〜 初日(3/13)編 _ 04 〜



【 KAOKA社 アンドレ・ディベール氏による
チョコレートトークショー
「ビオチョコレートへの道」 】



フランスのオーガニックチョコレートメーカーKAOKA社の紹介は、社長のアンドレ・ディベール氏、そしてKAOKAのチョコレートを愛して止まないパナデリアの三宅とのトークショーという形で行われました。参加者には、試食用にと5種類の原料チョコレートが配られました。さてどれから食べようかと手を伸ばすと・・・。

「私自身、チョコレートを良く食べ、味わい、批評します。でもその前に忘れてはならないことがあります。それは、カカオ生産者たちのことです。私は1993年以降、人生の半分を生産地に費やし、生産者と密に連絡を取り合っています」
とディベール氏。これは何やら深刻な話になりそう。身を引き締めて聞き入ります。

カカオ分や産地が異なる5種の原料チョコレート。全てディベール氏の自信作です


「私はいくつかの農園を持っていますが、例えばエクアドルには13000ヘクタールの土地があって2000家族ほどが働いています。まずは彼らに直に接することが大切だと感じました」
良い豆を作るためには生産者の力が欠かせません。けれども、生産者は製品となったチョコレートのおいしさも知らなければ、育成技術にもそれほど関心がないのが現実。そこで、
「まずは彼らにやる気をおこさせることが必要でした。今では、皆に“ミスターエネルギー”と呼ばれています(笑)」

ディベール氏が笑うと、三宅もすかさず補足します。
「ディベールさんは、まるで本当の家族のように生産者の方々と接しているんです。僕も間近でそれを見ました。ああ、何よりもコミュニケーションが大切なんだなあと」

カカオ産地の様子はスライドでわかりやすく説明


更に深刻なことに、生産者たちは皆、貧困にあえいでいます。また、オーガニックのカカオ豆を作るには手間も時間もかかるもの。そこで、KAOKA基金を設立したり、通常よりも25〜30%高い賃金を支払うなどの財政的な援助も欠かしません。
「信頼関係を築いていくためには、長期的な視野でとらえないと。この開発プロジェクトを立ち上げる時に、まずは第1期として10年という期間で考えました。何よりも現地の人あってこそできること。私は機関車の頭の部分だと思っていますから」

生産者を育て、効率よく仕事を進めながら品質の高い豆を作るためにディベール氏が選んだ方法―それは、共同体単位で取りくむということ。以前は各生産者が収穫した豆を発酵、乾燥させた状態で集めるというのが慣習でしたが、それでは質の高いものにはなりません。

シェードツリーであるバナナの葉は、発酵作業でも欠かせません


「第1次段階である発酵作業は、チョコレートのアロマを決定付ける大切な仕事。だから、私たちは各農家から新鮮なカカオ豆を集め、皆で共同で発酵作業を進めています」
いい豆も、適した加工を行ってこそ活かされるもの。まずは豆のまわりについているパルプ(白い綿状の部分)ごと、ケースに入れて上にバナナの皮を被せ、パルプに含まれる糖分をアルコール化させます。続けて空気に触れさせながらアルコールを酸化、これによりお酢となって発熱し、50℃ほどに上がります。その結果、豆の成長が止まり、お酢が芽の中に浸透してタンニン(ポリフェノール)が酸化します。つまり、特有の強いアロマはタンニンの酸化によって生まれるのです。これはとても大切なステップだとディベール氏は言います。

「目をつぶるとカカオ畑にいる幻想を抱くようなものを作りたい。それぞれにはっきりと特色があり、食べた後も残り香がいつまでも広がっているようなものを。ちなみに、私の専門であるダークチョコレートは、噛まずに口の中で溶かして楽しんでくださいね」
皆で一丸となって作り上げたKAOKAのチョコレートは、豆の味がそのまま伝わってくるようなナチュラル感が魅力。ディベール氏の熱い想いが小さなひと粒にぎゅっと詰まっているようです。

接木用の木を育てることは、カカオを後世まで守るために大切なこと


しかし、こんな風にチョコレートをあれこれ楽しめるのも、いつまでできることか・・・。実は、今、カカオの木は絶滅の危機に瀕しているそうです!
「このままでは、15年後にはカカオが存在しなくなるでしょう。私はカカオの木を育て、チョコレートを作ることに関して、エキスパートになりました。そして次の段階へと進まなければなりません。それは、未来のためにカカオ豆を救出すること。2003年からのプロジェクトとして、接木するための木を栽培しています。それによって生産する木を増やすことができるのです。今では、年に30万本の新しい木を提供することに成功しました」

おいしい原料用チョコレートを作りつつも、ディベール氏の目は遠い未来を見据えています。カカオを愛し、カカオを守ろうとするこうした取り組みは、まさに“オーガニック”と呼ぶにふさわしいもの。人生をかけて真剣にカカオと向き合うディベール氏の熱意は、参加者の心に強く響いていました。






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