サロン・ド・ショコラ取材もひと段落し、いよいよパナデリアの本領発揮となるか?!
パティスリー、ブーランジェリー三昧のパリ後半戦のスタートです。





大役だったサロン・ド・ショコラ取材もなんとか終了。
昨日の、悪夢のドタバタ劇を清算する気持ちも込めて、ゆっくり座って(なんと初めて!)朝食をとることになりました。



8:30 優雅な朝食にふさわしいお店といえば・・・。
       そう、満場一致で「ラデュレ」へGo!




(淡いラデュレカラーに夢見心地)


ご存知、マカロンで有名なラデュレは、パリ市内に4店舗を構える老舗パティスリー。高級ブティックが軒を連ねる大通りに面したエントランスを入ると、左手にマカロンや生ケーキを並べたショーケース、そして右手には金や鏡で飾られた豪華な雰囲気のサロンが広がっています。
華やいだ雰囲気と待ち受ける朝食に、思わず興奮気味のパナデリア。
ところが、ふと周りを見ると、おしゃべりをしたり、新聞を片手にカフェを飲んだりと、思いおもいの時間を過ごすパリっ子たちの姿が。今やパリの観光名所でもある有名店とはいえ、昔から変わらない正真正銘のサロン・ド・テの姿がそこにはありました。


ショーソン  

ぷっくり黄金色にふくらんだ大きなショーソン!パリパリのパイ生地は、バターの風味が意外にもさっぱり。そのため、しっかりと酸味のあるリンゴの香りが際立ちます。
ここで(余計なお世話ですが)、パナデリアからの食べ方指南。

1.まずはナイフで上品にカットします。

2.ひと切れを頬張って、パリパリのパイとリンゴが生み出す、ストレートなおいしさを楽しみます。
3.今度は、事前にオーダーしておいたクレームシャンティ(泡立てた生クリーム)と一緒にいただきます。このクレームシャンティがとにかくおいしい!空気のようにふわっと軽く、絞りたての牛乳を思わせる自然な甘みは、日本ではなかなか味わえない密かなマストアイテム!ものすごく、おすすめしちゃいます。

4.そして、両方のおいしさをチェックしたら、後は好きな方で思う存分堪能してください。
クロワッサン オ ザマンド  

ごく薄めのシュークルグラスが上品にかかり、中にはクルミの風味が強い濃厚なアーモンドクリームが入っています。一般的なクロワッサンにアーモンドクリームというスタイルとは一線を画す、まさにパティスリーのクロワッサンオザオマンド。まるでお菓子のように、甘く深い味わいです。
パン オ レザン  

丸いセルクルにはめて焼き上げたと思われる、きっちりとした円形のシルエットが美しい。生地はサクサクというよりは、もっちりと密度があります。フランスでは定番らしいゴールドレーズンが入っているので、フルーティで軽い味わいが特徴。他にも、オレンジやレモンなどのピールが入っています。
イスパハン  

かつてはピエール・エルメ氏がシェフを務めたこともあるラデュレ。そのため、名前はもちろん、見た目もピエール・エルメのそれと瓜二つ。ラデュレ版は、マカロン生地がカリッと硬く、アーモンドの風味が濃厚なせいか、クラシックで力強い印象を受けました。そして、生地とは反対にバラ風味のクリームはトローッと柔らか!甲乙つけがたい2つのイスパハン、ぜひ両方を食べ比べてみてくださいね。
サントノーレ  

ショーソンのコメントでもご紹介したクレームシャンティがたーっぷり!そのフワフワした泡のような口どけの下に隠された、シュー皮の飴のカリッとした食感が軽快です。さらに、中央のクレームパティシエールがちょうど良いコクを与えています。


10:00 モンマルトルへ

ぎゅうぎゅうに詰め込んだスケジュールの都合上、後ろ髪を引かれながらも、ラデュレをあとに。電車に乗って、「アルノー・ラエール」のあるモンマルトルへ向かいます。
モンマルトルといえば、ユトリロやロートレックを始め、数々の画家に愛された坂の町。時代が変わったとはいえ、どこか憂いを帯びた細い階段やカフェのある風景は健在でした。そして、モンマルトルに来たら、やっぱり見ておきたいのがサクレクール寺院。ところが、サクレクール寺院のすぐ近くいるはずなのに、その近さゆえ(坂道なので上の様子が見えないのです)全くその姿を見ることができませんでした・・・。残念!



