すると、先にバターが締まってしまい、チョコレートの脂肪球が均一に並べなくなってしまうとのこと。こんなところにも見えない工夫があるんですね!丁寧に作られた生チョコは、ひと口でも存在感が充分。ビンサントワインの甘く醇な香りと、キャラメルのような風味が心地よい余韻を残します。 イタリア菓子とたっぷりのワイン、それは大人だけに許された甘美な組み合わせ。その相性の良さにハッとした参加者も多かったようです。藤田シェフ、素敵な大人のひとときと、楽しいトークをありがとうございました! |
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