シニフィアン・シニフィエのあんぱんといえば、「パン・ジャポネーゼ」。土日限定で、中身を変えて販売されている人気の商品です。おやつパンが少ないシニフィアン・シニフィエの中で、少々異色を放つ商品ですが日本人の舌を知り尽くした志賀シェフだからこそ、あんぱんへのこだわりは深いもの。まずは生地作りから。




粉には、農林61号他、2種類の粉を配合。薄皮にするので、たんぱく量の少ない農林61号を、若干多めに配合しても大丈夫。種には、イースト、ホップ種に加え、米麹をそのまま入れます。

「米麹は、神田明神の“天野屋”のものを使っています。ホップ種と米麹は一緒に使うことによって、より自然な味わいを醸します。麹は、酵母の一部としてだけでなく、ツブツブを残して食感のアクセントにします」

粉や副材料だけでなく、イーストや発酵種が醸す風味も、調味料のように味作りの一要素として積極的に活かすというのも志賀流。パン・ド・ミに使用する種では、以下の味覚要素がプラスされると考えられます。




あんぱんの生地には、砂糖、卵、乳製品など、多くの副材料が入ります。低速で水分を粉に浸透させつつ材料を混ぜ込み、しっかりつなげてから最後に油脂を加えてミキシングします。

「砂糖やバターはグルテンの形成を妨げるので、加える前に、しっかりと生地のグルテンを出しておくことが重要です。一気に加えず、小さくカットしたものを何度かに分けて馴染ませてください」

乳製品やバターをたっぷり練りこんだ生地は、淡く黄色みがあり、リッチでおいしそう。近づいてみると、表面に麹のツブツブが目で確認できます。




低温で一晩寝かせた生地は、かなり柔らかいもの。そのまま室温においておくと生地がだれて作業性が悪いので、あらかじめ0℃くらいに冷やしておいてから分割の作業を行います。




今回使用する餡は、5種類。抹茶、粒餡、こし餡、そして焼き栗、ラムレーズンという変わり種も。上品な甘さで、豆本来の自然な味わいを生かした“内藤製あん”特注の餡に注目。中でも人気だったのがラムレーズン。白餡のほっくりとした優しい味わいと、ラムレーズンの濃厚な甘みが好相性。麹入りの和テイストの生地とどのようにマッチングするか楽しみです。




講習会で作ったあんぱんの数は、なんと220個!!ここは、参加者みなさんの力が必要です。講習会場は、一転パン屋さんと化してみんなで一気に包あん作業に取り掛かります。包んだものは、指で穴をあけたり、ゴマをふったりと目印をつけますが、大勢で作業していると途中で中身がわからなくなってしまうという事態も・・・!
「ま、食べてからのお楽しみということでいいか〜!」
「これでは、ロシアンルーレットならぬ、ロシアンアンパン?!」
おしゃべりが弾みながらも、皆さんの手元が素早いのはさすが。220個のあんぱんは驚きの速さですべて成形され、最終発酵へ・・・。




発酵を終えたあんぱんは、生地が少しだれた感じになり、薄皮あんぱんの様相に。230度で8分、短時間でさっと焼きあげます。




こんがりと焼きあがったあんぱん。生地は薄皮といえども、生地の味わいもしっかり実感できるもの。キメ細かな気泡を抱いた生地は、しっとりと優しい甘みが広がり、餡の自然な味わいを引き立てます。驚くのは口どけのよさ。舌の上で、餡と共に生地が消えていく感じが、なんともいえない心地よさ。麹のツブツブの食感が新鮮で、なんだかおはぎを食べているような感覚にも。実は「ごはん党」という、志賀さんらしいアイディアです。甘さは控えめながらも、栗や抹茶など素材の味を活かした餡と、生地の組み合わせの妙は、シンプルながら完成された料理のようでもあります。





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