(風情ある街並み。あいにくの曇天もなぜか様になっています)




念願の「アルノー・ラエール」に到着

(通りからケーキ類がよく見える魅惑的な店構え)


今回予定していたパティスリーの中でも、楽しみにしていたのがここ「アルノー・ラエール」。「ペルティエ」、「ダロワイヨ」を経て、「フォション」ではピエール・エルメ氏に従事。その後、若干29歳で店をオープンさせたという経歴もさることながら、パリのお菓子に詳しい人から度々すすめられていたからです。
サロン・ド・ショコラ会場でもシェフにご挨拶をし、期待は高まるばかり。パティシエとしてはもちろんですが、ショーウインドウに飾られたボンボンと蝶のオブジェからも、ショコラへの意気込みが感じられました。


(ショコラのディスプレイ。色彩やデザインはさすがフランス)


「アルノー・ラエール」にはイートインスペースがないため、今日も通りのベンチで試食することに。パシャパシャと写真を撮ったかと思えば、おもむろに紙皿とフォークを取り出してケーキを食べ始めるパナデリア一行。曇天の下、全員が必死にメモを取りながらひたすら食べている姿、きっと道行く人たちから怪しまれていただろうなぁ(笑)。


(試食の風景。これって絶対異様!?)



ルシフ  

一番上のスパイスの効いたガナッシュはクミンやカルダモンの香りが強く、どこかカレーを思わせます。反対に、下はミルキーで香ばしいガナッシュ。ショコラを得意とするシェフならではの、遊び心のある組合わせ。
コクリコ  

鮮やかなピンクが衝撃的!さすがパリです。中は、ビスキュイとフランボワーズのムース、そしてフランボワーズのジュレという構成。周りを白いバタークリームが薄く覆っています。デザインもさることながら、ジュレのしっかりとした甘さと酸味にも、日本にない強さを感じました。
タンダンス  

不思議な形が興味をそそります。周りのアーモンドダイスはカリカリと香ばしく、中に忍ばせたクロッカン風のサクサクとした食感が楽しい。中央には、酸味の強いパッションフルーツのバタークリームが入っています。
エクレール ノワゼット  

クリームは、ノワゼットプラリネの風味や甘さが控えめで上品な味わい。バターの風味が濃厚なキャラメルがかかっています。シュー生地の塩味はかなり強め。



パティスリー密集地の6区へ移動し、「クリスチャン・コンスタン」へ

ショコラのガイドブックでは、4タブレットという高得点を持つショコラトリーです。
ちょっと違和感があったのは、店内は大理石を使用したかっちりと硬質な雰囲気なのに、お惣菜類も並んでいるところ。それから、ここにも袋入りのポワラーヌのカンパーニュがありました。ショコラトリーでも売られているポワラーヌは、やはり偉大です!


(チョコはもちろんお茶などの品揃えも豊富)




本場の「サダハル・アオキ」へ

01年のオープン以来、常にパリで注目を集めてきた「サダハル・アオキ」。昨年3月には、東京丸の内に凱旋帰国を果たし、やっと私たちもその味を口にすることができるようになりました。現在、パリに2店舗を構える「アオキ」。この日は、サンジェルマンにある1号店へ。


(見覚えのあるケーキたち。なんだか懐かしい!)


気になるケーキのラインナップは、日本とほとんど変わりませんでした。

“やっぱり、日本人のお店だからか、商品のことがよくわかるし、安心するなぁ”

と漠然と感じていた私たち。実はそれは、お店のスタッフの方たちが話す日本語にあったのです。
そう。当然といえば当然ながら、この日いたスタッフは全員日本人、そして商品のプライスカードにも日本語が!ここでは安心して、堂々と日本語で質問しちゃいましょう。




15:00 永遠の名店「ポワラーヌ」へ

日本ほど流行りすたりがないとはいえ、こんなにも変わらず愛され人気があるブーランジェリーは他にないのではないでしょうか?約200年もの歴史を持つポワラーヌは、16世紀から伝わる製法で作られるパン・ド・カンパーニュを始め、頑ななまでに伝統の製法を守ることでも有名。おいしさの骨子となる粉には、石臼で自家製粉したものを使用し、さらに原始の麦“スペルト小麦”を30%ブレンドしているのだとか。


(今や観光名所?やっぱり絶対外せない場所)


(力強く、表情豊かなパンたち)



到着したのは、午後3時頃。夕食のパンを買うためか、店内は地元のおばさまたちで大混雑。白衣(科学者のよう・・・)に身を包み、テキパキと動き回る年配の女性スタッフが、次々にパンやビスケットを並べていきます。
他のお客さんたちにもまれながら、私たちも夕食用のカンパーニュをゲット!素朴な粉の風味にファンの多いビスケットは、驚くほど焼き色がまちまちでした(予想はしていましたが・・・)。その色の違いは、まるでプレーンとココア!あきらめずに、じっくりと好みの色合いを探すのがポイントです。

