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「塩味」「酸味」「苦味」「甘味」・・・食べ物にある4つの味覚を小学校で教える活動「味覚の一週間」がフランスで始まって25年。2011年には日本にも導入され4年目を迎えます。日本では「うまみ」を加えて5味を教えています。

その活動のひとつ、「味覚の授業」は、シェフやパティシエ、生産者などがボランティアで小学校を訪れ、子供たちに味覚の基本を食べて、感じて、教えるというものです。

2014年の「味覚の一週間」開催は10月20日から26日まで(フランスは10月13日から19日)。その概要が、先日東京ガススタジオプラスジーギンザで発表されました。「味覚の一週間」事務局長の瀬古篤子氏の司会で、「味覚の一週間」の呼びかけ人と活動に参加している方11人が体験を元に、それぞれの思いを語られた2時間でした。

瀬古篤子氏の挨拶で始まった「味覚の一週間」プレス発表会。


「日本での開催も4年目、ジャンクフードや肥満、味覚の劣化問題など課題も見えてきました。今年からは第二章に入ります。2010年にフランス料理が、ユネスコの世界無形文化遺産に登録され、2013年12月には「和食」が同じく登録されました。これを機に、日本とフランスがタッグを組んで、このイベントを盛り上げていきたいと思います」と、「味覚の一週間」呼びかけ人の一人で、日仏メディア交流会会長でパリ日本文化会館初代館長、元NHK報道局長の磯村尚徳氏。

フランスと日本の食文化の架け橋でもある磯村尚徳氏。


なんと今回、フランス「味覚の一週間」25周年連動プロジェクトとして、日本からフランスへ出張参加。
「和食」に焦点を当て、日本食・食文化の普及拡大を促すというものです。「フランスにおける日本食文化の教育と普及」を掲げた、活動プランは3つ。
*活動プラン1は、「味覚の授業」に日本人の料理人講師を派遣し、フランスの小学生たちに、4つの味覚のほか、出汁で第五の味覚「うまみ」を教え、日本の食材と食文化を普及します。
*活動プラン2は、「未来のシェフ」フランスの調理専門学生への「和食」と「日本食材」のデモンストレーションを実施予定。
*活動プラン3では、パリの「マルシェ」に出店し(10月18日)、お米と和牛を使った一口サイズのライスバーガーのサンプリングや、食材展示をし「日本食材」の啓蒙をします。

味覚を通じ、生産者と食べ手をつなぐ機会にもなる3つの活動プラン、どのような手ごたえ、反応があるのかが楽しみです。

皆でわいわい食べることも大事と語る服部幸應氏。


「日本での食育は、農業体験などはかなりポピュラーになってきていますが、味覚体験はまだまだです。実は今、香港、上海、韓国などでも、フランスの「味覚の一週間」を、導入する動きがあります。日本は負けていられません。ボランティア活動に弱い日本では、今現在フランスの1/25しか、味覚の授業が出来ていません。もっと活動の輪が広がることを願うばかりです」。
こう訴えるのは、同じく呼びかけ人の一人である服部幸應氏(学校法人服部学園 服部栄養専門学校 理事長・校長、医学博士/健康大使)。

2000年に「日本味覚教育協会」を発足させた内坂芳美氏。

京都で季節を料理する中東久雄氏。


「たった一日の授業なのに、子供たちにとっては、とても印象に残っている授業だと後々言われることがあります」と語るのは、早くから味覚の授業研究に取り組んだ内坂芳美氏(日本味覚教育協会会長、料理研究家)。

「かつおと昆布の旨みを実感してもらいましたら、単体では生臭いとか、ぬるぬるするなどネガティヴだったのが、合体させたとたんに美味しいと声が上がりました」と、出汁の旨みに触れた子供の感性を語る、「草喰なかひがし」店主の中東久雄氏。


今年の「味覚の授業」は、全国の小学校133校、331クラス、9659名の児童を対象に行われます。(2014年9月1日現在) フランスから来日する料理人ミッシェル・トロワグロ氏や、三國清三氏、料理研究家の藤野真紀子氏、パティシエの島田進氏など、多くの食のプロたちが、ボランティアで味の基本、五感で楽しむ、作る、一緒に味わう大切さを伝えます。

11人が順番に「味覚の一週間」にむけた思いをスピーチされた。


そして「味覚の授業」に参加したシェフ、料理人の店を中心に5味がバランスよく食べられるレシピを一皿にのせ、期間中親子で楽しんでいただく「味覚の食卓」には、日本全国で77店舗が参加予定。初めての味、料理について親子で会話しながらの食事はきっと忘れられない思い出になるでしょう。

また、「味覚のアトリエ」のひとつとして、これからの味覚の継承を担っていく若者のために、「味覚を教えるということ」とは何かを伝えるシンポジウムおよびワークショップ「世界の巨匠との出会い」が、10月21日に服部栄養専門学校で行われます。

さらに、世界で通用する言葉となった‘BENTO’で日本の食文化を表現、世界へ発信! 今年も世界中からレシピを募集し、“「味覚の一週間」インターナショナルBENTOコンクール”を開催。第3回となる今年のテーマは「旬/SAISON」。優勝作品は2015年のANA子供用機内食に採用されるのだから夢が膨らみますね。最終審査は10月19日、東京ガス横浜ショールーム クッキングスタジオにて。

子供や学生はもちろん、一般の大人も参加できる「味覚のアトリエ」は、関東各地で開催されます。その多くを主催する東京ガス株式会社は、なんと1992年から子どもの食育教室に取り組んでいたのです。2011年からは「味覚の一週間」の趣旨に賛同する形で「味覚のアトリエ」を展開。今年は帝国ホテル総料理長 田中健一郎氏による小学3〜6年生対象の味覚授業と実習を開催するほか、著名シェフによる親子対象の'カラフルおすし'作りなど様々な「味覚のアトリエ」プログラムを組んでいます。パナデリアでも、料理・お菓子作り経験者を対象にした、ピエール・エルメ・パリ(講師:リシャール・ルデュ氏、クリストフ・ドラピエ氏)によるクッキングセミナーを取材する予定。後日その様子をレポートしますのでお楽しみに。




プロを講師に迎え開催される「味覚のアトリエ」は今年も多数。


農林水産大臣政務官 中川郁子氏も、駆けつけてくださったプレス発表会。有識者、職人、企業、自治体などの有志で始まった「味覚の一週間」は、国を挙げてのイベントになりつつあるようです。これからは10月の第4週は「味覚の一週間」と覚えておきましょうか。


プレゼンターのみなさん。左から瀬古篤子氏、柳原尚之氏、内坂芳美氏、三國清三氏、服部幸應氏、ドミニク・コルビ氏、板花芳博氏、中東久雄氏、大鹿裕司氏、前刀禎明氏、藤野真紀子氏。



開催概要:日本2014年10月20日(月)〜10月26日(日)
フランス2014年10月13日(月)〜10月19日(日)
テーマ:「旬」

「味覚の一週間」の公式サイト
http://www.legout.jp/


参考までに、パナデリアに掲載中の昨年の味覚の授業の様子をご紹介します。
「パナデリアが行く「美食の国フランスから来た味覚教育・味覚の一週間」(2013年の様子)
http://www.panaderia.co.jp/event_report/mikaku1week/index.html




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