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取材・文 佐々木 千恵美 |
世界一のチョコレート職人を決めるコンクール「ワールド チョコレート マスターズ」。2018年に行われる第7回のテーマと概要のプレス発表会が、9月23日、東京・品川にあるバリーカレボージャパン株式会社・チョコレートアカデミーセンターにて開催されました。 |
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会場となったバリーカレボージャパン株式会社・チョコレートアカデミーセンターは、大崎駅前にそびえるビルの21階にある。 |
2005年に始まった「ワールド チョコレート マスターズ」は、和泉光一シェフ、水野直己シェフ、平井茂雄シェフなど今をときめくショコラティエが挑戦し、優勝、入賞したことで知られます。
その後も日本からの代表は毎回高得点を叩き出しファイナルへ。日本人のチョコレート総合力を世界に知らしめ続けている‘個人’の大会です。 テーマ発表の前に、司会の原紅希子グルメブランドマネージャーから大会の概要が説明されました。 今まで2年に一度開催されていた「ワールド チョコレート マスターズ」ですが、今大会から3年に一度に変更され、第7回は2017年10月に日本国内予選大会開催、2018年10月にワールドファイナル開催となります。 |
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司会進行はバリーカレボージャパン株式会社の原紅希子グルメブランドマネージャー。 |
また、課題は2015年大会ではそれまでの大会から若干変更があり、次のような内容でした。 |
(1) | チョコレートのピエスモンテ |
(2) | 型抜きボンボンショコラのみ(以前は手がけと型抜き両方) |
(3) | パティスリー・オブ・ザ・デイ(アントルメショコラから変更され、できるだけ冷凍を避けフレッシュ感を活かして作成) |
(4) | チョコレートスナック・オン・ザ・ゴー(アシェットデセールがなくなり、持ち歩きできるものを作成) |
(5) | マイ・オールノワール・ストーリー(カカオバリーのラボでシェフの完全オリジナルクーヴェルチュールを作り、シンプルなタブレットとトリュフを作成) |
(6) | 小型ピエスモンテ(同じ土台が与えられ、そこに創作を施す。2015年は‘鳥かご’だった) |
世界各国・地域の国内予選を通過した約20名の代表が、世界大会にて決戦。審査員団は各代表国から一人ずつの20名+審査員長から形成されます。
香りを大事にフレッシュなところを食べる、立ったまま気軽に食べるなど、世界の時流にのったもの作りを課題に入れたのはとても興味深いところ。メディアへのインパクトも大きいですよね。また、シンプルなもの作りで競うDが新設されたことにも注目です。Bean to barの影響が少し垣間見られるのか、ショコラティエにとって一番ベースとなるカカオフレーバーのオリジナリティが問われる時代になりました。 ゲストとして来場した過去の日本代表シェフたちからは、大会についてこんなコメントをいただきました。 |
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山本健シェフ 1978年生まれ。ケーキハウス・ダルセイニョ、グレゴリー・コレ、名古屋マリオットアソシアホテルを経て現在オキナワマリオットリゾート&スパにてシェフパティシエを務める。 |
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平井茂雄シェフ 1978年生まれ。神戸のコム・シノワ、フランスのパティスリーで修業の後、グランドハイアット東京でペストリー副料理長を務める。2012年神戸に自身の店ラヴニューをオープン。 |
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小野林範シェフ 大学卒業後、クラブハリエに入社。現在、八日市玻璃絵館八日市工房のセクターシェフとして勤務。 |
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和泉光一シェフ 1970年生まれ。東京・調布のサロン・ド・テ・スリジェのシェフパティシエを長年務めた後、2012年代々木上原に自身の店アステリスクをオープン。 |
そしていよいよ2018年テーマの発表です。 ステージ背後の白幕が取り外され、小野林範シェフがテーマを読み上げました。 「第7回大会のテーマはフュートロポリス(FUTROPOLIS)です。明日のチョコレートフレーバーへの探求。2025年までに世界の人口の半数がメガシティに暮らすようになると言われています。メガシティとは、1千万人以上の人が暮らす都市であり、全ての色や文化、種族が集う中心に緑があります。その都市は、様々な規律とデザイン・美食・食の生産者たちといった創造の泉源が融合します。このような未来の都市からシェフたちはどのようにインスピレーションを受けるでしょう? これが今大会のワールドチョコレートマスターズでの探求です。これまで以上に、カカオとチョコレートの未来について強く意識した大会です。明日のフレーバーがフュートロポリス(FUTROPOLIS)に通じているのです。」 |
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カカオポッドが割れテーマが発表された〜フュートロポリス(FUTROPOLIS)のデザインロゴ。 |
フューチャー(未来)+メトロポリス(大都市)を合わせフュートロポリス(FUTROPOLIS)という造語をテーマにした今大会。