クロワッサン  

さすがポワラーヌだけあって、粉の旨みが力強い!ふわっとやわらかめの生地は、バターの味は控えめ。とにかく、粉の味・風味・甘みを楽しみたいクロワッサンです。しっぽのカリカリしたところが最高。
タルトレット・オ・ポンム  

まわりがカリッと香ばしいパイ生地は、内側はもちっと程よい弾力。塩味がキリッと効いた生地に、甘いリンゴのシロップが染み込み、絶妙なおいしさを生み出しています。



ハチミツ屋「Les Ruchers du Roy」へ

(センスのよい明るいブルー。)


(アルプスの花のはちみつ。
自然そのものの豊かな風味が活きています)



予定のスケジュールも何とかクリア。後は、自分たちのお楽しみタイム!
まず向かったのは、鮮やかなブルーの外観が目印のハチミツ屋さん「Les Ruchers du Roy」。壁一面にずらりと並んだハチミツは、白濁したもの、茶色がかっているもの、黄金色のものと様々。その違いを伺うと、ミツバチの生息地域によるものなのだそう。確かに、ラベルを見ると“アルプス山脈の花々”、“シャンパーニュの花々”という風に、フランスを中心とした地名が並んでいます。ハチミツは普通、フィルターを通すことによって透明感が増し、その代わりに風味が損なわれるそうですが、ここのハチミツは見事なまでの白濁ぶり。常温の状態では、トロトロにはならずスプーンですくえるほどの硬さです。旨みが濃く、でも嫌な風味がない、本当に貴重なおいしさです!




困ったときの「ボンマルシェ」


何でも揃うデパートは、旅行者には欠かせない強力な味方!広く浅くですが、手軽にパリの食文化を勉強できる場所でもあります。中でもボンマルシェはお菓子類が豊富。パナデリア一行は、会報誌でもそのおいしさをお伝えしたフェルベールさんのワインとバラのコンフィチュール「ジュレ・ド・ヴァン ゲヴァルツトラミネール ア ラ ロゼ」を求め、コンフィチュールの棚を大捜索。残念ながら見つかりませんでしたが、ミラベルやワインの(バラなし)コンフィチュールをGetしました。



(幻の!?コンフィチュール。クリームチーズに合うんです!)



それから、野菜やフルーツ、製菓材料にドライフルーツなど一通り見たあとは、乳製品のコーナーへ。日本ではなかなか手が出ないし手に入らない、エシレやイズニーのバターやクリームがホンの1,2ユーロという値段で並んでいます。「えー!まさか、ホンキで日本に持って帰るつもりなの?!」という非難を尻目に、大量のバターとクリームを購入したスタッフYでした。


(上から・・
レスキュール:サラッとした口どけが特長。
味は強いクセやコクがなく、
そのままだとやや物足りない感じも
イズニー:コクとクリーミーさが濃厚。
生クリームのようなまろやかな風味です
エシレ:特有の発酵風味がしっかり。
パンがさらに美味しくなります! )



そして、忘れてはいけないのが、おみやげに頼まれていた“タラマ”。私たちの帰国を日本で待つ、スタッフOからの依頼の品です。「日本人なら絶対好きな味です!」と目を輝かせていたO。ちょっとしたおつまみにも良さそうな、タラコやカラスミのような魚卵系のまったりしたクリームでした。




バターを求め「ダローザ」へ

オリビエロランジェのガレットから高級生ハムまで、地方の逸品が手に入る高級食材店。ピエール・エルメ氏が今一番のお気に入りの“Le Beurre Bordier”というバターがあると言う情報を耳にして、やってきました。

「あったー!」

と嬉しげに手にとると、隣には同じメーカーの“海藻バター”なるものが・・。

「海藻?えー!あの、ワカメとかコンブとかの海藻?どんな味なんだろう・・・」

と言うことで、こちらも購入。夜、みんなで試食することになりました。


(意外にも見た目はシンプル。気になるお味は?)



19:30 「ジェラール・ミュロ」へ。

またまたお昼も食べていないのに、気がつけばもう7時半。ジェラール・ミュロでお惣菜を買って帰ることにしました。


(タルト類の種類が豊富。ツヤツヤと輝くよう!)

