フランス、ブルターニュ地方でベリー栽培農家として始まり、今や世界中から果実を集め、質の高い冷凍フルーツピューレを製造する会社として、名だたるプロから厚い信頼を得ているラ・フルティエール社。更なる質の向上をめざし、2014年出荷分から使用する原料の砂糖を、ビートからサトウキビへ切り替え、「より自然で美味しい」フルーツピューレに生まれ変わりました。
(フランス本社農園と工場訪問記もあわせてご覧ください。→ http://www.panaderia.co.jp/event_report/fruitiere/index.html


新しくなったピューレのお披露目として、6月11日、六郷にある株式会社イワセ・エスタ東京にて講習会が行われました。講師は「ドゥー・パティスリーカフェ」を1月に退社・独立準備中の菅又亮輔氏と「パティスリー・アステリスク」オーナーシェフ 和泉光一氏のお二人。若手ゴールデンコンビの講習会とあって、募集開始からすぐに80席が埋まってしまったそうです。夏を前に、ラ・フルティエール社の瑞々しいフルーツピューレが、一体どんなスイーツに活かされるのでしょうか? それでは当日の様子をご覧ください。

「より自然により美味しく(naturellement bon)」。フルーツの写真、きび砂糖入りマークでパッケージもわかりやすく。


午前の部、菅又シェフは3品を作りました。

一品目はコロンビエ(Colombier)。コロンビエは、キリスト教移動祝祭日ペンテコート(聖霊降臨祭と呼ばれ、復活祭の50日後)を祝うフランスのお祭り菓子。アーモンド粉ベースのバターケーキは小麦粉のほか、コーンスターチが入るのでさくっとした食感となるのですが、菅又シェフが修業していたフランスの「ラ ヴィエイユ フランス」では、しっとり感を出すために間にクレーム・オ・ブール(バタークリーム)をサンドして作っていたそうです。

菅又シェフはこの方法をもとに、生地とクレーム両方に、赤いフルーツを混ぜ込み、クラシックなお菓子に新たな色と風味を吹き込みました。表面にフォンダンがけをしてから再びオーブンに入れるので、サンドしたクリームが上下の生地に染み渡ってしっとりするのを狙います。フルーツの自然の赤は、見た目にもとてもやさしく、カットしたときの驚きもありますね。コロンビエは5月から6月の祝い菓子なので、季節的にもグリオット(モレロチェリー)やグロゼイユ(レッドカラント)の甘酸っぱい香りがぴったり。

焼きあがったモレロチェリーピューレ入りコロンビエ生地を上下半分にスライスし、クレーム・オ・ブール・グロゼイユ・グリオットを絞ります

Colombier。レッドカラントピューレとモレロチェリーピューレのクレーム・オ・ブールをサンドしたラインとプラリネルージュのトッピング、何かありそうな見た目にそそられます。

二品目はパッショネモン(Passionement)。このプティガトーは、3年くらい前に雑誌の企画で作ったアントルメグラッセを、今回はじめてムース仕立てにしたというもの。もともとはドゥー・パティスリーカフェで季節ごとにパフェを作っていたことが原点。実は菅又シェフはラ・フルティエールのパッションフルーツの味が大好きだそうです。一時期同社のパッションフルーツのピューレが入ってこなかったときは、手間や原価をかえりみずに沖縄から生のパッションフルーツを取り寄せたことがあるほど。そして強烈な酸味のあるパッションフルーツを組み立てる時は、原価はあがるけれど、お砂糖ではなくマンゴーやりんごなどのフルーツピューレの甘さで立体的に風味を引き出すのだそう。また、ピューレは加熱するとせっかくのフルーツの香りが飛んでしまうので、ムースやジュレを作る際はピューレの一部だけを加熱しゼラチンを溶かすなどの工夫がされました。

