埼玉県、浦和にある「パティスリー アカシエ」。2007年の夏に、オープンして以来、パリのパティスリーを思わせる洗練された外観と、その期待を裏切らない見目麗しいお菓子で、いまやスイーツ好きなら誰もが知る人気店となった。まわりは埼玉県庁など県の主要な施設のある好立地。とはいえ、興野燈シェフのお菓子のとりこになっているのは、ご近所の方だけではない。東京やはたまた関西から・・・というお客様もいるだろう。そんな方たちには、待ちに待ったアカシエのサロンのオープンだ。6月6日、本店のそばに、この「アカシエ・サロン・ド・テ」は生まれた。



「“非日常”の特別な空間を楽しんでください」と興野シェフ


本店と書いたが、このサロン・ド・テがアカシエの2号店ということではない。ここはあくまでも、ア・ラ・ミニッツに仕上げられたお菓子を楽しんでもらうために生まれた、独立したサロンだ。そう、サロン。カフェでもイートインでもない、社交場というと少しオーバーかもしれないけど、ただお菓子を食べるだけ、また時間を費やすだけの場所ではなく、出来立てのデセールとその“時”を楽しむための場所。そんな雰囲気がここにはある。興野さんのことなので、この居心地のよさを生み出すためにどれだけ考えつくしたんだろう・・・と想像するのも、また楽しい。
店内は、テーブル席とカウンター席で構成されている。どこかアカシエの名品「アントワネット」を思わせる内装は、壁や椅子の柄やデザイン、そして照明など、クラッシックでいながら、でも決してごてごてはせず、すっきりと落ち着いた空間を生み出している。カウンター席に座れば、その向こうでは、興野シェフ(もしくは、他のパティシエの方)が、おいしそうなデセールの仕上げをしていてくれるはず。まだ見ぬ光景に、期待が高まる。


ラグジュアリー感漂うエントランスは、
まさに“サロン”ということばがぴったり



さて、このサロン・ド・テでは、どんなスイーツが楽しめるのか、そこが一番気になるところ。もちろん、アカシエのプチガトーもいただけるそうだが、アシェットデセールについて、興野シェフに少しだけお話を伺ってみた。
まず、基本はクラッシックなもの。といっても、それは基本を大事にするという意味合い。クラッシックなものがあってこそ、それを現代にどう活かしていくか。流行の先端を行くとか、新しいものばかりを追うのではなく、今まで見落としていたものを、もう一度見直して行く。そんな気持ちから、ここで楽しめるデセールは生まれて行くそうだ。
素材をプラスしていくデセールはよくあるが、興野シェフはマイナスで組み立てていったらどういうデセールができるのかと考えているという。そして、たとえ、種類が少なくなったとしても、集中して作ることで、本当においしいものを作っていきたいと語ってくれた。



ガラスのシャンデリアや上品な花柄の壁紙が優雅な空間を演出。
シェフがイメージしたのは、ずばり、ヴェルサイユ宮殿!



なんといっても、サロン・ド・テの最大の魅力は、温度帯が無限に使えることだそうだ。温かいもの、冷たいもの、そして焼きたてのものをその場で楽しめる。確かに、テイクアウトのお菓子にはない魅力である。
また、お客様はもちろん、作り手にとってもこの臨場感は、刺激になると語る。それはご自身のことだけでなく、スタッフを育てるためにも、大きな役割をはたしてくれるのかもしれない。



ピカピカに磨きこまれたマーブル
グレーのカウンターがゴージャス



そして、たとえ、お客様からのリクエストで、「簡単な料理も出して」と言われることがあったとしても、興野シェフはそれはやらないつもりだそう。それは、いつも彼のベースにある「自分の中で、80点のものは出さない」という信念があるから。
もちろん、お菓子に対してもそうだが、たとえば、料理。それは、料理人ではない興野シェフにとって、80点はとれないジャンルのものだ。だから、お客様の口に入れるわけにはいかない・・・と言う。
さて、80点。興野シェフは、80点以下・・・とは言わなかった。だから、80点も彼にとっては及第点ではないのかもしれない。常に90点、100点をめざしているのであろう興野シェフ。「形は作れるが、本当においしいものを作っていきたい」「この仕事を、死ぬまで続けたい」と熱く語ってくれた。



数人で楽しむには、テーブル席がお勧め


パナデリアが伺ったのは6月3日のプレオープンの日。まだ厨房のオーブンは本格的に稼動していなかった。その後、6日には完全なオープンを迎えたはず。今頃は、誰かがあのテーブルに座り、ア・ラ・ミニッツに仕上げられたデセールを楽しんでいるのだろう。この夏、パナデリアもまたゆったりとした時間を過ごしに、訪ねてみたいと思っている。
(2010.06) 









アカシエ・サロン・ド・テ
住所 埼玉県さいたま市浦和区高砂4-4-19 タック高砂
Tel 048-764-8146
Fax 048-764-8147
営業時間 11:00〜20:00
定休日 水曜(祝日の場合は変更あり)
アクセス
JR宇都宮線・高崎線 京浜東北線 
浦和駅西口より徒歩13分