ジェラール・ミュロといえば、日本ではケーキのイメージが強いと思いますが、パリではケーキ、ショコラ、パン、お惣菜がバランスよく販売されています。きっと、どれもが毎日の食卓に欠かせない存在なのでしょうね。店の奥には、穏やかな表情で様子を見守るミュロ氏の姿がありました。(ハリソン・フォードに似ていると思うのは私だけでしょうか・・・)


(似てませんか?ハリソン・フォードに)



20:30 ホテルにてパーティ!

“今夜は軽くお惣菜でも買って、ホテルでささやかな食事”という計画だったのに、いざ並べてみるとパン、チーズにハムにお惣菜・・・と大量の食べ物。にわかに、最後の夜を飾るパーティとなりました。


(ベッドサイドの台がテーブルに変身。なかなかでしょう?)



<ポワラーヌ>
パン オ セーグル  

粉の風味が非常に豊か!すでに薄くスライスしてあったものを購入したのですが、パサついた感じは全くなく、しっとりモチモチとした食感。じんわりと広がる酸味と粉の甘みが心地よく、バターやクリームとの相性も抜群です!
カンパーニュ  

言わずと知れたポワラーヌを代表するパン。ガリン、ガリンとしっかり焼きこまれたクラストが香ばしい!クラムはセーグルよりもやや軽めですが、しっとりモチモチとした食感はしっかりとあります。粉の香りが強く、軽い酸味がなんとも微妙なバランスで、チーズやハムなど他の食べ物とあわせると、旨みが倍増します。


<ジェラール・ミュロ>
ポアロ葱とシェーブルチーズのキッシュ  

シェーブルチーズの力強い旨みが見事にいかされています。パリでよく見かけるポアロ葱の甘みが良いバランス
アーティチョークのマリネ  

ヨーロッパの人ってどうしてこんなにアーティチョークが好きなのでしょう?でも、このホックリした食感とほのかな甘さは、他にないもの。ビネガーの酸味が上品でした
エビのディルクリームあえ  

プリッと弾力のある大ぶりのエビを、軽い酸味のクリームで。たっぷりと入ったディルの香りが爽やか!




(エルメお勧めのバター“Le Beurre Bordier”
思ったより海草がリアルでした)


ピエール・エルメ氏おすすめのバターと聞いていたので、さぞかし甘みとコクが強いのだろう・・と思っていたら、意外にもあっさりとした味わい。エシレやイズニーとは違う、サラッと軽い口どけと、クセのない軽い酸味と甘みがありました。焼き菓子などに使うと、また違った風味が楽しめそうです。 ちなみに海藻バターは、名前の通り赤や緑の海藻がたっぷりと練りこまれたもの!かなり磯臭さが強く、海水のような塩気があり、パナデリアでは賛否両論でした。お魚料理のソース代わりに使ってみてもおもしろそう。




(ボンマルシェで購入したクリーム類その1
エシレのシングルクリーム。軽い酸味が病みつきに…)



(ボンマルシェで購入したクリーム類その2
イズニーは、ちょうど先の2つの中間的なおいしさ。
とってもコクがあります)



(ボンマルシェで購入したクリーム類その3
タラコのようなピンク色をしたペースト。
カニ入りなど色々な種類がありました)


ジャージーのダブルクリームは、黄色味が強く、まるでバターと生クリームを合わせたような味わい。バゲットにつけるのはもちろん、ハチミツとの相性も絶品! エシレのシングルクリームは、軽い酸味が特徴。カンパーニュなど、酸味のあるパンのほか、ハムにもぴったり。




今日もお腹いっぱい!いよいよ明日は最終日です。




〜 Shop Data 〜
<ラデュレ>
16,rue Royale 75008 Tel:01.42.60.21.79
<アルノー・ラエール>
53,rue Caulaincourt 75018 Tel:01.43.57.68.08
<クリスチャン・コンスタン>
37,rue d’Assas 75006 Tel:01.53.63.15.15
<サダハル・アオキ>
35, rue de Vaugirard 75006 Tel:01.45.44.48.90
<ポワラーヌ>
8,rue du Cherche-Midi 75006 Tel:01.45.48.42.59
<Les Ruchers du Roy>
47,rue du Cherche-Midi Rive Gouche,75006 Tel:01.45.44.19.85
<ボンマルシェ>
38,rue de Sevres 75007 Tel: 01.44.39.81.00
<デニスアカボ>
30 rue Fontaine 75009 Tel: 01.48.74.59.55
<ジェラール・ミュロ>
76,rue de Seine 75006 Tel:01.43.26.85.77





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