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取材・文 下園 昌江 |
2019年秋に、東京産のカカオで作られたチョコレート「トーキョーカカオ」のプレス発表会が開催されました。 東京でカカオを育て、発酵焙煎を自社で行いチョコレートを作ることに成功したのは、埼玉県草加の平塚製菓株式会社。(以下平塚製菓) 平塚製菓の創業は1901年、京都で和菓子やとしてスタートし、その後東京に移り戦後まもなくチョコレートの製造をスタート。2000年からはOEM(他社ブランドの製品を製造すること)に路線を変え、チョコレートをはじめクッキーやウエハースなどの菓子製造を行っています。 OEMを専門でやっていた会社がなぜ東京産のチョコレートを作ることになったのか、ここに至るまでには様々なドラマがありました。今回はそのエピソードとあわせてチョコレートを紹介していきたいと思います。 |
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平塚製菓代表 平塚正幸氏 |
発表会には、この東京カカオプロジェクトの発案者で責任者でもある、平塚製菓代表の平塚正幸氏が、トーキョーカカオが誕生するまでの道のりを話してくれました。 長年チョコレートの仕事に携わっていた平塚氏が最初にカカオに出会ったのは2003年。 ガーナのカカオ農園を訪れた際でした。最初は「自宅の庭にこのカカオの木を植えてみたいな」、と軽い気持ちだったそうですが、日本でカカオを育てるには?と色々と調べているうちに、この日本でカカオの実を自分で育ててみたい。そのカカオで作ったチョコレートを味わってみたい!と強く思うようになり、遂に2006年に東京カカオプロジェクトが発足されました。 国内のいくつかの候補地の中から選ばれたのは東京の小笠原諸島の母島。 平均気温が高くカカオが育つのではないか?という見込みと、もし小笠原でカカオ栽培が成功したら「Made in Tokyo」チョコレートとして世界へ発信できるのではないか、という考えからでした。 しかし、これまで日本では前例のない取り組みは難航し、まずはカカオの苗木を輸入するまでの手続きに難航し、やっと手に入れて最初に植えた1665鉢分のカカオの木は167本が発芽したものの全て枯れてしまったそうです。 |
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水はけのよい土壌に整えた |
そこで、栽培計画を改めて見直すために、新たにタッグを組んだ小笠原の農家折田さんとインドネシアのカカオ農園を視察しました。折田さんは母島で初めてマンゴー栽培に成功した方で、小笠原の気候に精通している農家さんです。 視察で感じたのはカカオ栽培には土壌の水はけの良さが重要。本土から重機を運び、開墾し土壌の環境を整えました。 |
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土壌を改良し栽培に成功したカカオの木 |
また小笠原の土地柄で海風や台風の影響を受けやすく、これがカカオ栽培には厳しい環境だということで、ハウス栽培にきりかえて再度スタートを切りました。 |
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カカオの実の断面。カカオ豆の周りに白い果肉がたっぷりと |
そして2013年、遂に初めてのカカオ豆が収穫されました。 ここから、発酵、乾燥という工程を経るのですが、通常日本に送られてくるカカオ豆はすでに乾燥までされているものが一般的です。 |
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左)発酵前のカカオ豆 右)発酵後のカカオ豆 |
そのため国内での事例がなく、どのような条件で発酵、乾燥すれば美味しくなるのか何度も何度も試し、納得できる味にたどり着くまで約2年間も試行錯誤を続けたそうです。 |
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東京発をイメージし、江戸切子のようなデザインのタブレット |
そして2019年、東京産のチョコレート「トーキョーカカオ」が誕生しました! 一般的に、産地によってカカオの特徴的な香りや味わいがあるとは言われますが、東京小笠原で育ったカカオってどんな味だろう!?と興味津々。 ひと口食べてみると、カカオのまろやかな風味とフルーティーな香りの後に柑橘系の酸味ある味わいが広がります。口当たりは非常に繊細でなめらか。 「カカオって、フルーツだったんだ!」と再認識できる個性的な味わいです。 |
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2枚入りの缶入りパッケージで販売 |
カカオポッドがデザインされた缶には2枚のタブレットが入っています。 すっきりした雰囲気でバレンタインの贈り物にも喜ばれそうですね。 何より、東京育ちのカカオがどんな味のチョコレートへと仕上がったのか? 考えるだけでもわくわくする、夢とロマンがぎゅっと詰まったチョコレートです。 東京生まれ東京育ちのチョコレート、是非味わってみませんか? |
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