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Text by Chieko Asazuma |
今年でもう7回目。スイーツとファッションがコラボした大イベント、「東京スイーツコレクション」が11月15日に開催されました。 会場となったのは、品川プリンスホテル クラブeX。センターにステージがあり、それを囲むように、300人もの観客がテーブルに着席します。 参加したパティシエが語ったり、ライブでお菓子を作ったりも。そしてもちろん、お菓子をテーマにしたファッションショーも繰り広げられます。 お菓子を振る舞ったパティシエは誰? どんなケーキが出たの? そしてファッションショーは? さっそく、その様子をご紹介したいと思います。今年は、パティシエやファッションデザイナーのほかにも登場したクリエイターがたくさんいて、イベントを盛り上げたんです。 テーマは「1/365〜誕生〜」。365日のたった一日、地球に生まれたすべての人・生命を祝福する特別な一日。そして、実力派トップパティシエが織りなす1日限りのステージ。 「1/365〜誕生〜」には、そんな思いが込められているのだそう。 ステージはChapter 1〜5まで、それぞれのテーマの元、繰り広げられます。そして、その人生に訪れる様々な「誕生」をパティシエ達がオリジナルのスイーツで表現してくれるのです。 イベントが始まり、最初に客席に配られたお皿は、ホワイトチョコレートとアプリコット、杏仁を使ったケーキでした。ステージに上がったのは、「ロートンヌ」の神田広達さん。そう、お皿の上は、神田さんが作った「祥」という名のケーキでした。「誕生」になぞらえて、人生の喜びや祝福、晴れの日を思って、幸福感や感謝、そして愛を表現したそう。 「みなさん、今日は存分に楽しんでいってください」 と、とびきりの笑顔で語ってくれました。口どけのいい品格あるムースは軽く、スタートにはピッタリ! |
「ロートンヌ」神田広達シェフ |
そのあと会場では、協賛である「トロピカーナ」のショーが行われました。陽気で軽快、フルーツでいえばパイナップルみたいな、南国の雰囲気たっぷりな舞台。観客の気持ちを明るく盛り上げてくれたのでした。
続く二人目は、「Toshi Yoroizuka」の鎧塚俊彦さん。 「もともとお菓子を食べるのが好きで始めたこの職業。当たり前のことを当たり前にやることが大切だと思っています。パティシエの仕事っていうのは、実は一つ一つはそんなに難しくないんです。でもそれを、長年当たり前にきちんとやり続けるのが大変。人の幸せを演出するいい仕事だと思っています」 そんな言葉とともに、客席に運ばれたのは、パウンドケーキのような一皿でした。でもよく見ると、入っているのはほうれん草やハム? 「“パティシエ”という言葉は、フランス料理の“パテ”という言葉から来ているんですよ。ひき肉などパイに包んで作る、あの“パテ”。今回、甘いだけでないパティシエの技術を披露しようと思いました。これぞまさにパティシエの“誕生”にあたる、原点のお菓子といえるのではないでしょうか」 こうしたケーキサレ(しょっぱいパウンドケーキ)や、キッシュなどは、トゥレトゥールと呼ばれて今でもパティシエの仕事として残っています。いくつかの店ではパティスリーの一角に並んでいることも。実は、甘いものではなく、こちらの方がパティシエの仕事のスタート=誕生だったんですね。 ほうれん草、ハム、シャンピニオンなど入った塩味のケーキには、ポテトのクリームとトウモロコシのソースが。具と生地の一体感ある“原点”ケーキは、甘いものの合間の箸休めとしても嬉しいものでした。 |
「Toshi Yoroizuka」鎧塚俊彦シェフ |
そのあと舞台は一転、フローリスト中村有孝さんと、スイーツアーティストのKUNIKAさんの世界へ。二人のコラボレーションで、何の表情もなかったトルソーが美しく飾られました。表現しているのは恋をした女性。 |
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出来上がった作品 |
こんな風に、パティシエのトークとケーキの間に、いろいろなクリエイターの技が披露されるのです。この後にも、ハンドシャドウパフォーマンスや、切り絵ステージ、シルクパフォーマーによるパワフルな演出もありました。いずれも「おお〜」と観客から声が上がる、驚きの技ばかり。スイーツとファッションを楽しむだけではなく、こんなにいろいろな舞台が見られてしまうなんて、なんだか得した気分です。
