Text by Chiemi Sasaki  


レトロで風味豊かなバタークリームの「クラッシックバターノエル」やショートケーキ「フレーズノエル」〜昨年開催したクリスマスケーキを楽しむ会で、ひときわ会場を和ませてくれたのが「コロンバン」のケーキでした。あの温かみあるお菓子はどんな風に作られているのでしょうか?

その現場を拝見したく、都心から車で北へ一時間、埼玉県加須市(かぞし)にあるコロンバン埼玉工場を訪ねました。

実はここ、以前パナデリアが訪ねた生菓子を生産する東京工場と、焼き菓子生産の古河市・総和工場を閉鎖し、効率化を図るために統合された新設工場。2013年6月の稼働から3年経った今年、ようやく新工場見学の運びとなったのです。

広大で視界の良い敷地に、地上2階建て、箱型の工場らしい佇まいの中、入り口になる一角だけがブルーの柱とレンガ壁、赤いテントルーフとアール窓という、洒落た外観が目をひきます。

埼玉工場外観


「フランス菓子のイメージを大切に、お菓子を作るところですから、ぬくもりを持たせたくて」と広報の白石亜弥子さん。ひと目でお菓子屋さんの工場とわかるためか、ショップと間違えていらっしゃる方も多いのだとか。

お菓子屋さんらしい外観を取り入れたエントランス部分。赤、青、白のトリコロールがフランス菓子のコロンバンらしい


建物に入ると、すぐに靴を履き替え衛生チェック。会議室で全身を覆うウエアを纏ったら工場へ。でもいきなり入場はできません。エアシャワー、粘着ローラー、洗浄、アルコール消毒を全てこなしてはじめて扉が開く仕組みになっているのです。のっけからハイテク設備に驚かされましたが、菌や異物混入を避けるための工夫は機械だけに頼っているわけではなく、毛髪落下を防ぐために、毎日の洗髪とブラッシングを義務付けていたり、持ち込み禁止物のチェックをしていたりと、人による衛生管理も徹底しているそうです。

それから製造エリアには窓がありません。外部から虫や汚染物質が入り込まないようにと工夫された設計だそうです。さらに換気は外気処理室のフィルタを経由して各フロアに送られるという仕組みで、徹底した衛生管理環境が作られています。当たり前のことですが、食品を扱う工場において安心安全は最重要事項。配慮に越したことはありませんね。

それでは工場内を見てみましょう。2階の生菓子製造フロアには、開発試作室や生地の焼成、デコレーション、チョコレート室などがありました。意外だったのは大型機材での流れ作業ではなく、街のパティスリーと同じような厨房機材で、職人が手作りをしていること。あのクリスマスケーキはここでひとつひとつ手で仕上げられていたのですね。

ナッツを選別。人の目で確かめながらの手作業

一方、1階の焼き菓子フロアには、トンネルオーブン、バンドオーブンなどのハイテク最新機材を配し、全国のお土産やノベルティとして人気の高い焼き菓子が効率よく製造されていました。手に持っても溶けない1口サイズの「焼きショコラ」は一時間あたり1万2千個、サクッとしたラングドシャ・クッキーでなめらかなチョコレートクリームをサンドした定番「メルヴェイユ」も1万2千枚が焼けるのだとか! 箱詰めまで全自動の「焼きショコラ」に驚いたかと思えば、「フールセック」は手作業で型を抜き、焼成の後、一枚一枚ジャムがけと糖衣がけをして完成させるなど、手間のかかるものも大切にしている姿勢に感心しました。


一枚一枚型抜きするフールセック。衛生に配慮しゴーグルと長い手袋をつけて

ジャムがけと糖衣がけをされたフールセック

ふわふわ、サクサクっとした食感が魅力の「原宿焼きショコラ」。出来上がる様子を工場で見ていると、さらに愛着がわいてきます

スイート、ミルク、コーヒーの3種のチョコレートクリームをラングドシャ・クッキーでサンドした「メルヴェイユ」


感心、といえばスタッフの皆さんの元気な挨拶。工場内ですれ違う度に、必ず皆さん「こんにちは」と声をかけてくれるのです。「安全で安心なお菓子づくり」はこの挨拶、コミュニケーションがあるからこそできるんだなと思いました。
人を笑顔にするもの作りの現場でとても大事なものを見せていただいた気がします。

1924年(大正13年)にコロンバンを創業した門倉國輝氏の像

1935年(昭和10年)の元旦に、本社(渋谷)工場で記念撮影した様子。翌年1936年には大阪支店を、翌1937年には名古屋支店を開設するという会社の拡大期にあたる時期で、社員の皆さんの夢と希望に燃えている様子がうかがえます。そしてこの時の精神は、80年以上たった今もなお引き継がれている



お菓子を通じて日本を明るくするモットーのもと、ハイテクと手作業の絶妙なバランスでお菓子が生み出されるコロンバン埼玉新工場。

100周年に向けて資料室が整った暁には、改めて昔の貴重な洋菓子の歴史的資料を拝見に伺いたいと思います。


コロンバン 公式サイト
 http://www.colombin.co.jp/

パナデリアが行く コロンバンの東京工場に行ってきました
 http://www.panaderia.co.jp/event_report/2013colombin/index.html

パナデリアが行く 洋菓子コロンバンのバタークリームケーキ
 http://www.panaderia.co.jp/event_report/colombin/index.html




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