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取材・文 佐々木 千恵美 |
BVLGARI Salone del Cioccolato 2018
ハイジュエリーや時計、バッグ、いつかは私もと憧れるイタリアのブランド、ブルガリ。2007年には銀座のメインストリートにブルガリ銀座タワーがオープンし、同時にレストラン、バー、そしてチョコレートブランド〜ブルガリ イル・チョコラートも誕生しました。 イタリアならではの食材・素材に日本の食材を組み合わせ、職人によりひとつひとつ丁寧に作り上げられたチョコレートをチョコレート・ジェムズ(宝石)と呼び、年ごとにコレクションも展開。バレンタイン限定のコレクション、彼と彼女を意味するチョコレート・ジェムズ“ルイ・エ・レイ”を毎年楽しみにしている方も多いのでは? 誕生から10年。今季のブルガリ イル・チョコラートは、いつものクリスマス、バレンタインに加え、10周年を記念した限定品も登場するということで、プレス発表会は特別な場所で行われました。そこはブルガリ イル・チョコラートのチョコレート・ジェムズが作られるラボ。コミュニケーションが取りやすいなどの理由で銀座からさほど距離のない都心の地下に2年前に開設されたとのこと。地下なので温度も安定し、とても清潔な空間で作業が行われていました。 一体なぜお店ではなくここで? 「今日はみなさんにチョコレート・ジェムズの制作体験をしていただきます。」 普段一般公開も体験もしていないラボで本当に特別のことだと聞き、取材とはいえ思わず声を上げ喜んでしまいました。 そして、BVLGARI Il Cioccolatoのブランドロゴ入りのエプロン(非売品)をつけてラボ見学と作業体験へ。 どんな体験をしたかというと、薄くコーティングをかけてあるディスク状のガナッシュを、スタッフが一つずつエンローバーを使ってチョコレートをくぐらせ転写シートをのせたところを、専用のスティックを手に持った体験者がきっちり水平に押しつけていくという作業。力を入れ過ぎるとつぶれてしまうし、なでるだけでは転写がまばらになる可能性があるし、エッジのきれいな仕上がりにならない。一見簡単そうに見えるけれどとても気をつかう作業だということが、やってみて初めてわかりました。ラボではこの作業をするときは4人で約4000個、3時間ほどかけて行うそうです。その集中力たるや想像するだけで目がまわりそうです。 |
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マシンを使用してできたガナッシュ。ガナッシュと下地の薄いチョコレートコーティングが同時にできるイタリアのマシンを導入したことで、手作業よりも少ないロスで合理的に作れるようになった。 |
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ここからが職人の繊細な手作業。エンローバーにくぐらせたガナッシュにホワイトチョコレートを細く波型に絞る。 |
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すると次のトンネルで上から風があたり、雰囲気のある模様ができる。 |
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ロゴ入り転写シートを素早くのせ、上から適度な力で押さえつけ美しくフラットに接着させる。 |
次に十分に固まったチョコレートのトップ真ん中にピスタチオと金箔をのせてチョコレート・ジェムズを完成させる体験。金箔は思い切り贅沢に多めに挟んだ方が上手くできますというアドヴァイスにドキッとしながら、接着のアメを絞った上に息をとめながらピンセットを持って行きました。やり直せばやり直すほど美しくなくなるので、一度で決めることもポイント。 |
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アメを絞りピンセットでピスタチオを接着。 |
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最後に金箔をひと思いにのせる。 |
このひと手間で、首元にダイヤモンドをするかのようなノーブルな輝きが生まれる。体験を終え、ふーっとため息。チョコレート・ジェムズがとても愛しく思えてきました。 ひとつひとつの工程を丁寧な手作業を施すことで、チョコレート・ジェムズと呼ぶにふさわしいチョコレートがひとつ出来上がる。それはジュエリーやバッグを仕上げるのと同じクラフトマンシップが、チョコレートにも息づいているということ。きっとそれは受け取って食べる人にも伝わるのでしょう。体験後の試食はとても味わい深いものとなりました。 それでは、今期のチョコレートを紹介していきましょう。 まずは毎年恒例、バレンタイン限定のチョコレート・ジェムズ「サン・ヴァレンティーノ2018 “ルイ・エ・レイ” (彼と彼女)」(San Valentino 2018 "Lui e Lei")から。 紹介してくださるのはメートル ショコラティエの齋藤香南子さん。2007年オープン時からブルガリ イル・チョコラートとともに歩んできた彼女もまた今年で10年の節目。2016年の1月にメートル ショコラティエに就任してから今季で2年目。どんな作品を創り出したのか早速お話しを聞いていきましょう。 「これまでのルイ・エ・レイはシックな雰囲気でしたが、今年はホワイトチョコレートを使ったりピンクのロゴシートを使ったりとポップに仕上げています。」 |
