第1回 基礎の生地へ
第3回 ハード系生地へ

〈作るパン〉
・クロワッサン生地とそのアレンジ
・ブリオッシュ生地とそのアレンジ
・パン生地とそのアレンジ



基礎コース2回目となる本日のテーマはリッチな生地です。
フランスパンだったら、粉、水、塩、酵母だけで出来てしまいますが、リッチな生地には、バターや砂糖、そして卵といった素材がたっぷり入ります。つまり、味もリッチなら、素材そしてカロリーもリッチというわけ。これは、おいしくないはずがないですよね!さて、今回はどんなおいしそうなパンができあがったのでしょうか?

加藤先生、今日もよろしくお願いします!


リッチな生地の代表格といえば、そう、クロワッサン。皆さんもご存知の通り、クロワッサンには大量のバターを使います。ところが、国内のバターは不足状態・・・。そこで、今回使用するのがこれ。加藤先生の写真の下に見える金色の紙に包まれたバターです。これは、フランス産A.O.Pバターの“レスキュール”! あの「ドミニク・サブロン」や「ローズ・ベーカリー」でも使われている高級品。これをクロワッサン生地の折込みに使うということで、文字通り、いえそれ以上にリッチな生地になりそうですよ。

クロワッサン生地のミキシングは、オールインミックス方式。
すべて一緒にミキシングしていきます


「今回はかなり固めの生地です。皆さんは、何で生地を捏ねていますか? 家庭用ニーダーの場合は、モーターが焼けやすいから気をつけてくださいね」
加藤先生は家庭用ニーダーなどでもパンを作るので、プロと家庭、両方の作り方がわかるのがいいところ。ミキシングによる熱上昇についても、経験を踏まえて解説してくれます。

ミキサースイッチのON/OFFとかき落としの作業は必ず一人で! 手伝ってあげると逆に危ないそうです


「はい。じゃあ、誰かボウルの周りを払ってください」
ミキシングのコツも体で覚えるのが加藤流。ミキシングの際は、途中で1,2度止め、周りについた生地をしっかりとかき落とします。簡単なことですが、均一な生地を作るために欠かせない作業。

捏ね上がった生地は、一度麺棒で平らにならします

「今日はこのシーターで伸ばしますよ〜」
クロワッサンの難しさは、なんと言っても折込みの作業。生地でバターを包み、3つ折りを3回繰り返すことによって、あのハラハラ・サクサクが生まれるのですが、手ではなかなか手早く均一に伸ばすことができません。

じゃーん! クロワッサン生地に欠かせないのが、この「シーター」。業務用なのでかなり大きいのが難点。「もっと小さいのがあったらなぁ」と皆さん、うらやましそうでした

まず、伸ばした生地でバターを包みます。
バターがはみ出さないように注意!

シーターの上に置き、スイッチON!
ローラーの間を通って左に流れていきます


生地が戻ってきました! だんだん、薄く長くなってきます


何度か往復させると、シーターから落ちそうなほど長くなりました! 最終的には4mm厚さに整えます


しっかり伸びたら3つに折りたたみます。冷凍で生地を冷やしながら、この作業を合計3回繰り返しバターと生地の層を作ります


冷やした生地を、再びシーターで3mm厚さに伸ばしたら、次はカットです。

この生地を二等辺三角形にカットするのですが、ここで登場したのが加藤流丸秘テク! 見えるでしょうか? L字になったメジャーの先端を利用し、サイズを測りながら目印を叩き込むという熟練の技です。これは、便利!

縦18cm、横10cmの三角形にカットしたら、底辺の部分からクルクルと巻いていきます。少し引っ張りながら丸めるのがコツ

皆さん、とても上手に成形できました。すばらしい!

