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取材・文 下園 昌江 |
ピエール・エルメのお菓子といえば、「もちろんイスパハン!」「私はサティーヌが一番」「でもミルフィユも最高だよね。」とそれぞれのスイーツにファンがいます。 今年の秋には「ファン ド ピエール・エルメ」と銘打ったスイーツが各ブティックに並び、ファンの心と味覚を満たすピエール・エルメの代表的なスイーツが定番から今年の新作まで並びます。 今回は、ファン ド ピエール・エルメに登場する最新作「Helena エレナ」のお披露目発表会に伺いました。 |
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ピスタチオのドリンクとマカロン |
会場となったのはピエール・エルメ・パリ 青山のサロン。 会場につくとまず手首につけるリボンをいただきました。淡いピスタチオカラーのサテン生地。続いてウェルカムドリンクとマカロン。どちらもピスタチオフレーバーです。 そう、ここまでの流れで分かるように、新作は「ピスタチオ」が主役のガトーです。 今回の会では、新作「エレナ」の試食と、仕上げ作業のデモンストレーションが披露されました。 デモンストレーションを担当したのは、エグゼクティブ シェフのクリストフ・ドラピエ氏。 慣れた日本語で、仕上げの工程を説明してくださいました。 |
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ピスタチオ風味のマスカルポーネクリームを絞り出します |
エレナのベースになるのは、地中海に浮かぶイタリアの島シチリアの伝統菓子「カッサータ」をイメージしたもの。カッサータはリコッタチーズにナッツやドライフルーツを組み合わせたお菓子です。 土台はピスタチオのサブレ。その上にフルーツのコンフィ入りリコッタクリームを重ねています。 その上に絞るのはピスタチオ風味のマスカルポーネクリーム。サントノーレ口金を左右に動かしながら手前に絞り、まるで波のような造形を作っていきます。 |
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手際よく薄いチョコレートの帯を巻き付ける | 仕上げにピスタチオのロシェをトッピング |
そして、極薄く延ばしてよく冷やしたピスタチオグリーンのチョコレートをケーキのサイズに合わせてカットし、まるでリボンの様に、ぐるっとケーキの周りを覆います。
この作業を手早く行わないとチョコレートが柔軟性を失い、きれいに巻けなかったり、手の熱で溶けてしまうので、見ている私達にも緊張感が高まりました。 慎重かつ素早いドラピエ氏の作業で、ケーキはピスタチオカラーに変身! 最後にピスタチオのロシェやサブレを散らして完成です。 |
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完成したケーキと笑顔のドラピエ氏 | エレナのアントルメ |
エレナが完成して、笑顔のドラピエ氏。見ていたプレス陣からは自然に拍手が起こります。 シンプルながらモダンで動きを感じる仕上がりはピエール・エルメ・パリらしさを感じます。 |
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プティ ガトーのエレナ | エレナ断面 |
いよいよ試食タイム。デモンストレーションはアントルメの作成でしたが、試食ではプティ ガトーをいただきました。小さなエレナが並ぶ姿は壮観! 構成は分かっていても、やはり気になるのは断面です。ナイフでカットすると美しい断面がお目見えしました。底からピスタチオのサブレ、ビスキュイ、フルーツコンフィ入りリコッタクリーム、ピスタチオ風味のマスカルポーネクリーム、ピスタチオのロシェ、そして周囲にピスタチオカラーのホワイトチョコレートです。 リコッタクリームは乳脂肪分が低くさっぱりした味わい。そのためフルーツのコンフィやピスタチオの味を引き立ててくれます。そこにピスタチオ風味のマスカルポーネクリームを絞ることで、まろやかさやコク、ピスタチオの濃厚な味わいをプラスして、ピスタチオのお菓子を食べた!という満足感を与えてくれます。 サクサクしたサブレやカリッと香ばしいピスタチオのロッシェは食感のアクセントになっています。 |
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美しいピスタチオグリーンのエレナ |
