実は私、ブルーベリーが大好物。今から30年ほど前、日本でチーズケーキが流行った時代がありました。レアでもベイクドでも、クリームチーズのフィリングに、必ずといっていいほど入っていたのがブルーベリー。当時は生のブルーベリーなんて手に入りませんでしたから、買ってきたチーズケーキの中で、ところどころパープルに染みた粒の箇所を、それはもうありがたく舐めながら唸っていたものです。それからアヲハタ・ブルーベリージャムの登場はセンセーショナルでした。自宅でもジャムを使えば、憧れのチーズケーキを作れるようになったのですから! そして現在、八ヶ岳南麓に通うようになってから、ここが近ごろ注目のブルーベリー産地だと知り、品種別の味やもぎたての旨さにどっぶりはまり・・・。もはや夏は、生ブルーベリーなしでは過ごせない身体に。 そんな私が東京在住のスウェーデン人の女性に北欧菓子を教えていただく機会を得たときのこと、旬の国産のブルーベリーを持参してみたところ、一粒取り出しナイフを入れ、「これは中が白いからブッシュのブルーベリーね(アメリカ系の栽培種)。スウェーデンのブルーベリーは中も真っ青なのよ。木の背も膝下ほどで、夏になると森に摘みにいくの。摘んではつまみ食いするから、唇と指先が真っ青になって大笑いよ。日本のものは粒も大きいけれど、焼いたらジャム状になりますか? とにかく作ってみましょう」と語りだしました。森のブルーベリーと栽培のブルーベリー、楽しみ方と味、実際どれだけ違いがあるのでしょうか? 頭の中はもう北欧の森の中。というわけで、短い旬のブルーベリーとそのお菓子を求めて、7月下旬のフィンランドへ行ってきました。 それでは早速、ヘルシンキで見つけたブルーベリーとお菓子を紹介しましょう。ブルーベリーはフィンランド語で、mustikka(ムスティッカ)、スウェーデン語でblåbär(ブールバール)といいます。フィンランドではたいてい二ヶ国語表示なので、このふたつの単語を頭に入れてブルーベリーを見つけましょう。 |
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ヘルシンキの屋外市場に並ぶフレッシュベリー。手前の、皮の青色に白っぽさがあるブルーベリーが栽培種、ラズベリーを挟んで右側の濃いブルーがフィンランドの野生種 |
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こちらはヘルシンキ郊外・小さな町の屋外市場の屋台。フィンランド産のベリー類が豊富! ・・・ですがブッシュのブルーベリーはドイツ産 |
ヘルシンキの市場やスーパーの果物売り場を覗いてみると、二種類のムスティッカがあることに気づきます。PENSAS−と頭についているムスティッカは、聞けばブッシュ(=日本でお馴染の栽培種)で、ドイツ産等、外国産の札がついています。フィンランドでは、森に自生するムスティッカが豊富にあるため、栽培品種は作らずわざわざ輸入しているのです。面白いですね。自国の野生種より1ユーロ高いけれど、大きくて甘い栽培種を好む人もいるのでしょうか。ちなみに量り売りではなく、1リットルあたりで値段がついているのも北欧ならでは。レシピもグラムではなく、デシリットル表示が主流なので頷けますが!
次にパン屋さん、お菓子屋さんを覗いて見ましょう。 |
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☆カニストン・レイポモ KANISTON・LEIPOMO http://kannistonleipomo.fi/ |
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タルトレットに旬を詰めたケーキは、単にケーキという名でもあり、ムスティッカコリ(MUSUTIKKAKORI)〜ブルーベリーバスケットと呼ばれることもある。同じく夏が旬のラズベリーケーキも左に並ぶ |
☆カック&レイパ・ケイサリ Kakku & Leipä Keisari http://www.kakkukeisari.fi/index.php/home ブルーベリーやラズベリーなど、酸味の爽やかなベリー系はチーズや乳製品と相性が良いせいか、チーズクリームのアパレイユに、ベリーをちりばめた菓子パンもあります。カック&レイパ・ケイサリ前の屋外市場には大小さまざまなプッラ(菓子パン)やタルトなど、そういった昔ながらの定番が並んでいました。 |
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どれも素朴で昔ながらの味わいが想像できます。特にラハカとの組み合わせは、ベリー色の染み具合が、昔食べた日本のチーズケーキを彷彿させます。このとき買って食べればよかったのですが、複数個入りで手が出ず、次の店でと後回しにしたら見つからなくて後悔。こういうことは旅行中にはつきもの。次回への宿題にします。
☆カフェ・エクベルグ Café Ekberg (英語あり) http://www.cafeekberg.fi/ |
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食品のセレクトショック Anton&Anton の菓子ケースには、「Frambois」や「PETITPAS」といったフランス風パティスリーのブルーベリータルトが並ぶ |
また今どきのお店として訪ねたディーン&デルーカ的ヘルシンキの食品セレクトショップ、アントン&アントンのショーケースの中にフレッシュブルーベリーのケーキを見つけました。フランス風のお菓子&パンを売りにする2つのお店〜「フランボワ Frambois」と「プティパ PETIT PAS」が製造した2種類のタルトです。ひとつは野生種、もう片方は栽培種、それぞれ作り手の選択が気になるところですが、いずれにしてもアーモンドクリームを焼きこんだフランス式タルトではなく、フレッシュなクリーム系フィリングとあわせているところに、フィンランド人の意地を感じます!・・
☆アントン&アントン Anton&Anton 店舗情報(英語ページ) http://www.antonanton.fi/en/Stores/Kruununhaka |
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冬に訪れたカック&レイパ・ケイサリのショーケース。ジャムを詰めたムスティッカプッラ(右)。ちなみに左はりんごのデニッシュ |
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同店の冷蔵ケース上のブルーベリーを焼きこんだシンプルなケーキも、あちこちの店で見られる定番中の定番 |
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カックガレリアのMustikkatartaletti(下)。これは輸入ブルーベリーで作っているのか、解凍かわかりませんが・・・ |
2店目にも紹介したカック&レイパ・ケイサリでは、ジャム状のブルーベリーを焼きこんだプッラ、それにフィンランドでは定番の焼きこみケーキがありました。このときはカーニヴァル菓子〜ラスキアイスプッラを探しての旅でした。肝心のそれが時期終了でどこにもなかったのに!
最後はヘルシンキに数店展開する1999年創業のカックガレリア。観光&ショッピングスポットである'デザインフォーラム'敷地内に併設されたお店には、なんと今回夏の定番と思われたブルーベリータルトがありました。食べなかったのでわかりませんが、写真からは生っぽい雰囲気も伝わります。3月のことです。ブルーベリーは輸入品なのでしょうか? いずれにしても、ブルーベリーはフィンランド人の生活になくてはならない友、常に何らかの形で、ショーケースで青く輝いているのでしょうね。 ☆カックガレリア KakkuGalleria http://www.kakkugalleria.com/site/ |
今回はヘルシンキを町歩きするように、ブルーベリーとお菓子、菓子パンとそのお店を紹介しました。こうして振り返ると、ブルーベリーは派手な色彩ではないのに、どのお店のものもほとんど飾りけがないことに気づきました。フィンランド人はブルーベリーのありのままが好きなのでしょうね。次回はフィンランドの森で、実際ブルーベリー摘みをして作ったお菓子など、生活に取り入れられているブルーベリーを紹介しましょう。それではまた次回に! |