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パンの命ともいえる、“小麦と酵母”。それをマスターすることができれば、自分の求めるパンも思いのままになるはずですよね。 ということで、応用コース第1回目のテーマは、「天然酵母」。ぶどうの酵母や日本伝統の酒種などを使ったパンを教えていただきます。 基礎コースに引き続き、講師は「ブーランジェリー ラ・テール」のシェフ、栄徳剛さん。とにかく、粉と酵母にかけては右に出るもののないほどの達人です。 さて今回は、どんな酵母使いを教えていただけるのでしょうか? |
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栄徳先生、今回もよろしくお願いします! |
「まずは、〈サフ ルヴァン(仏サフ社の天然酵母)〉を使った生地を紹介します。この〈サフ ルヴァン〉は、天然酵母をドライにしたものなのですが、とにかく種起しが楽で、味に安定性があるのが特徴なんですよ」 と栄徳先生。ちなみに、この〈サフ ルヴァン〉には独特の風味があり、入れないとまったく違う味わいになってしまうのだとか。これこそ、プロの味の秘密です。 「この元種は、冷蔵で1週間くらい保存可能です。とても安定しているので、少ない量でも作りやすいのもポイントですね」 家庭で作ることを考えると、確かにこれは嬉しいですね。 |
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この日も冷凍後、解凍した生地を使用。1日前から 冷蔵解凍し、室温に戻さず、そのまま使います |
「それから、冷凍ができるのも特徴。店では、仕込み後に冷凍し、解凍後に分割しています。このとき、併用する生イーストを冷凍耐性のいいものにするのもポイントです」 ちなみに、「ブーランジェリー ラ・テール」で使用しているのは、白神こだま酵母の生イースト。一般にはあまり流通していない生イーストですが、かなり冷凍耐性に優れているそうです。 |
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チョコレートチップを約40%練りこんだ ビエノワ ショコラ生地。60gに分割します |
「〈サフ ルヴァン〉で元種を作る際には、リスドオルを使っています。粉と塩、牛乳と一緒に低速で3〜4分混ぜ、その後22℃で16時間おけばOK。とても簡単ですが、捏ね上げ温度が低いと酸が強くなってしまうので、これだけは注意してください」 ふむふむ、これなら挑戦できそうです。 |
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分割したらベンチタイムを取ります |
ところで、フワスとはどんな生地なのでしょうか? 「フワスというのは、フランスの地方に伝わるリッチな生地なんですよ。今日は、入れるものや成形を変え、3種類のパンを作っていきます」 配合を見ると、ハチミツ、砂糖、全卵、牛乳にバターと、かなりリッチ。ブリオッシュに近いイメージです。 |
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細長く伸ばし、細かくクープを入れていきます |
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斜めに切れ込みを入れて・・・。ふんわり開いて、葉のような形に |
「このフワス生地は、本来、ちょっとパサツキ感のある生地なんです。フランス人はそれが好みだからだと思うのですが、僕は好きじゃないんですよね」 たしかに、ブリオッシュのようなリッチなパンでも、パサパサしていることってありますよね。これが苦手という人は案外多いはず。先生、どうすればいいんでしょう? 「パサツキ感には卵白のタンパク質が影響します。だから、全卵の卵白分を牛乳に置き換えているんです。こうすると、パサつかず、しっとりとした食感に。パサツキ感が苦手な方にはオススメです」 なるほど!原因がわかれば、意外に簡単にコントロールできるんですね。 |
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次の酵母は、〈酒種〉。日本人にとって、もっとも親しみのある天然酵母かもしれません。 「〈酒種〉の元になる〈麹〉は、かなり弱い菌なんです。乾燥の麹は香りも弱いので、使うなら生がいいですね。今回は、神田明神の前にある『天野屋』さんに買いに行きました」 麹は、甘酒やべったら漬け、味噌、醤油・・など、日本の食材には欠かせない菌。でも、生麹にはめったにお目にかかりません。いったいどうやって酒種を起こすのでしょうか? |
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プクプクと細かい泡が立った酒種。色はきれいな白です |
「では、説明します。生麹、生米、炊いたご飯(やや老化したもの)、水をまず25〜27℃で48時間発酵させます。次は、1回目の種に、さらに炊いたご飯、麹、塩、水を加え、24時間発酵。さらに、2回目と同様にして、3回目、4回目も24時間置いて発酵させます。夏場は3回でいいですが、冬場だったら4回の方がいいですね」 |
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まずは、油脂のバターをのぞいた材料を入れてミキシング。かなりミキシング時間が長いので、水も粉も冷たい状態にしておきます。ただし、捏ね上げ温度が26℃以下だと酵母の活性がにぶるので注意! |
ここまでで、約5日間。実際に使う際には、さらに24時間かけて仕込み種を起こしていきます。 菌は生き物とはいえ、種起しというのは、本当に気の長い作業ですね。 「確かに、時間はかかりますね。でも、せっかく酒種であんぱんを作るなら、一度は種起しから挑戦してみてもいいと思いますよ」 そして、大事に育てられた酒種が登場。白くて、トロッとした状態で、甘酒をもっとフルーティにしたような香りがします。 |
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捏ねあがりの生地。ツヤがあり、伸ばした とき、抵抗を感じないくらいが目安です |