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メートル ショコラティエの齋藤香南子さん。この仕事を始める前はそば打ちなど、様々な食の現場を経験。だからこそ、食材に対するジャンルの国境がないのでしょう。 |
ガナッシュに使ったチョコレートはイタリア産のロー・チョコレート“カカオクルード”。素材の持つ栄養素や酵素を活かすため、高温加熱を避けるローフードは美容と健康を気遣うセレブたちも取り入れている食事法のひとつ。スーパーフードでもあるカカオなら、なお期待が持てるということで、最近では日本でもロー・チョコレートを目にする機会が増えました。 こちらのイタリア産ロー・チョコレートは、その中でも希少なクリオロ種のカカオ豆が原料。日本ではブルガリだけが扱っている特別な品なのだそうです。 |
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“カカオクルード”はこんな塊のままイタリアから直送される。それをナイフで砕いてからガナッシュにする。結構な手間だ。 |
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“カカオクルード”を溶かした状態。マットなテクスチャーは独特。 |
「ルイ」(彼): レモンピールのガナッシュをホワイトチョコレートでコーティング。 「レイ」(彼女): ピエモンテ産ヘーゼルナッツとデーツのジャンドゥーヤガナッシュをビターチョコレートでコーティング。 |
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レモンピール入りのロー・チョコレート77%に、果汁とシロップ漬けのレモンピールを加えたガナッシュを黒糖入りブロンズチョコレートでコーティングした「ルイ」は、口の中でゆっくり溶けていくうちに広がるカカオの香りとレモンピールの食感がなんとも複雑でエレガント。
ピエモンテ産ヘーゼルナッツのジャンドゥーヤにチュニジア産デーツを混ぜたガナッシュをビターチョコレートでコーティングした「レイ」は、最初にセンターのやわらかさとヘーゼルナッツのナッティ感に驚き、その後デーツの懐かしい甘さにほっこり。昨年ドバイでもチョコレートが販売となったことをきっかけに、アラブではデーツが良く食べられていると知り、取り入れてみたくなったと齋藤さん。今や美容食としても注目されるデーツですが、昔から日本でもソースなどの甘味付けに使われているだけに、しっくりくる味わいです。 |
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ピエモンテ産ヘーゼルナッツとチュニジア産デーツ。 |
また「サン・ヴァレンティーノ2018 “ルイ・エ・レイ” 」に2つのフレーバーを加えたスペシャルボックスも登場します。
アーモンド:シチリア産のアーモンドをふんだんに使ったミルクチョコレートガナッシュをビターチョコレートでコーティング オリーブ:香り高いエキストラヴァージンオリーブオイルのガナッシュをビターチョコレートでコーティング |
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「今までアーモンドは組み合わせで作っていましたが、アーモンドだけで出すのは初めてです。」と齋藤さん。
シチリアのアーモンドは、他が桃の木同士で接ぎ木しているところをアーモンドの木に接ぎ木して栽培しているから味が違う。それを皮ごと自家製ペーストにしたガナッシュはソフトでフレッシュ、アーモンドの香りそのものが際だちます。 最後は斎藤さんが4つの新作の中で一番苦労したというオリーブオイル。ガナッシュを生クリームではなく、オリーブオイルで乳化させるのですが、その割合や使うオイル、チョコレートの種類を変え、何度も試作を重ねて目指す味を完成させたそう。最終的にフルーティーで後味にちょっとだけ辛みのあるシチリア産のエキストラヴァージンオリーブオイルを採用したというその一粒は、舌にのせたときのなめらかでぬるっとしたオリーブオイル独特のテクスチャーと香り、最後のピリ辛さまで表現され、心地よい余韻を楽しませてくれました。 トレンドをさりげなく取り入れ、妥協のない材料へのこだわり、仕込み、仕上げの手作業まで、ブルガリというブランドのエスプリをとことん感じるこの4品。気持ちも高まってきました。 次に紹介するのは10周年を記念して特別に作られたチョコレートボックス「Decimo Anniversario(デーチモ・アニヴェルサリーオ)」。50個限定で11月20日からブルガリ銀座タワーのブルガリ イル・チョコラートのみでの販売。なくなり次第終了なので、もしかしたら完売しているかもしれませんが、その内容がとてもイタリアっぽく洒落ているのです。 用意されたチョコレートボックスはブルガリ イル・チョコラート初のラウンド型で、ブルガリのロゴと「10th Anniversary Ginza Tower」の刻印が押されたボックスを開くと、リング形のチョコレート・ジェムズが10個、円形に配置されています。 |
