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取材・文 佐々木 千恵美 |
昨年関東エリアから2週間の開催でスタートしたスイーツの祭典「フランス パティスリーウィーク 」が、今年は全国にエリアを広げ、期間も7月1日(金)から7月31日(日)までの一か月間に延長され開催されることになりました。
今年の共通テーマはフランス菓子の古典「ミルフィーユ」にちなんだオリジナルスイーツ。全国のパティスリー、ホテル、レストランなど昨年の3倍以上の163店が参加し、そのお店ならではの自慢のミルフィーユを展開します。このイベントでしか食べられない品も多数登場するので、この機会にぜひ食べ比べを楽しんでみてはいかがでしょうか。 |
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*公式サイト:https://francepatisserieweek.com/ |
そもそもミルフィーユとはどんなお菓子でしょうか? 千枚の葉っぱと直訳されるように、小麦粉の生地とバターを重ね折りし薄く延ばして焼くときにバターの層が融けて膨らみ、ごく薄い生地が何層にも重なってパリパリ、サクサク、ハラリとした食感のパイ生地ができるところからできたお菓子です。 現代では、オーソドックスなスタイルはクレーム・パティシエールと呼ばれるカスタードクリームを挟んだもので、表面に砂糖と水で作られるフォンダンのアイシングがけで見た目と味にアクセントを添えたものとなっています。 通常はフォークとナイフで食べるのですが、ナイフを入れるときは横に倒すか上から斜めに入れるか、層がバラバラになりやすく、切りにくいために、最もきれいに食べにくいお菓子として食べ方が話題になることも多いですよね。 しかしパイ生地がこの心地よい風味と食感でなければ、とてもつまらないお菓子になってしまうでしょう。 そんな王様的フランス菓子「ミルフィーユ」を、全国からエントリーしたパティスリーはどんな形で表現しているのでしょうか? 伝統的なスタイルのものから、SNS映えするスタイリッシュなもの、最近お菓子でも増えてきたヴィーガン、野菜系、イートイン限定のデセールスタイルなどなど、パティシエたちのそれぞれの想いが詰まった十人十色のミルフィーユが揃っているようです。ぜひ公式Instagramでチェックしてみてください。 *公式 Instagram:https://www.instagram.com/france_patisserie_week/ |
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Addict au Sucre 石井シェフの「ミルフイユ オルディネール」は伝統的なスタイル。 |
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maison coelacanthe (メゾン・シーラカンス) 池田シェフの「ミルフィーユ シーラカンス」は柑橘系ジェラート、シトロンクレーム、ラングドシャ、パイを重ねた新感覚のスタイル。 |
イベントに先駆けて先日、千代田区岩本町にあるKai House(カイハウス)にて開催されたフランス パティスリーウィークのメディア発表会に伺いました。
今年のデモンストレーターは、「パティシエ・シマ」シェフ 島田 徹(シマダトオル)氏と、「ル・ショコラ・アラン・デュカス」エグゼクティブ・シェフパティシエ アジアのジュリアン・キンツラー氏。MCはアドバイザーのフランス菓子・料理研究家の大森由紀子先生による司会進行で、フィユタージュや素材についてのお話をおりこみながらご紹介いただきました。 |
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メディア発表会にて記念撮影。左からキンツラー氏、大森先生、島田氏。 |
島田シェフの「ミルフィーユ デ・テ(夏のミルフィーユ)」は、パリで印象に残っているレモンのお菓子、タルト・シトロンにヒントを得て夏らしい爽やかな酸味のタッチを加えたクリームとノワゼットプラリネを、バターで小麦粉生地を包む逆さ折り込みのパイ生地(フィユタージュアンベルセ)と組み立てたもの。
ちなみに通常のバターを包むやり方(フィユタージュオーディネル)が一枚一枚パリッとはがれていくのに対し、フィユタージュアンベルセはハラハラと繊細に崩れていく食感です。お店によるパイ生地の違いをこんな食感から推測してみるのも面白いですよ。 そしてレモンとノワゼットのマリアージュは、パリ修業時代にエルメ氏はじめ有名シェフ達が採用してトレンドにもなっていた組み合わせ。爽やかなレモンの風味にコクのあるナッツの口当たりがフランスらしいバランス感です。 |
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使用したレモンは広島県、大長産の旬の1月〜3月に果汁とゼスト(皮)を取り出して冷凍保存しておいたもの。砂糖にレモンゼストを混ぜ移すと、離れた席まで爽やかな香りが届きました。 |
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「ミルフィーユ デ・テ」。パイ生地を立ててクリームを挟んでいるので上からの見た目もきれいで食べやすそう。構成はフィユタージュアンベルセ、クレームシトロン、プラリネノワゼット、シャンティーマスカルポーネ、トップにマンゴー、バニラのマスカルポーネクリームを絞り、レモンゼストと金箔で華やかに仕上げています。 |
キンツラーシェフが作ってくれたのは「ミルフィーユ ショコラ・ユズ」。カカオプードルを加えたフィユタージュアンベルセに、パリのバスティーユにある本店のビーン・トゥー・バーから100%カカオと75%カカオをブレンドして加えたショコラのクレーム・パティシエールと、柚子のコンフィ、ショコラのプラックをいずれも薄く多層にして仕上げたショコラを堪能できるミルフィーユとなりました。
特徴的だったのはフィユタージュの作り。見た目に個性が出しにくいと思われるミルフィーユを、ストライプ層が上から見えるように、断面側を薄くスライスして焼いていること。ショコラの色の濃淡も美しく、層に沿って割れるので食べやすくもなります。 柑橘に日本の柚子を組み合わせ、香り豊かなマルティニック島のホワイトラムにバニラを漬け込みフランベするなど、大人の余韻が楽しめるのも心憎い演出です。 |
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いろいろな食感を感じてほしいから、それぞれの層を薄くして重ねているそうです。 |
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「ミルフィーユ ショコラ・ユズ」。上からコポーショコラ、シトロンコンフィ、フィユタージュショコラ、柚子のコンフィ、クレームショコラ、ショコラのプラック、柚子のコンフィ、クレームショコラ、ショコラのプラック、クレームショコラ、フィユタージュショコラ。 夏でもショコラのフランス菓子をおいしく楽しんでもらいたいと考案された、軽やかな食感とショコラの醍醐味をどうぞ。 |
今年は全国展開とあって「フランス菓子・料理教室 EikoMorita」、鎌倉「Régalez-Vous」、仙台「カズノリ イケダ」、名古屋「シェ・シバタ」、などが初参加します。同じテーマのスイーツがどんな形で展開するのか、スイーツファンにとっては大変貴重な機会。暑くて湿気の多い日本の夏にいかに工夫を凝らしておいしくミルフィーユを食べさせてくれるのか、そんな点にも着目して食べ歩きを楽しんでみたいですね |
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お二人のミルフィーユ。上から見るとまた雰囲気が違います。 |
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