取材・文 佐々木 千恵美  


東京を中心に現在流通しているさくらんぼの品種を、どれくらい知っているだろうか?
一番有名な佐藤錦、紅秀峰、紅玉、紅さやか、それに輸入もののアメリカンチェリーとレーニア…。産地は山形、山梨、北海道くらいしか思い浮かばない。

そんな中、「ジュノハート」という青森県生まれの新品種を使ったデザートを、都内で体験できるメディア向けイベントにお招きいただいたので、その魅力を紹介したいと思います。

枝に実ったジュノハート。ハート型がかわいい。


ジュノハートのロゴマーク。


今年のさくらんぼシーズンも終わりに近づく7月初旬、六本木にあるMercedes me Tokyo UPSTAIRSにて開催された体験会では、はじめに青森県の担当者から「ジュノハート」の誕生ストーリーや魅力ある特徴が語られました。


青森県担当者のプレゼンテーション
24年の歳月をかけて開発した青森県独自のさくらんぼ「ジュノハート」は、大きくかわいらしいハート型で、鮮やかなルビー色で艶が良く、甘みが強く、果肉はかためで適度な果汁があり、種がはがれやすく食べやすい。令和2年に全国デビューし今年で5年目の新品種。


甘みの強い「紅秀峰」に、果実が大きい「サミット」を交配した「ジュノハート」は、横から見るとハート型で、大きさは直径28o以上31o未満。佐藤錦よりひとまわり大きく、さらに31o以上の「秀」「特秀」品質検査をクリアしたジュノハートには「青森ハートビート」というブランド名が与えられ、大切な人への贈り物にぴったりの気品あふれるさくらんぼになるそうです。まるでジュエリーのようですね


ジュノハート(右)と佐藤錦(左)の比較。


青森ハートビート ロゴマーク。


「ジュノハート」という名前には、こんな思いがこめられています。
平成17年5月に「ジュノハート」の原木があるりんご研究所県南果樹部の近くで、大規模な山火事が発生し、火の手は原木の3本手前まで迫って大ピンチに。しかし町内外の住民の皆さんが消火活動に駆けつけてくれたことで奇跡的に被害を免れ、焼け残った木から苗木を増やして誕生したのが「ジュノハート」。この幸運な出来事から、みんなの幸せを願い、ローマ神話の家庭の幸福を司る女神「Juno」と、果実がハートの形から「ジュノハート」と名付けられたのです。
かつては主要農産物のりんごを守る防風林の役割として植えられたさくらんぼが、次第に果実を収穫するために栽培されるようになり、大粒新品種の開発に長年取り組んできた青森の、愛あふれるストーリーも「ジュノハート」の魅力を高めているようです。縁結びやブライダルシーンにもしっくり!


山火事被害を免れた原木。


そしてお待ちかねのデザートデモンストレーションと試食です。

「ジュノハート」を使った創作メニューを考案、披露してくれたのはフレンチの巨匠・ドミニク・コルビ氏。ジュノハートのおいしさに驚いたというコルビ氏の作ったデザートは3種類。料理人だけに、食後に楽しむような、その場で仕上げるあたたかいものやグラス入りなど、出来立てを味わえるスタイルです。


ドミニク・コルビ氏
1965年パリ生まれ。15歳で料理の道に入り、パリの「ラ・トゥール・ダルジャン」副料理長を経て日本へ。1994年 ホテルニューオータニ東京内「ラ・トゥール・ダルジャン」総料理長を務めた後、各地で料理長やガストロノミー・プロデューサー、校長を歴任し、2023年南青山に「Dominique Corby」オープン。大好きな日本の伝統と食文化を培ってきたフレンチで表現している。
 https://dominique-corby.com/


今回は2種類の仕上げを、目の前でデモンストレーションしてくれました。ひとつのお皿に3種を盛り付けるのですが、真ん中にはフロマージュブラン、ブルーベリーソース、シロップ漬けジュノハート、エディブルフラワーで仕上げたグラスデザートが準備されており、その隣に薄い長方形の抹茶サブレを土台としたフィンガースイーツを仕上げていきます。


抹茶サブレの上にサフラン風味のカスタードクリームを絞り、シロップ漬けにしたジュノハートを置き、エディブルフラワーを飾ってエレガントに。


2品をのせたお皿を持って。


次は厨房に移動してジュノハートのジュビリー作り。種を抜いたジュノハートとお砂糖をフライパンで熱し、リキュール(今回はコアントロー)をかけてフランベするクラシックなデザートですが、コルビ氏はモロッコのラスエルハヌートというミックススパイスとサフランを香りづけにプラス。果たしてどんな味わいになるのでしょうか。


コアントローを注ぐとたちまち炎があがり、周囲はいい香りに。


試食会で提供された盛り付け。左からジュノハートのジュビリー、ジュノハートのフロマージュブラン、抹茶サブレとサフランクリームにのせたジュノハート


ジュノハートのジュビリーは、ジュノハートのここちよい食感とコアントローの風味、最後にふっと抜けるスパイスの香りがエキゾチックな大人味。フロマージュブランは甘酸っぱいフルーツとの相性の良さも間違いなしの優しいおいしさ。抹茶サブレのものはタルトのようなサクサクの食感とジュノハートのしゃくっとした食感のハーモニーが楽しめました。

また今回はマリアージュというテーマもあり、ドリンクにロゼシャンパーニュとミード酒を合わせていただきました。


デザートと一緒に楽しんだロゼシャンパーニュ(右)とミード酒(左)


ロゼシャンパーニュのシナモンのようなスパイシーさとほんのりとした渋みが、スパイスを使ったジュノハートのジュビリーとつながったのが新しい発見でした。

ジュノハート、今年のシーズンは終わってしまいましたが、今回のおいしさと魅力はしっかり覚えたので、来年の6月下旬に出会えるのを楽しみに待ちたいと思います。みなさん、要チェックですよ。



ジュノハート
 公式WEBサイト:https://www.umai-aomori.jp/junoheart/


特徴
◎ 国産品種のなかでも最大級の大きさ
◎ 糖度は約20度、酸度は約0.5度程度で、甘みが強く、酸味は少ない
◎ 24年の歳月をかけて誕生した青森県独自の新品種
◎ 旬は6月下旬ごろから3週間ほど






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