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真ん中に穴の開いたリング形のポリカーボネート製チョコレートモールドは世界初。ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティンのペストリーシェフ、ファブリツィオ・フィオラーニ氏が1年かけてイタリアのメーカーと開発したもの。モールドから外れるようにするのに苦労したそうです。そんな革新的なモールドで作るのはイタリア伝統のチョコレートであるクレミーノ。
「材料は3つ。ビターチョコレート、ブロンテ産ピスタチオ、ホワイトチョコレートのオパリス。」とフィオラーニ氏。帽子型のジャンドイオット、チョコレートとジャンドゥーヤが層になったクレミーノは、イタリア人なら子供の頃から慣れ親しんでいる味。 |
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ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン ペストリーシェフ、ファブリツィオ・フィオラーニ氏。開発したリングモールドを見せてくれた。 |
「ぜひ体感してほしい。ひと口で食べてみてほしい。僕は日本のお鮨が、一口で食べた後もずっと余韻が残っている楽しさを知りました。このチョコレートでお鮨のような楽しさを表現したかったんです。」 |
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1個の重さも約10gと、とことん10にこだわった(他のチョコレート・ジェムズは20〜24g)エレガントで美味しいアニバーサリーリング。 |
食べてみるとフィオラーニ氏の言う通り。ピスタチオのほんのり塩味を感じる香ばしさと、ビターチョコレートのハーモニーが、溶けてなくなった後もリフレインするじゃないですか!
最後はクリスマスの限定品を紹介しましょう。 ブルガリ イル・チョコラート Natale Box2017 (ナターレ・ボックス2017) 4個入り 10個入り フィレンツェ産のマーブル紙を使用し星のモチーフをデザインしたクリスマス用の赤いボックスには、イタリアのクリスマス伝統菓子パネットーネと、スパークリングワインのフランチャコルタをフレーバーに閉じ込めたチョコレート・ジェムズが入っています。フランチャコルタを飲みながらパネットーネを食べるイタリア人の儀式をチョコレートでぜひ。 4個入りはそれぞれ2個ずつ。10個入りはこれらにブルガリの定番ブルガリ・ブルガリ ラズベリー&チェリー、ブルガリ・ブルガリ バルサミコ&フィグ、アーモンド&ブランデーがそれぞれ2個ずつ入ります。 |
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チョコレートだけでなく、本物のPanettone (パネットーネ)も登場。イタリア、ミラノの伝統的なお菓子、クリスマスシーズンには必ず各家庭で楽しまれる、レーズン、オレンジピール等ドライフルーツの風味が豊かなパネットーネを、ブルガリ イル・チョコラ―トでは伝統的なレシピを用いて作っています。毎年心待ちにしているファンも多いとか。こちらも数量限定、なくなり次第終了なのでお早めに。 |
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いかがでしたか?
今回チョコレート・ジェムズの制作現場を見て、触れて、聞いて、頂いて、とても刺激を受け、チョコレートがますます愛おしく感じるようになりました。この体験を参考に、みなさまにもじっくり味わっていただけたら幸いです。ジュエリーや時計と同じエスプリ、クラフトマンシップがきっと感じられるでしょう。
*販売期間、店舗など詳細は下記サイト等でご確認ください。 |
ブルガリ イル・チョコラート お問い合わせ先:ブルガリ イル・チョコラート 03-6362-0510 http://gourmet.bulgari.com/shop/default.aspx BVLGARIのWEBサイト https://www.bulgari.com/ja-jp/ |
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