実りの季節、秋・・・。
大自然の偉大さを、ひときわ強く感じる季節です。 そんな大自然の恵み、メープルシロップを使ったパンとお菓子 のコンテスト〈メープルスイーツコンテスト〉が今年も開催されました。 第6回を迎え、ますますレベルの向上が期待される今回。 さて、どんな作品が受賞したのでしょうか? |
抜けるような青空が気持いい10月31日。今年で第6回目を迎える〈メープルスイーツコンテスト〉の表彰式が、カナダ大使館で開催されました。 今回のエントリーは、147作品(菓子部門 68作品、パン部門 79作品)。まずは書類選考による一次審査が行なわれ、見事通過した菓子部門5名、パン部門5名が2次審査でその腕と味を競い合いました。前日の30日に実技審査は行なわれており、あとは今日の結果発表を待つばかり!参加者の方たちは、きっと眠れぬ夜を過ごしたことでしょう。 |
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いち早く準備された目録にドキドキ。でも、まだ名前は空欄になっています
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会場には、審査員を務める〈オーボンヴュータン〉河田勝彦シェフ、〈パティスリー ノリエット〉永井紀之シェフ、〈シニフィアン・シニフィエ〉志賀勝栄シェフ、〈ポンパドウル〉渡辺睦シェフをはじめとする、パン、菓子業界の重鎮たちが顔を揃え、和やかな中にもどこか凛とした空気が立ち込めています。
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審査員陣の後ろには、発表を待つ参加者たち。コックコートの白が会場を引き締めます
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〈オーボンヴュータン〉 河田勝彦シェフ |
〈パティスリー ノリエット〉 永井紀之シェフ |
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〈シニフィアン・シニフィエ〉 志賀勝栄シェフ |
〈ポンパドウル〉 渡辺睦シェフ |
ところで、皆さんは日本のメープルの輸入量がアメリカに次ぎ、第2位(2004年度より)なのをご存知でしょうか? 確かに、お菓子やパン、料理など様々な場所でメープル味を見かけますが、実は日本人のメープル好きはますますヒートアップ中。輸入統計によれば、2010年度のメープルシロップの輸入量は過去最高の2582.9トンに!もはや、日本の定番フレーバーとして確かな地位を築いているようです。 |
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メープルが採れる場所は北米のみ。自然の恵み豊かなその場所はGifted Placeと呼ばれているそう
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サトウカエデの幹に傷をつけ、そこから溢れる樹液を集めるのが伝統的な手法。クインビーガーデンでは、これまで培ってきたハチミツのノウハウをいかし、メープルの品質向上と安定化に尽力しています
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駐日カナダ大使のジョナサン T. フリード氏
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日本人に非常に馴染み深いメープルですが、 ケーキやパンの素材として使う場合、"使い方が意外に難しい"のだとか。 というのも、天然のメープルの場合、焼成すると香りが飛びやすい性質があるから。風味や香りを強くしたいからとたくさん入れると独特のエグミのような風味が出てしまうし、シロップの場合は生地に入れる量にも限界が・・・。そのため、実際は香料に頼ってしまうケースも少なくありません。また、ナッツ×メープルなど、どうしても定番的な組合せになりがちなのも難点。 ・・・そう、やさしい風味にも関わらず、意外に手ごわい素材なのです。 |
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樹液を煮詰めたシロップと、さらに水分を飛ばして粉末にしたシュガー(クインビーガーデン)。もちろん、添加物、保存料は一切使用しない天然の甘味料
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そんな難易度の高い素材にも関わらず、年々〈メープルスイーツコンテスト〉のレベルは向上。単に“メープルの味を出す”のではなく、“メープルと他素材との相性”やそこから生まれる“新しいおいしさ”を提案する意欲作が増えているのだそうです。
それでは、受賞者の発表です! |
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受賞者の皆さん、おめでとうございます!
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さて、表彰式を終えた後は、別室に用意された立食パーティの会場へ。 |
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メープルやカナダ産素材を使った、洒落たピンチョスがずらり
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これでも充分豪華なのですが、今回は震災の影響も考慮しシンプルなスタイルに変更したのだそうです(これまでは着席のコーススタイルでした)。 「震災を受けて、コンテストの開催についても悩みました。でも、この文化を続けていきたいという想いが強く、今回の開催を決めました」 と、クインビーガーデン社長の小田忠信氏。 |
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創業80年の歴史を持つクインビーガーデンの小田忠信社長
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実は、3月の震災時に、いち早く援助を申し出てくれたのがカナダ政府。東北に約1千人分の温かい食事とメープルラスクを手配したり、被災者に対する無償留学を受け入れてくれたりと、様々な形で日本を支援してくれました。カナダ大使のフリード氏は自ら被災地にも足を運ばれたそうで、小田氏には、この開催が日本とカナダのつながりを深めることにつながれば・・・という想いがあったそうです。
会場には、審査員4名のメープルを使ったお菓子やパンも登場!トップシェフの手にかかると、どんなおいしさが生まれるのだろう・・・と、熱い注目を集めていました。もちろん入賞者たちも気になるようで、憧れの先輩が作ったメープル作品をじっくりと味わう姿が印象的でした。 |
〈オーボンヴュータン〉 河田勝彦シェフ メープルといちじくのタルト |
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ずっしりとした生地の中には、大ぶりないちじくがたっぷり。いちじくの深い甘みに、メープルの軽い甘さと独特の風味が重なることで、新たなおいしさが生まれているよう。上に添えたメープルのクリームが、味と食感のアクセントになっています。 |
〈パティスリー ノリエット〉 永井紀之シェフ ケベコワ |
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タルトの中から、トロッとやわらかなメープル風味のキャラルに包まれたナッツが溢れ出ます。香ばしさの後にフワッと訪れるメープルの香りがとても印象的。砂糖で作るキャラメルよりも甘みがやわらかいので、どこか軽さも感じられます。 |
〈シニフィアン・シニフィエ〉 志賀勝栄シェフ バゲット デラブル(※写真手前) |
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生地に対し限界までメープルシロップを入れて作るという、志賀シェフらしい一品。見た目はもちろん、食感や味なども完全なハード系ながら、かむほどにじんわりとメープルの甘みが膨らみます。肉料理など食事に合わせたいおいしさ。 |
〈ポンパドウル〉 渡辺睦シェフ ブレッド・メープル・ウォールナッツ レザンノアとクリームチーズwithメープルシロップ |
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クルミやクリームチーズといった、メープルと相性の良い王道素材との組合せ。生地の食感もやわらかく、ホッとするようなおいしさです。 |
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「今回のコンクールに応募されたレシピを見ていて感じたのは、ルヴァン使いがスタンダードになってきているということ。約3千年という長い時間をかけて培われてきた酵母と発酵の歴史を、今の20代、30代の人たちが、コンクールの場で表現してくれていることを嬉しく思いました。それから、今回は味の着地点がしっかりと見えた作りこみをしている人が多かったことも良かったですね。パンの未来が明るくなるような、頼もしい内容でした」 と志賀シェフ。 そして、最後を締めくくったのは、もちろん〈オーボンヴュータン〉河田シェフです! 「3回続けて審査員をさせていただきましたが、その度に新しい発見や刺激になるようなことがありました。メープルは、甘さのひとつ。ただ、先に甘さだけを感じさせることなく、香りや他とのバランスをいかせるかが大切だと思う。今回は、そういう意味でもなかなか良いものがありました」 |
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メープルだけでなく、他の素材とのいかし方がポイントとなった今回のコンテスト。 ますます進化するメープルとその未来に期待したいと思います! (2011.11)
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