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レジオン 藤巻 正夫 氏 |
お菓子職人としてスタートしましたが、パンにはもともと興味がありました。パンは修業時代から色々なところで焼いていて、なかでも、体を作る主食としての食事パンを作りたいなと思っていたのが、店で焼くようになった発端です。体を作るものだから、当たり前だけれど素材には安全さを求めます。 そして僕が求めている味は、例えばカンパーニュでも"日本の"カンパーニュです。"フランスの"カンパーニュじゃないんです。フランスの有名パン屋のカンパーニュは確かにあちらで食べるとものすごく美味しい。でもここは日本。だから作りたいのは、日本の風土、生活している人に合うもの。そして安全性まで考えると、おのずと国産の小麦を使いたくなります。これはケーキにも言えることなんです。 旨くて安全、そしてその上に初めてオリジナリティーというのが出てくるんじゃないかな。うちのパンは、生地に玄米を使ったものが多いのが特徴なんです。なぜ玄米なんかを混ぜ込むようになったかというと、栄養があって健康にいいからだと思いますか。実はそれより先に、まず僕の実家が農家だったからという理由ありきなんです。 実家に戻ると、減反の田んぼが年々増えていくのが目の前の風景で分かるんです。子供の頃は夏になると一面美しい緑に輝いていたのに、その風景がだんだん小さくなっちゃって。それを見ると僕だって寂しいですから、作っている人はもっとでしょう。話を聞けば、米を作りたい気持ちはあるという。でも、日本人の米消費量はどんどん減っているんですね。逆にパンは伸びている。だったら、両方一緒に食べられるようなものを作ろうって。それがパン生地に玄米を入れたきっかけです。 当然かもしれませんが、この生地で作ったパン、和の惣菜にも合うんですよ。 うちの店は、ブランジュリー、パティスリー、そしてカフェの三本立て。どれも、"ついで"でやっているものなんてありません。やるからには、どれもしっかりとです。今取り組んでいるのは、自家農園。カフェで出しているサンドイッチのキュウリやトマトはここでとれたものです。今年はベリー系の収穫量も増え、徐々にケーキにも使えるようになってきました。ハーブなどもここからとっているんです。 フランスで修業していた時ね、地方の星付きレストランの厨房にもいさせてもらったことが何回かあるんだけど、そこはみんな自分の農場を裏に持っていました。そして例えば朝もいだ豆を、昼にバターでソテーする。ただそれだけなのに、びっくりするほど美味しかった。新鮮な素材の力にはかなわないと思いました。それで、自家農園をやって、とれるもので完全に店の商品をまかなえるようになったらどれだけいいだろうと思ったんです。まずはフルーツと野菜から。ゆくゆくは小麦もここで作りたいと思っています。 ちなみに店で出た生ゴミは"ゴミ"じゃなくて全て堆肥にしています。そしてケーキの陶器の器なども、お客様におねがいしながら、リサイクルして使っています。仕入れる牛乳もビンで、使い終わると仕入先である生協に返す。卵も、運んでもらったらこちらの容器に移し替え、入れて来てもらった容器は、また次に卵を運ぶ時使ってもらいます。 こういう資源の使い方って、これからますます大事だと思うんです。率先してやっていきたいですね。 取材日 2001年8月 |
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