レ・サヴール
高木 康政 氏 |
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![]() 例えばね、素材についてですが、やはり完璧にフランスと同じは無理ですよね。それに、地球の反対側のブラジルまでいけばあるよ、という珍しい素材を常に入れることだって難しいと思うんです。フランスから帰ってきたときはね、素材にしても製法にしても、最高級のフランス菓子を作ってやる、って今思うとかなり気張っていました。それがヨーロッパだけでなくアメリカを見にいったり、日本で働き出して色々な人の話を聞いて変わったんですよ。もちろん、悩みもしました。でも、結論として、色々な制約の中で「自分らしさ」を出そう、って。 そうやって素材を選んだり作ったりしていくことが楽しくなっちゃったんですよ。これを入れなくちゃ絶対にだめだ、というお菓子の作り方でも、その核心部分を自分流にアレンジしちゃって「らしさ」を出していいんですよね。「これが今の自分らしさだ」って。 ![]() 素材といえばフルーツや野菜なんかにはね、今も常にアンテナを張っていますよ。外食しても、この素材使えるかなあ、なんていう目で料理を見ちゃいます。職業病ですかね。フランスにいた時にあったレンヌクロードっていう緑色のプルーンみたいなくだもの。うまいんですよ、これが。ほろ苦くて、甘くて、最後に酸味がきて、ほんと美味しいの。これ、日本になんでないんだろ、って思っていました。そうしたらね、軽井沢で見つけたんですよ。やっぱり足を運ばないとわからないものだなあと思いましたね。いいものを見つけるには、足を運ぶのが一番です。来年はこの素材、是非使ってみようと思ってます。 お菓子の甘さについての考えも、年とともに色々な経験で変わってきました。フランスいったりドイツいったり色々回っているとね、寒い国ほどお菓子の甘みが強い。日本は温暖湿潤でしょう。フランス菓子とはいえ、あっちそのままの味で合うのか、と思ったときに、フランスと同じ甘みじゃあ食べられないよ、と思って僕なりにかえて、今では意識して甘さを抑えています。 ![]() 高校時代、甲子園を目指してやっていた野球を辞めてしまったことがあったんです、他の楽しい誘惑に負けて。のちのち、ネット裏で観戦したとき、強烈に後悔しました。あの後悔はもうしたくない。だから、好きで始めたお菓子作りは絶対辞めません。目標意識をもって、ずっと続けていきます。 取材日 1999年
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