30℃のホイロに1時間ほど入れたら、塗り卵をして焼成。刷毛の根元部分を持って、やさしく塗るのがポイントです

ランチは焼き立てのクロワッサンでサンドイッチ! サクサク、ハラハラの軽い食感で香りもよく、1人2個完食です


クロワッサンだけでも大変ですが、今回はブリオッシュ生地と菓子パン生地もあるので大忙し。
ところで、今回のブリオッシュ生地、菓子パン生地は、ともに「加糖中種製法」ということなのですが、加糖中種製法っていったい、どんな方法なのでしょう?
「グラニュー糖、卵、牛乳などが入った中種で、この方法で作ると生地がしっとりと焼きあがります。パネトーネなんかも同じ方法ですよ」
バターや卵の多い配合のブリオッシュですが、意外にパサパサとした食感のものも多いと思いませんか?実は、本国フランスをはじめ、加藤先生が教えたフランス人にもパサパサ派が多いのだとか。
「フランス人には良くても、日本人はパサパサした食感は嫌いでしょう? だから、中種を使います。中種は事前に準備する必要があるけれど、手間隙かけてあげた分だけおいしくなります。そうそう、中種と老麺を同じだと思う人がいるけれど、まったく別の考え方。老麺はすでにダレて力がないのに対して、中種は強くて力もあります」
油脂を入れたら、普通より早い“中〜高速”で1、2分間ミキシング。短時間で生地と油脂を合わせることでパサつきが抑えられるそうです。


パンチを終えたブリオッシュ生地。油脂が多い生地はミキシングしてもつながりが弱いため、パンチで強さを出します

ブリオッシュ生地のアレンジ“ブリオッシュ シュクル”。指でくぼみをつけたところにバターを乗せ、グラニュー糖を振りかけて焼成します

オレンジピールを乗せてクルクルと巻いた甘〜いブリオッシュ



午後のラストスパートは、ブリオッシュ生地と同じく、加糖中種製法で作る菓子パン生地。
「菓子パンはあまりヒキが強いと、中の具材と合わないでしょう? だから、20%ほど薄力粉を加えます」
他の具材と合わせることが多い菓子パン生地は、味はもちろんですが、食感が大切です。

「練習しに来てるんだから、遠慮しないでどんどん触って覚えてよ〜」と加藤先生。生地の状態は、指でチェックします

菓子パン生地のアレンジとして教えていただくのは、王道のあんパンとクリームパン、そしてハイジの白パン。具材も手作りすることが多い加藤先生ですが、今回の餡だけは特別。パナデリアがいつもお世話になっている、大田区上池台の「内藤製あん」さんにご協力いただき、なんと5種類の餡を用意していただきました。つまり菓子パンのアレンジは、粒あん・こしあん・フランボワーズ餡・抹茶餡・スイートポテト餡のパンを加えた7種類! これはなかなか大変です。

まずは、定番のあんパンから。中に入れる餡40gを計量し丸めます。この1種類だけでも、かなりの量があるような・・・?!

あんべらを使って生地に餡を包み込んでいきます。包あんが苦手・・・という方も、これだけ特訓すれば克服できるハズ!

抹茶餡を包んだ生地。発酵したところにハサミを入れて、こんなにかわいらしい成形に!

続いての特訓はクリームパン。麺棒で伸ばし、クリームを包み込んでいきます

菓子パン生地のバリエーションだけで、こんなにたくさん出来上がりました




今回作ったパン


クロワッサン



折込みに仏産バター“レスキュール”を使った贅沢なクロワッサン。しっかりと発酵による旨みを感じるパン屋らしいクロワッサンですが、サクサクとした軽く繊細な食感もあります。これが自分で作れたらかなり嬉しい!



ブリオッシュ生地のアレンジ



丸く成形しただけのものと、バターと砂糖でよりリッチになった“ブリオッシュ シュクル”、そしてオレンジピールを巻き込み紙型で焼き上げたお菓子パンの3種類。加糖中種製法の効果で、かなりしっとりとした柔らかな食感になりました。



菓子パン生地のアレンジ





あんパン5種類、クリームパン、そしてハイジの白パン。ちょっと感動したのは、同じあんパンでも成形が変わるだけでかなり印象が変わること。さらに、塗り卵をするか粉を降って仕上げるかでも、まったく違う印象に。
生地は、加糖中種製法+薄力粉20%の効果により、歯切れよく、しっとりソフトな食感。どこかお饅頭を思わせる一体感がありました。オールマイティな生地だけに、味や食感にはこだわりたいところです。


 



クロワッサン生地、ブリオッシュ生地、菓子パン生地と、それぞれかなりの量をこなし、成形の特訓もかねたレッスンになりました。最後は、大きな袋にパンを詰めてお持ち帰り。皆さんお疲れ様でした。
最終回となる次回は、ハード系のパンを勉強します。どうぞお楽しみに!



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