朝から会場内で他のシェフと挨拶を交わす姿が見られたマルコリーニ氏。その大きな身体は、どこにいても目立ちます。「アトンション!(聞いてください)」と始まったセミナー。独特の少し高い声と、リズム感のある語り口調。常に手と身体と口が動き、会場が一体化して彼の世界に吸い込まれていきます。セミナー内容は、一昨年、昨年とチョコレートのピエスモンテでしたが、今年は「味わって欲しい」とのことからムース・オ・ショコラのデモンストレーション。マルコリーニ氏本人が作るムースを食べられるとは、本当にこのチケットはプラチナチケットだったようです。



 

彼のチョコレートの最大の特徴は、チョコレートをカカオ豆から自らの工房で作っているということ。自ら産地へ赴き、年間生産量が3トンほどの小さな農園からカカオ豆を仕入れることもあるそうです。今回使うチョコレートは、ベネズエラの3つの地域のカカオ豆をブレンドしたもの。またムース・オ・ショコラには色々な作り方がありますが、今回のものはサバイヨン(*1)ベース。そして驚いたのは、電子レンジを使ってサバイヨンを作ったこと!卵の中に沸騰させたシロップを入れ、状態を見ながら電子レンジにかけます。ゆるいスクランブルエッグ状になったものを漉し、それをミキサーで一気に立てる。目からウロコのテクニックでしたが、パータ・ボンブよりも簡単で軽く仕上がるため、これは絶対真似したいテクニックです。

 すっかり彼のペースに乗せられていると、あっという間にムースの出来上がり。試食は、ムース・オ・ショコラにフランボワーズのソルベを添えて提供されました。まったりとたクリーミーなムースの中に、際立つチョコレートの酸味と苦み。ソルベと共に食べると爽やかな印象に変化しました。

 現在ベルギーをはじめ、パリ、ロンドンに店舗を構え、精力的に活動をしているマルコリーニ氏。日本では既にショコラティエとグラシエがオープンしていますが、彼はこの他にコンフィズリエ(*2)、パティシエとしてのデュプロマを持っています。昨年末には日本で始めてジャムを販売し、あっという間に完売したそう。2月中旬以降に再入荷の予定だそうなので、ホワイトデー用に人気が出ることは間違いなさそうです。
     
(*1)サバイヨン・・・卵に砂糖を加え、温めながら泡立てたもの。
(*2)コンフィズリエ・・・ジャム・砂糖菓子職人