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Text by Chieko Asazuma |
「ベージュ アラン・デュカス 東京」といえば、世界で活躍するフレンチの巨匠、アラン・デュカス氏とシャネルが手を組んだ、誰もが憧れる銀座のフレンチです。 言うまでもないことですが、コースの中で、デザート、そしてプティフールにいたるまで、そのクオリティーは料理と同等。まして、パリにショコラトリーを構えるデュカス氏です。デザートにぬかりがあるはずがありません。 |
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ベージュ アラン・デュカス 東京 |
そんな「ベージュ アラン・デュカス 東京」で、今年の8月からシェフパティシエが交代となりました。デュカス氏が選んだのは、1985年生まれのシルヴァン・コンスタン氏です。
コートダジュールで生まれたコンスタン氏は、料理・製菓学校を卒業後、芸術的なパティスリーの世界にあこがれてそのキャリアをスタート。2007年にロンドンに渡り、「ロランジェ・レストラン」「ホテル ドーチェスター」を経て2011年にフランスに帰国。ヤニック・アレノ氏のもと「ホテルシュヴァル ブラン」などで活躍し、2014年には台湾へ。「ステイ」「スウィート・ティー」のシェフパティシエを務め、日本にやってきました。 |
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新しくシェフパティシエに就任したシルヴァン・コンスタン氏 |
なんと、日本には、飛行機の乗り換えで寄ったことがあるだけで、滞在したのは今回が初めてだそう! 「日本の食材、特に豊富だと聞いている柑橘系にはとても興味があります。抹茶やユズが世界のものとなった今、次の新しい食材とのクリエイションに挑戦したいと思っている」 と意気込みを語ります。 デュカス氏とレシピのやり取りなどを経て、実際にレストランのデザートを手掛け始めたのは9月。2ヶ月を経た今、どんなデザートを出しているのか気になるところですよね。早速、現在、レストランで出ているデザート2品を紹介します。 |
![]() “リンゴのコンフィ パッションフルーツ/ キャラメル グラニースミスのソルベ” 「フランスのリンゴより果肉がしっかりしていて使いやすい」 とシェフ。タルトタタン風に並べたりんごは、ふじを使用。程よく歯ごたえを残し、引き締まっています。キャラメルを作るときにパッションフルーツを入れてデグラッセしているので、“キャラメル”といってもシャープで甘酸っぱい風味があり、キレがあります。下に薄いビスキュイが敷いてあるのですが、これが驚くほどおいしい。こうした細かいパーツ一つまで、素材がよく、完成度が高いのはさすがです。甘さは軽やかで、デザートを食べているというよりも、料理の延長上にリンゴの一皿が出てきたという方がしっくりくるかもしれません。グラニースミスは青りんごの種類です。 |
“マロンと柑橘 モンブランスタイル”
![]() マロンにカシスは定番ですが、柑橘を合わせるというのは意外性が。 「マロンのまったりとした感じを補う要素として、フランスで定番のカシスのかわりに、“日本”も意識して柑橘を使いました。デュカス氏がデザートに柑橘を使うのが好みだということもあります」 絞った栗の部分には、サツマイモもブレンドしているそう。食べてみると、滑らかな栗やイモ、そして中のクリームの味の主張はそれほど強くなく、穏やかな風味です。この一皿で何よりインパクトがあるのは、柑橘の使い方。グレープフルーツやマンダリンオレンジを使っているそうですが、柑橘の持つ酸味だけでなく、苦みをかなり積極的に使っている! 上にのったグレープフルーツピールも、しっかり苦みがあります。甘くてねっとりとまろやかなモンブランを想像していると、予想外の大人の味に驚かされる、新鮮な味わいの一皿です。添えられているのはさっぱりとしたマンダリンオレンジのソルベ。リンゴのデザート同様に、どこまでも軽い食後感です。 |
そしてもう一皿、12月19日〜27日まで登場するクリスマスコースのデザート(名前はまだ決まっていないそう)も一足先にご紹介を。 チョコレートとオレンジ、アールグレーティーを使い、美しいフォルムは 「立体感と流れを表現しています」 とのこと。 ![]() ビスキュイをボトムに、中にはアールグレーのチョコムース、オレンジママレード、フレッシュオレンジ、オレンジコンフィと、オレンジを変化させたものがいろいろ。ミルクチョコレートをオレンジの苦みで引き締めています。オレンジとカンパリを使ったほろ苦いソルベも添え、きりっと品格のある仕上がり。“チョコレートのお菓子”という言葉から想像する重さの全くない、軽やかな一皿でした。 ちなみに使っているチョコレートはヴァローナ社のものでしたが、 「いずれは、デュカス氏のものを使ってみようと思う。そうなったら、こうしたレシピも、チョコレートだけを変えればいいというものではない。全体のバランスが全く異なってくるので、すべての配合を変えることになるだろう」 とシェフ。あくまでもざっくりとした印象ですが、ヴァローナ社のチョコレートはエレガント系の味わい。デュカス氏の「ル・ショコラ アラン・デュカス マニファクチュール・ア・パリ」のクーベルチュールは野性的な味わい。デュカス氏のものを使うとコンスタン氏のチョコレート系のデザートはどうなるのだろうと、スイーツ好きがずらりと揃ったこの日のテーブルでは盛り上がったのでした。 日本で四季を過ごし、様々な味を知っていくコンスタン氏。シェフパティシエとして、どんなデザートを食事の締めに持ってくるのか、今後もとても興味のあるところです。 |
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