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取材・文 佐々木 千恵美 |
6月30日(金)からスタートしたスイーツの祭典「ダイナースクラブ フランス パティスリーウィーク 2023」、もう楽しんでいらっしゃいますか?
3回目となる今年は7月30日(日)まで約1か月間、規模を全国にまで広げ、パティスリー、ホテル、レストランなど225店舗が参加し、テーマに基づいたフランス菓子で個性を発揮しています。 今回のテーマはフランスの伝統菓子「エクレア」。 細長いシュー生地に、カスタードやホイップなどのクリームを入れ、チョコレートやフォンダンアイシングをかけたエクレアは、19世紀フランスで 「シェフの王」と呼ばれたアントナン・カレームがその原型を作り、その後今の形になったと言われています。 |
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参加店のエクレアの一部をご紹介します。 |
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エクラデジュール 「エクレールミルティーユ」 |
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CINARIS 「奥久慈茶と常陸大黒と日本酒」 |
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ル・ショコラ・アラン・デュカス 六本木 「エクレール・ショコラ レ・パッション」 |
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POIRE 「éclair エクレール」 |
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パレスホテル東京 ラウンジバー プリヴェ 「エッサンス」 |
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Patisserie Ker 「Odyssée Exotique」 |
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デザートカフェ長楽館 「桃のエクレア」 |
エクレアの名前の由来は、稲妻が落ちるのと同じぐらい一瞬で食べられてしまうことから「稲妻」、フランス語で「エクレア」とつけられたそうです。フランスの菓子店ではもっとも基本的な菓子とされ、日本のシュークリームやショートケーキの位置づけに近いものですが、近年はシェフの個性を反映するスイーツのひとつとなっています。
そうそう、私の子供の頃、昭和の日本でもエクレアといえばチョコレートかモカ(コーヒー)味のものでした。 *参考までに2012年パナデリアの伝統菓子のページ エクレア https://www.panaderia.co.jp/trad/eclair/index.html |
宮廷を舞台に華やかなお菓子が作られていた時代に、細長いシューのエクレアは片手で持って食べられるなんて、さぞや衝撃的なお菓子だったのではないかと想像してしまいます。 2021年1回目のテーマだった「パリ・トーキョー」のモデル、パリ・ブレストは同じシュー菓子でもリッチなプラリネクリームを使ったリング状の記念日菓子というイメージですが、エクレアは、どちらかというと日常のお楽しみ的なスイーツという位置づけがずっと変わらないのかもしれません。 それでは、ダイナースクラブ フランス パティスリーウィーク 2023に参加のシェフたちによる作品を少し見てみましょう。5月30日にドーバー洋酒貿易株式会社を会場にプレス発表会でご披露いただいた「パーク ハイアット 東京」エグゼクティブ ペストリーシェフ ジュリアン ペリネ氏と「Ryoura (リョウラ)」シェフ 菅又亮輔 (すがまた・りょうすけ)氏によるオリジナル「エクレア」のスピーチとデモンストレーションをご紹介します。 ジュリアン氏の「エキゾティックフルーツとトンカ豆のエクレア」は、トップにフレッシュフルーツとマスカルポーネとホワイトチョコレート入りのクリームをたっぷり絞り仕上げるためか、シュー生地をあえて膨らませないよう冷たい牛乳を添加したり、細い口金で絞ったり、表面にカカオバターを塗って焼くなど、サクッと焼き上げるための工夫がそこかしこに見られました。さらにフランス人らしい香り使いで、紫蘇の花やトンカ豆、バニラを組み合わせてエキゾチックなエッセンスを盛り込んでいます。お刺身に添えられた紫蘇の花からヒントを得たというジュリアン氏。日本人としてもっと和ハーブの魅力に着目しなければと刺激を受けました。 |
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「エキゾティックフルーツとトンカ豆のエクレア」 980円 (税込) パーク ハイアット 東京で提供 ![]() シューにマンゴー、パッションフルーツとバナナのクリームを詰め、トップになめらかなマスカルポーネクリームと宮崎マンゴー、沖縄パイナップル、パッションのジュと種も合わせてトッピング。紫蘇の花とトンカ豆のパウダーで、夏の香りのアクセントに。 |
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サントノーレ口金でボート状にクリームを絞り土手を作るジュリアン氏 |
菅又氏の「エクレール・ラム レザン」は、自家製のラムレーズンを主役に、レーズンサンドを意識したスタイルとなりました。シュー生地にはタイベリーのピンク色をしたクッキー生地をのせて焼き、クレーム・パティシェールを絞りタイベリーのジャムを乗せ、ラムレーズンをトッピング。その上に冷凍したラムレーズン入りムース・ショコラブランを1p厚の長方形にカットしたもの、生クリーム、アーモンドのコンフィ(カリカリ)をトッピングし、シュー蓋を添えるようにサンドしたもの。 21世紀に入ってエクレアも進化し、表面がフォンダンからクッキー生地、チョコレートプレートなど素材も色もフレーバーもそのお店、各シェフの創意工夫により多種多様に変化してきましたが、菅又氏によればクッキー生地のせはもう ‘昔流行った’ 部類なのだとか。その懐かしさをラムレーズンサンドのレトロさとクロスさせ、見た目は鮮やかな今風に完成させた、日本人ならではの感性から生まれた一品。たくさんの要素が詰まっているのに主役のラムの香りが最後に残るのはさすがです。 |
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「エクレール・ラム レザン」 620円 (税込) Ryoura (リョウラ)で提供 |
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ネグリタラムで漬け込んだサルタナレーズンをたっぷり使用したレーズンサンドのベースとなるムース・ショコラブランをのせていく菅又氏。 |
*プレス発表会デモンストレーションの様子はこちらから視聴もできます。 https://www.instagram.com/p/CsqDO37q5ox/ |
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5月下旬に行われたプレス発表会にて記念撮影。左から 菅又亮輔氏、進行役を務めたフランス菓子研究家・料理家の大森由紀子氏、ジュリアン・ペリネ氏。 |
フランス人と日本人、それぞれのひねりが興味深く、シンプルなエクレアがこれほど深掘りできるとは思いもよりませんでした。それはきっとすべての参加店にいえることでしょう。すっかり片手で持っただけでは食べるのが難しいお菓子になりましたが(笑)、昔ながらのエクレアで驚かせてくれるシェフもいるはずです。
夏の1か月間、そんなことも頭の片隅に置きながら、十人十色のエクレアめぐりをされてはいかがですか? 参加店やメニューについてなど、詳しくは公式サイト (https://www.francepatisserieweek.com)をご覧ください。SNS投稿による「フォトキャンペーン」も同時開催中です。 |
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