セミナー初登場「リシャール」のミッシェル・リシャール氏。リシャールといえばあの可愛らしいプリント柄を思い出しますが、その実体はあまり知られていないように思います。今回はリシャールの紹介と、デギスタシオン(試食)をしました。まず最初は、リシャールの歴史から。元々は1925年リヨンに創業したパティスリーでしたが、1987年に高級ショコラトリーとしてパリへ進出。トレードマークともいえるカカオバターを使ったプリント技術は「グラフィズム」と呼ばれるもので、フィリングを表現するためにパリ進出当初から施されているそうです。


今回来日したミッシェル・リシャール氏は2代目。ショコラトリーを営む家に生まれ、父の姿を見て育った彼は、長い時間をかけてショコラの哲学を培ったといいます。ショコラティエとして自信に満ちた表情で話すその裏側には、リシャールとして、そして彼自身がショコラティエとして積んだ長い年月があるのでしょう。



 「おいしいショコラは沢山ありますが、『どのようにおいしいか』はそれぞれ。カカオ豆の品種や製法によって違いはありますが、食べてみてそれを表現することが大切です」。そんなメッセージから始まった試食。まず参加者全員に白い小箱が配られ、その中には「プチリシャール」という小さなボンボンが4粒。プチリシャールはアロマ(香り)によって7つのグループに分けられた、リシャールを代表する商品。今回のものは、その中から4つのグループの商品を一つづつ詰め合わせた、試食用のスペシャルアソートだそうです。
 リシャール氏の指示により、まずはオレンジの模様のショコラから。まずその口溶けの良さが印象的で、その後に軽い苦みがあります。「どうですか?」とリシャール氏は参加者の感想を求たあと、このショコラについて解説をしてくれました。「これは「バルサミック(穏やかな)」グループで、穏やかな気分にさせるチョコレート。ベネズエラ北部で採れるクリオロ種のカカオ豆を使っています。皆さん穏やかな気分になりましたか?」と問いかけるリシャール氏。こうやって職人の話を聞きながら食べることほど、美味しく感じるものはありません。

リシャールというと外見の可愛らしさばかりを取り上げがちですが、今回の話から味のこだわりを聞く事ができ、色々な種類を改めて食べてみたくなりました。特にセンターがフルーツやキャラメルのクーリ(*3)になったものは、他では見かけないリシャールらしいもの。少しバタースコッチのような風味があり、日本人には馴染みやすいチョコレートのように思いました。こんな新しい発見も、このセミナーの醍醐味かもしれません。

(*3)クーリ・・・果物等を裏漉しして液状にしたもの