バウムドルフ

木村薫さん、智子さん
(お話は智子さん)


 店をはじめたのは1992年、今から10年近く前のこと。そのころはね、このあたりには本当に何もなかった。こんなところに住めたらいいなあと思ってこの場所を選んでパン屋をはじめました。最初は、「こんなところでやるの?」って心配する人ももちろんいたし、事実、開店当初は一番やりたかった食事パンも今よりずっと売れなかったです。でも徐々にそれも変わってきているのを感じるし、ずっと買いつづけてくれる常連さんもいます。「もうここのパンしか食べられない、引越し先に食パン送って」なんていう言葉に、続けていた喜びを感じたりもしますね。

 もともと主人は高校時代にパン屋さんの前を通って通学していたんですって。それで毎日学校の帰りに、翌日の家族の朝食のための食パン1斤を買わされているうちにパンの世界に引きずりこまれたらしいですよ。ホテルや個人店で10年くらい修業していた後にこの店をオープン。一方、私はずっとOLをしていました。パンが好きでパン教室などにはそのころから通っていました。OLをやめ、パン屋に職人として勤めはじめていたとき、人の紹介で彼に会いました。まさか、自分でパン屋をやることになるとは思っていなかったです。

 店の一番のウリは食パンかな。飽きのこない、毎日食べてもらえるような味作りをしています。でも、食パンには私は触らせてもらえないんですよ。彼のこだわりがあるみたいで、仕込みから焼き上げまで必ず彼が自分ひとりでやっていて、一日に2,3回焼き上げています。
食事パンを主体に、じっくり作っていきたいという姿勢は、今も昔も、そしてこれからも変わらないと思います。ドイツパンとか、なじみの薄いパンはお客様にも積極的に食べ方の紹介をするようにしています。だから販売のスタッフにはとにかく食べさせるんですよ、うちは。自分で食べてみると、その特徴や美味しさだけでなく「こんなのと合わせると美味しかった」というのがわかって自然にアドバイスできますからね。

お客様のほうから、「こんなパンを作って」という要望もありますね。もう一年近くお願いされつづけているのがベーグル。「どうしてもNYの味が食べたい、いろいろ食べたけどこの味を出す店はない」といって、常連さんがNYからわざわざベーグルを持って来たんです。「この店なら作れるはずだ」と言っていただけるのは嬉しいけれど、まだ完成していないので、近い目標はこのベーグルかな。
それからね、食べやすい、自家製の天然酵母を使ったパンも作りたいですね。お店を大きくしようとか、店舗を増やそうという気はないので、眼の届く範囲できちんとしたパンを作りつづけたいですね。

取材日 2001年4月

バウムドルフ
神奈川県横浜市青葉区すすき野2―7―2
TEL:045-904-2322


木村さんの秘密