お菓子の方は、「CALVA」の田中二朗シェフへ。男女を表現したというお菓子は、飾り気もなく、一見シンプル。 「見かけはそっけないですが、中に人の感情を隠してあります。上のほうはイチゴ、フレーズドボワ、カシスなどを使って甘酸っぱく、下にはキャラメルの苦みをきかせています。少しレモンをきかせたさわやかな苦み。苦しいことがあるから楽しくも感じる。そんな思いを込めています」 とシェフ。実は、少し前に知り合いが亡くなるという悲しい出来事があり、その方が最後に食べたものがシェフのお菓子だったと後で知ったのだそう。 「お菓子は、記念日など楽しい日にばかり食べるわけではなく、人生の最後に口にすることもあるのだと気づかされました。責任感のある仕事だと思っています」 |
「CALVA」田中二朗シェフ |
ほかには、「アステリスク」の和泉光一シェフが、「結婚」をテーマにした二つの卵型のお菓子を作りました。一つはソーテルヌのジュレにルビーグレープフルーツのマリネの入った卵型のグラス。もう一つはホワイトチョコで作った殻の中にココナッツ、マンゴーソースを忍ばせたもの。 「新しい人生の誕生。二つを一緒に食べると新しい味になる。生きていくことの意味、お互いを思いやる気持ち。そんな、日々の中で忘れがちな心を気づかされる一日に送るスイーツです」 このお菓子を食べている間中、会場にレモンの香りをたちこめる演出も。 |
「アステリスク」和泉光一シェフ |
「菓子工房アントレ」の高木康裕シェフは、すべての誕生の原点でもある「種」を表現し、杏子と桃の種を使ったブラマンジェに、柚子のジュレをかけたお菓子を作りました。 「種、そしてそこから最終的にできる実を、柚子で表現しました。カシスのソースでアクセントをつけて、人生の甘酸っぱさも表現しました」 |
「菓子工房 アントレ」高木康裕シェフ |
お菓子を振る舞った5名以外にも、氷細工を披露してくれた「名古屋マリオットアソシアホテル」の松島義典さん、ゲストパティシエとして「誕生」というテーマから宇宙をイメージしたエントランスの装飾をスイーツと花で表現してくれた「キャトーズ・ジェイエ東京」の白鳥裕一さん、そして総合プロデューサーの「ププリエ」大橋健二さんなど、たくさんのパティシエの技が披露されました。会場で、焼き菓子をライブで仕上げる演出もあり、焼き立ては客席に振る舞われました。 |
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そして最後はファッションショーです。 「Hanae Mori manuscrit」のデザイナー、天津憂さんが手掛ける、スイーツをテーマにしたドレスをまとったモデルがステージを歩きます。チョコレート、ドーナツ、プチガトー、アントルメ、パイ、アイシング、マカロン。テーマに沿ったドレスが登場すると「可愛い!」 という声が、会場からもれました。 最後は、総合プロデュースの大橋健二シェフが、純白のドレスをお菓子で装飾していくという演出も。さなぎが蝶へと羽化する作品が誕生したのです。 |
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デザイナー 天津 憂氏 |
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総合プロデューサーの大橋健二シェフとデザイナーの天津憂氏がステージの上で、純白のドレスがサナギから蝶へ羽化する作品を披露 |
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イベントは大盛況で幕を閉じました。 5種類ものケーキと焼きたてのお菓子、そしてお土産には各パティシエの焼き菓子までつき、こんなにいろいろなステージが見られるなんて! 充実した内容にお客様はみんな満足の様子で会場を後にしたのでした。8回目も今から楽しみ。そんな声が聞こえてきそうでした。 |
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最後の記念撮影。大きな役目を終えて、ほっとした表情のシェフたち。お疲れさまでした |
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