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取材・文 佐々木 千恵美 |
ユニークな食のイベントが始まりました。 神戸牛やトリュフなどを使った高級ハンバーガーが原価990円で食べられる。 しかも監修は人気レストラン「sio」の鳥羽周作シェフ。 製菓・カフェ・調理の専門校「レコールバンタン」、中目黒駅近くの東京校レーヴ校舎が会場。 2022年1月22日(土)〜2022年3月27日(日)の毎週土日のみの営業で、調理やサービス、運営を担うのは同校の生徒たち11人。 お店の名前は「GENKAI BURGER」(ゲンカイバーガー)。 |
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「GENKAI BURGER」で提供される「神戸牛 “GENKAI” チーズバーガー」、北海道産「フライドポテト」、「クラフトコーラ」 |
オープン前の試食発表会でいただいてみると、想像以上にボリューミーで豪華な内容に驚かされます。バンズに高く盛られた具材のトップを飾る黒トリュフが、運ばれてきた瞬間にかぐわしい香りを放ちます。
とろけるチーズのかかった神戸牛のパティは、ナイフを入れるとごろり大きなチャンクになり、口に頬張ればうまみののった肉汁が広がります。ああ、なんて口福な! ハンバーガーってこんなにご馳走になるものなんですね。 |
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ハンバーガーの断面 |
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ランチョンマットには、GENKAI BURGERの使用食材と5味プラス1、原価が記載されている |
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これが原価990円なら、一般のお店で食べるとしたらいくらくらい? そんな価格設定に関する意見と感じたことをフィードバックするシートがハンバーガーと一緒に添えられてくる。原価でいただいたせめてものお礼? |
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鳥羽シェフの笑顔挨拶入りフィードバックシート。今回は教育の一環として開催するので、「未来のシェフへ、皆様からのメッセージをお願いします!」 |
実はこれこそがイベントの狙い。そもそも普段利用する飲食店のメニュー原価を、気にして食べたことはありますか? すべてとはいいませんが大概は30%ほど。それ以上の原価率だと、家賃や光熱費などの固定費、人件費をまかなえません。自分でお店をやることを踏まえたメニュー作りや価格設定、宣伝の仕方、実践などは、一般に学校では教えてくれません。学校で調理技術だけを学んで卒業しても、お店の経営のことを考えるとなるとなかなか難しいのが現実。まして今はコロナ禍で、生徒たちがアルバイトで実践経験を積む機会もほとんど奪われ、卒業後の道は決して明るくはありません。 |
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駒沢通り沿いに建つレコールバンタン東京校レーヴ校舎内の店内 |
未来の飲食業界を担う生徒たちに何とか機会の場を作りたい。 この問題に、「おいしいだけがゴールじゃない。」をコンセプトとする同校が、元小学校の先生で現在は複数のレストランを運営し、メディアでも活躍する鳥羽周作シェフの協力を得て立ち上がりました。 |
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GENKAI BURGER試食会でトークする鳥羽周作シェフ |
「GENKAI BURGER」の運営メンバーは同校の生徒11人。鳥羽シェフの提唱する5味プラス1という味の構成(※「甘味、塩味、酸味、苦味、旨味」5味に辛味、食感、香りが加わることで立体的で奥行きがある料理」のこと。)のレクチャーを受けた後、メンバーはハンバーガーを題材に味の構成を設計し素材を選んでいったそうです。 |
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「GENKAI BURGER」の運営メンバー11人 |
もちろん原価も考慮しなければなりません。 鳥羽シェフ曰く「原価990円は生徒がわかって作らないといけないが、食べ手側も適正価格を知ってもらう価値もある。ちなみに「Hotel's」というレストランで3000円のハンバーガーを出しているが、原価はこれくらい。安くてうまいのを食べたいよねと、原価990円のところを1500円で売ったら儲からなくて、おいしいバーガーを出したいけれど運営はできなくなってしまう。 これからの食の世界は、作る側働く側、雇用会社側、食べる側の3者のリテラシーが高くなって、そのうえで飲食業界をどうやって応援していくかわかってもらわないと、お客さん都合だけでやっていくと持続できないというのを知ってもらういい機会。」 |
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実施背景と意気込みを語る鳥羽シェフとメンバーの2人 |
私たち食べ手も、これからの飲食業界を担う若手を応援する意味でも、食べ物の原価や素材のこと、働き手についての理解を深める機会となるイベントなんですね |
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調理だけでなくお客様に提供するのもメンバーたち |
「おいしい料理を作るところからそれを届けるところまで教える、責任をもってサポートしていく。シェフにならないとできない経験を、学校に通いながらできるのはものすごい価値。コロナ禍で、未来の食の価値を担う若者に、我々が何を残していけるのか、何を作っていけるのか。教育の一環としての実店舗運営は価値があることだと、ちゃんと伝わるといいなと思う。」
鳥羽シェフの言葉に胸が熱くなりました。 発表会ではメンバーの生徒からこんなコメントがありました。 「私たちは将来自分の店を持って、作ったものを食べてもらう夢を持っているので、レコールバンタンに在籍しながら貴重な機会をいただけたので、できるだけたくさんの人に食べてもらってたくさんの人を笑顔にしたい。」 ハンバーグを包む紙にはプロジェクトにかかわった生徒の将来の夢が入っています。行かれたら見てみてください。 |
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メンバーの夢が描かれたハンバーグを包む紙 |
ハンバーガーの他、ドリンクもすべて原価での提供です。 バーガー、ポテトと合うようにすっきり飲めるように味を作りこんでいるというクラフトコーラは、鳥羽シェフのお店のレシピをそのまま再現。 鍋に唐辛子、しょうがを入れ仕込むのですが、コーラやジンジャエールの作り方は意外と知られていないため、プロのレシピを作れるまたとない経験になったといいます。確かに、一般に流通しているコーラとは別物。スパイスティーソーダのような感覚で、普段甘い飲み物が苦手な方でもさっぱりおいしくいただけそうです。 |
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店舗の入り口。コロナ対策のため、イートインのみでなく、テイクアウトにも対応することになった |
その他、詳しい内容はwebサイトをご覧いただきたいのですが、そのページ制作はバンタンの卒業生に依頼したもの。おいしいものを届けるためには、SNSでの発信力も求められますからね。 *HP:https://www.lecole.jp/genkai/burger |
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GENKAI BURGER試食会にて記念撮影 |
未来のシェフを応援する仕組みとなるGENKAIシリーズは、今後、“GENKAIコーヒー” “GENKAI ケーキ”のような展開も考えられているとのこと。おいしいを楽しむとともに、未来のシェフの応援をしていきたいですね。 GENKAI BURGERセットやレシピ、GENKAI BURGER Tシャツなどの返礼品が選べるクラウドファンディングも続行中なので、ぜひ若いシェフの力で、コロナ禍の飲食業界を盛り上げていってほしいと思います。 |
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