パン屋さんに行っても、自家製の酒種パンはあまり見かけませんが、和素材との相性は絶対にいいはず。あんぱん以外にも、未知なる可能性がありそうです。 「うちの店にいるフランス人は、日本のルヴァンにすごく興味を持っているんですよね。フランスでは、シャンパンで捏ねるブリオッシュもあるくらいだし、酒種で色々なパンができれば面白いと思います」 |
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北海道・箱根牧場で作っているBIOの餡2種(小豆、 かぼちゃ)。生地量40gに対し、50gとたっぷりです |
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先生のお手本を拝見。餡べらを使って餡をぐっと押し 込み、まわりの生地を伸ばしながら包んでいきます |
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皆さん、包餡も手馴れたもの。 はみ出さないように、気をつけて! |
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小豆は中央をぐっとへこませ、桜の花びらを乗せて。 カボチャはハサミでカットして、花のような形にします |
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1時間ほど二次発酵を取ったら、いよいよ 窯入れ。焼き上がりが楽しみです! |
そして、3つ目は、ちょっとユニークな製法の〈ぶどう酵母〉を使った「アルチザン・テラ」のスペシャリテ、“ぶどう酵母のパン”を教えていただきます。
「これは、フルーツを使い切る酵母なんです」 フルーツを使い切る? いったいどういうことでしょう。 |
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これが今日使う〈ぶどう酵母〉。確かに、普通の ぶどうの酵母とは何かが違うような・・・ |
「まず、オーガニックレーズンとハチミツ、水を、30℃で2日間置き、液種を作ります。その後、果肉ごとジューサーで潰してしまい、それと小麦粉を合せてレーズン種を作っているんです。これだと、フルーツの香りが出て、個性も楽しめるんですよね。安定性という意味ではレーズンがいいですが、リンゴや旬のフルーツなどで試しても面白いと思います」 レーズン酵母というと、液体の部分だけを使うのが一般的ですが、これは目からウロコ! 確かに、フルーツ感が増しておいしそうです。 |
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水が浮いたような、みずみずしい状態になったら、ミキシング終了。 クルミ入りは、さらに2分ほど回して、クルミを細かくしてしまいます |
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1時間半ほど一次発酵を取ったら、生地を分割。レーズン種が元気だと、60分でOKということもあるので、見極めが重要です。ちなみに、この日は75分でした。酵母の気持を聞くことが大切です |
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二次発酵は約28℃で180分。1.5倍くらいの大きさが目安です。それ以上膨らむと、クープが開かなくなってしまうので、要注意 |
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粉をふってクープを入れます。 なかなか洒落た表情になってきました |
ランチを終え、ひと心地ついたところで復習タイム。作業台の周りにイスを並べ、今日の手順やポイントを復習します。 |
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聞き逃したポイントや手順も、しっかり復習。作るだけでなく、考えて作ることで、ぐっと腕が上がります |
時間や温度などの目安はあっても、見極めには“経験”と“勘”を要する今回のテーマ「天然酵母」。手間もかかる上、難易度も高いものですが、さすがに応用コースの皆さんだけあって、天然酵母作りの経験がある方も多いようす。 「先生、レーズン酵母の保存はどこですればいいですか?」 「温度帯は? 冷蔵庫じゃだめですか?」 「レーズンではなく、リンゴで作る場合はどうしたらいいですか?」 と質問が飛び交い、話はどんどんマニアックな方向に・・・。 酵母と乳酸菌の関係や、酢酸が生む酸味についてなど、その内容はまるで“酵母学”。なかなか充実した勉強会になりました。 基礎から一歩進んで、思い通りのパンを焼く応用コース。次回、第2回目のテーマは「食感」です。どうぞお楽しみに! |
〈 今回作ったパン 〉 |
ビエノワ ショコラ | ![]() |
フワス オランジュ | ![]() |
ガレット ペルジェンヌ | ![]() |
ブリオッシュに似たリッチな生地は、とてもやわらかく、しっとりとした食感。シンプルにチョコレートを入れた“ビエノワ ショコラ”、成形がユニークな“フワス オランジュ”、そしてほのかに酸味のあるクレームエペスをたっぷりと塗った“ガレット ペルジェンヌ”。同じ生地ですが、合せる具材や成形を変えることで、ぐっとバリエーションが広がります。
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生地よりも餡の量が多い、ずっしりとしたあんぱん。酒種を使ったパン生地は、薄くしっとりとした食感なので、餡との一体感を感じます。麹のクセはほとんど感じないので、ほかの具材にも合いそうです。
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ローストしたクルミを練りこんだ丸形と、プレーンのなまこ形の2種類。ぶどうの果肉ごと酵母として使うことで、ぐっとフルーティな風味が増しています。甘みのなかに、深い旨みが広がる、味わい深いおいしさ。
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