セルクルにシロップをアンビベしたパッショネモンのジェノワーズをセットアップ。

パッションピューレをマンゴーピューレ、パイナップルピューレなどと合わせたムース、ココナッツミルクピューレと合わせたクレーム、アプリコットと合わせたジュレなどを重ねたPassionement。同じ色合いのフルーツを絶妙にブレンドすることで主役のパッションフルーツの風味がより浮き出てくる。

試食に用意されたPassionement(手前)とColombier(奥)の断面。


三品目はプリンセス(Princesse)。瑞々しい夏のフルーツ、ホワイトピーチピューレとレッドカラント(グロゼイユ)ピューレを軸に、ライチピューレの白、ローズヒップの赤を合わせ組み立てたヴェリーヌ(グラスデザート)です。ヴェリーヌを得意とする菅又シェフ、素材の組み合わせはもちろん、一番のこだわりは底部分。最後まで飽きずに食べきることのできるヴェリーヌを作るには、底部分の味の構成が重要なのだそう。今回プリンセスの底はクレームブリュレ・ペッシュグロゼイユ。ホワイトピーチの風味をレッドカラントの酸味で補い、クリームで香りを持続させるといった具合です。さらに、「ピューレだけでは画一的な味になりがち、生のフルーツを組みこむことでフレッシュな香りを吹き込むことができる」と、ジュレ・ローズヒップの下に生のグレープフルーツとライチを組み込んでいます。

ヴェリーヌのポイントは底部分。素材の組み合わせセンスはピエール・エルメ・パリ時代に培ったと菅又シェフ。

Princess。構成は底からクレームブリュレ・ペッシュグロゼイユ、ジュレ・グロゼイユリチ、クレーム・ペッシュリチ、ライチ、グレープフルーツ、ジュレ・ローズヒップ。トップのローズヒップのアガーゼリーの青っぽい香りとライチ、グレープフルーツのしゃくしゃく感、ヨーグルトっぽいブリュレとクレームで香りが持続、色と味の濃淡バランスが楽しめる。


途中リニューアルしたフルーツピューレ3種を試食。パッションフルーツはオレンジのような香りとはじける酸味、天候に左右されやすいインド産アルフォンソ種に、ペルー産シャトデイカ種をブレンドしたマンゴーからは、青っぽいバナナ、ココナッツ、ヴァニラなど様々な香りがたち、フランス・ローヌ渓谷産ホワイトピーチからは意外にもスイカのような香りと海苔のようなヨード香が漂う。冷凍加工されたフルーツピューレがこれほど鮮やかな色と複雑な香りを感じとれるとは驚きです。お菓子作りにプロが絶賛するのも頷けますね。

70℃で3分程度殺菌されたラ・フルティエール社のフルーツピューレは、自然の果物の色や味、風味が生きている。


この後昼食を挟んで和泉シェフの講習会へと続いたのですが、あいにくどうしてもはずせない所用で中座したパナデリア。主催のラ・フルティエール・ジャポンさんによれば、途中菅又シェフが和泉シェフの助手をしたり、笑顔の絶えない講習会だったとのこと。どんなお菓子を実演されたのか、写真だけでもご覧ください。

技術もさることながら、話し上手な和泉シェフの講習会は、いつも大人気。

和泉シェフのデモで菅又シェフもお手伝いするシーン。どんなお話しをされていたのでしょうか!?

和泉シェフのトパーズ(Topaz)。メロンピューレのムース、パイナップルピューレとバジルのクレーム、ココナツメレンゲなどの夏らしい組み合わせ。

タルト・オ・スリーズ・エ・カシス(Tarte aux Ceriese et Cassis)。カシスピューレのシブーストをのせた季節のタルト。


聞くところによれば、今回和泉シェフが製作したお菓子は、お店(アステリスク)にも並んでいるそうです。最高のフルーツ感を味わいに、これは伺わなくては! (確認してから行かれることをおすすめします)
さぁ、いよいよ夏本番、爽やかなフルーツを盛り込んだスイーツで、元気に過ごしたいですね。

講習会スタッフ集合。お疲れ様でした!



ラ・フルティエール・ジャポン
 http://www.lfj.co.jp/





panaderia topへ戻る