大会側のプレゼンテーションによれば、フュートロポリス(FUTROPOLIS)のインスピレーションはFuture +Metropolis+ Flavorで、解釈の例としてグリーン・シティ、ヴァーティカル・ファーミング、ハッピー・プラント、3Dの食品たち、自然とテクノロジーが食の浪費を減らす、食べられる食品パッケージ、自分のはちみつを採取、モバイルフード、フード+アート+デザイン+科学をあげています。 人口密集による人と自然のエコな生活、テクノロジーの進化を取り入れた美食とエコな合理化、分野を超えた体験など、いくつかのキーワードが頭に浮かびました。私たちにとっても実際考えさせられる社会的なテーマははじめてではないでしょうか。 |
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さて、このテーマをどう解釈するのか、再び集まったシェフたちに聞いてみました。
*山本健シェフ: | |
テーマのイラストを見ると都会の中にある田舎っぽいものと区画整理された建物の美しさが表れている。都会の人が自然はいいなと思うように、チョコレートならではの進んだものを考えるのはどうか…。 | |
*平井茂雄シェフ: | |
テーマにとらわれず、自分が作りたいもので人にも共感してもらえるような…。食べるほうの課題は素直に美味しいと感じるものを作ること。芸術面も大事だが誰が食べてもおいしいと思える驚きのあるチョコレートであればいい。 | |
*小野林範シェフ: | |
アートとエコロジーの融合。ピエスも味もプレゼンテーションも前の作品を必ず超えること。 | |
*和泉光一シェフ: | |
未来にクローズアップすること。美味しいことは基本前提で、組み立てる技法すら未来を感じさせる、新しくて無駄を全て省いたエコなやり方が入るとテーマにあってくる。それもただ奇抜にするというわけでなく、マスターズのテーマイラストに自然が残っている以上、緑がひとつのキーワードなのかなと思う。その中にあるアートを、自分がもし審査員だったら期待する。 | |
実際この大会で挑戦者と審査員、両方の立場を経験した和泉シェフのコメントには、鋭い観察力と読みを感じますね。前回もテーマのイラストにひっぱられた作品が多くみられたそうです。 |
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小野林範シェフが2015年大会で制作したピエスモンテの再現品が置かれていた。その大会のテーマは「自然からのインスピレーション」だった。 |
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気になる今後のスケジュールは、 | |
2017年 | 4月 歴代代表者による講習会 |
5月 募集の開始 | |
8月 書類審査実施 | |
10月 日本国内予選大会開催 会場はジャパンケーキショー(10月16日) | |
2018年 | 1月 ワールドファイナルのルール発表 |
1月〜9月 試食会開催(日本) 各国代表者のブートキャンプ開催(WCM委員会主催) | |
10月 ワールドファイナル(会場は未定) |
トピックとしては、今大会から参加のハードルを低くするため国内予選課題を3つに絞ったこと。テーマはワールドファイナルと共通で、前述の2015年課題で言うと(1)(3)(4)に相当する。 |
ピエスモンテ「フュートロポリタン」 | |
:新しいデザインと新しい技法に期待 | |
パティスリー「フュートロポリスのフレッシュフレーバー」 | |
:パティスリーとレストランデザートの境界を曖昧にすることに期待 | |
チョコレートスナック トゥ ゴ― | |
:さっとつまんで食べる屋台フード的なもの |
そして今まで公開されていなかった競技の模様も含め、国内予選大会を今回から一般公開で開催。よりショー的な形式になり、SNSなどで情報が即広がるのではと予測されます。
「2015年にオープンした東京のアカデミーでは準備の場所、材料、出場者同士の情報交換の場としてサポートしていきます。今までと違い、未来がテーマだから自分の思いを表現できる、カラフルな大会になると思います。」と、チョコレートアカデミー東京責任者兼テクニカルサポートを務める尾形剛平シェフ。聞けば国内予選でファイナルへ行ける国はアジアでは日本だけ。中国や韓国、台湾、シンガポールなどはアジア地域予選で2か国までしかファイナルに出場できないのです。この恵まれた環境をフルに生かして国内予選、ファイナル優勝へと進んで欲しいですね。 |
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尾形剛平シェフ。同アカデミーのアンドレス・ララシェフとともに、技術や情報交換、シェフとのつなぎ役となってサポートをしていくという。 |
最後に2015年パリのワールドファイナルで審査員長を務めたMOFのジャン・ミッシェル・ペルション氏から、日本のシェフたちに向けたビデオメッセージが届きました。
「しっかりと集中してよく準備をしてください。そしてこれまでの出場経験者たちからしっかり学んでください。次は日本が勝利できると祈っています。がんばってください。」 |
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発表会終了後の集合写真。挑戦してきたシェフたちからしっかり学んで2018年大会を日本が勝ち取りたい。 |
コンクールの詳細は下記サイトをご覧ください。
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