ヒサモト 久本恭永さん |
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1942年に祖父が渋谷で洋菓子店をはじめてから、自分で3代目になります。一時は都内に数店舗ありましたが、1986年からはここだけ。1店になったのを機に、大幅リニューアルしたんです。![]() そんな中で、冷静に自分でできることを模索し始めました。自分は、有名店で修業をした訳でもなければ、コンクールで賞をとった訳でもない。だから技術だけで勝負できないと思ったんです。それならどうしたら特徴が出せるかと日々悩みました。そこで出た結論が"素材"。 ![]() 技術がない分、人よりちょっと早起きして、いい素材を入れている、というところでしょうか。業者のときと違って、自分の目で見て、気に入らなかったら買わないことができるのが何よりいいです。ツケで買うことは絶対しません。毎回現金です。だから店との変な義理も生まれない。今、主に2軒の店と付き合っていますが、「いいものが手に入らなければ明日からでも切り替えるよ」という、お互いが毎回真剣勝負なんです。 ![]() そして何より店のショーケースに季節感が出るようになりました。状態が悪かったときは仕入れないフルーツがあるから、例えばお客さんに「あれ?昨日あった柿のタルトないの?」といわれたら「今日はいい柿がはいらなかったから」と言います。これがお客さんの安心感にもつながっているみたいなんです。フルーツは食べごろがあるから、たくさんは仕入れられない。築地のフルーツを大胆に使うのはタルトですが、うたってはいないものの、おのずと限定販売になっていて、夕方はなくなっていることが多いです。
![]() 3代目として、昔ながらの味を捨てることに抵抗はなかったです。お客様の味覚はどんどん変わっているのだから、それにあわせていかなければならないから。でも、形を守っているものはあるんですよ。ショートケーキです。昔から使っている丸い型で作っているんです。ただ、ひとつのケーキとしてはちょっと大きいので、最近ホールを切った三角の普通のサイズも出しちゃったんですけれどもね。 ヒサモト |