エレナは、もともとピエール・エルメ氏にウェディングパーティーの際のケーキとしてオートクチュールで依頼されていたケーキでした。その時の依頼者のリクエストが「ピスタチオのケーキ」。夏のウェディングということもあり、「重くないものを」という注文もあり、それに合わせてエルメ氏は試作を重ねてきたそうです。そこでヒントになったのがシチリアのカッサータ。 カッサータで使うリコッタチーズは、フレッシュ感があり乳脂肪分が低くさっぱりしています。癖がなくニュートラルな味なのでピスタチオの味も引き立ててくれます。 そして完成したのが、依頼者の女性の名前をとってつけられた「エレナ」。 これだけ素晴らしいケーキが完成したのですが、実は諸事情でそのパーティーは開催されなかったとか。でも、この女性の依頼のおかげで私たちがエレナを食べられることになったので感謝しなくてはいけませんね。 |
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ファン ド ピエール・エルメでは、このエレナをはじめ、魅力的なスイーツが揃います。それらを紹介していきましょう。 |
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イスパハン |
ピエール・エルメのケーキの中で代表的な「イスパハン」。 今では広く知られるようになったフランボワーズ、ライチ、ローズの組み合わせですが、これを初めて口にした時には、言葉にならないほどの衝撃だった!という方も少なくないはず。エレガントで官能的な味覚の世界を感じさせる一品です。 |
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ミルフィユ アンフィニマン ヴァニーユ |
何層にも折り重なった繊細なフィユタージュに、天然バニラで香りづけた豊かな味わいのマスカルポーネクリームをサンドした贅沢なミルフィユです。 フィユタージュとクリームのみというごくごくシンプルな組み合わせだけに、素材の良さ、技術の高さを感じるお菓子です。 |
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オペラ ア マ ファソン |
フランス伝統菓子のオペラをエルメ氏の独自の感性でアレンジしたもの。 チョコレートとコーヒーの組み合わせはそのままに、キャラメリゼしたフィユタージュや薄いチョコレートのディスクを用い、それぞれを重ね合わせることで様々なテクスチャーを楽しめるオペラに仕上がっています。 |
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バヤデール |
今回のファン デ ピエール・エルメのラインナップの中で、最もフルーツの酸味や爽やかな風味を感じさせるのがバヤデール。ライムで風味付けしたホワイトチョコレートムース、ルバーブのコンポート、苺のコンポートなどを組み合わせ、甘酸っぱくフルーティーな味わいに。ライムを使用することで洗練された爽やかな香りを楽しめます。 |
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プレジール シュクレ |
プレジール シュクレは、お菓子について詳しくない人やエルメ氏を全く知らない人でも素直に美味しい!と感じる普遍的な魅力を持っています。ミルクチョコレートとヘーゼルナッツを使用したガナッシュやダックワーズなどを重ねて、ひと口食べるとザクッ、カリカリ、ぱりっと様々な食感が口の中で広がります。ミルクチョコレートのコクとヘーゼルナッツの香ばしさの余韻が長く続き、幸せな気持ちに浸れるお菓子です。 |
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キャレ ブラン |
潔いほど白尽くしのキャレ ブラン。外見からは何のお菓子か想像しにくいですが、中には冬らしい美味しさに彩られた味覚が詰められています。 メープルシロップ風味のマスカルポーネクリームと合わせたのは、クランベリー・洋梨・ドライフルーツのコンポート。それにナッツ入りのビスキュイとフルールドセル入りのホワイトチョコレートを合わせています。 キャレブランは直訳すると白い四角、という意味ですが、実は昔のフランスでは、子供に見せられない大人向けの番組の事を意味する印として使われていました。 その秘められたようなイメージがこのお菓子に込められているのでしょうか。ネーミングからして興味深いお菓子です。 |
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ファン ド ピエール・エルメ 開催期間 10月23日(水)〜12月3日(火) https://www.pierreherme.co.jp/ |
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