期待以上! 「レ・クレイエール」でのランチ


翌朝、ランスへはややゆっくり目に出発した。ランスの地方菓子を見るという目的もあったが、最大のイベントは、「レ・クレイエール」というレストランでのランチだ。土曜ということで、通常のランチコースはなく、昼からディナーに匹敵する贅沢な食事をとる予定で、気合を入れて向かった。


ランスの街にあったおしゃれなショコラティエ。ここにも、他の店にも、シャンパーニュをつかったチョコレートのお菓子が売られていた。ブション(コルク)という名なのだが、同じ名のお菓子はボルドーにもあり、通常のワインとシャンパーニュではコルクの形が違うので、このお菓子の形も違うのが面白い


パリを出て、車で北に1時間ちょっと。到着したレ・クレイエールは、気品にあふれた構えで、迎えてくれたサービススタッフも、絵にかいたような紳士


迎えてくれたスタッフの後に続くと、そこにはゆったりとしたサロンのようなダイニングルームが広がった。
数種類あるグラスシャンパーニュから一つを選んで、渡されたメニューを開いていたら、ここで働いているというコックコート姿の日本人がこちらにやってきてメニューの説明をしてくれた。


このレストランで10数年働いているという馬田さん。丁寧に、メニューにある料理の説明や、メニューに出ていない本日のお勧めを教えてくれた。また、同じ敷地内にあるカジュアルレストランも案内してくれた.これはそこでの集合写真。中央左が馬田さん


生牡蠣に、エクルビス(ザリガニ)のスープ、メインには鹿が良さそう……。食後にはチーズのお料理もお勧めと言うから、これもお願いしてしまおうか。料理のオーダーを伝え終わると、次はシャンパーニュ選びだ。渡されたワインリストは当然ぶ厚く、ものすごい数のシャンパーニュがあったのは言うまでもない。
ちょうど東京で、「どこかのシャンパーニュメゾンを見学できたらいいね」なんて話しながらネットを見ていた時に出てきた小規模なメゾンのものを発見。迷い出したらきりがないので、今日の一本はそれに決定。

無事にオーダーを終えて、キャビアをまとった生牡蠣など食べ始める。ふくよかで、ほんのりクリーミー、ミネラルたっぷり。ジュレのきれいな酸味。ううん。リッチなシャンパーニュと全く同じじゃないか。もう最高だ。
エレガントに装うマダムまゆみとムッシュ三宅も、満足の笑顔を浮かべている。
「“おいしいもの”は一人占めしたくなるけど、“本当においしいもの”は共有したくなるよね」
と、マダムまゆみが、わたしの頼んでいない料理を一口くれたりもした。言っていることはよくわかると思った。


最初に出てきた、生牡蠣。ジュレの中にキャビアが入っているのが贅沢。海を感じる塩味とミネラル感がシャンパーニュにぴったり


濃厚だけれど、もたれるような感じは少しもない、キジのスープ。さすがはシャンパーニュに合うように、どの料理もどこかに必ず軽やかさや透明感がある


エクルビス(ざりがに)のスープは色もきれい。甲殻類独特のいい香りで、想像以上にふわっと軽めのテクスチャー


と、そんなことをしていたら、わたしの隣に座っているユカコに、サービススタッフの男性がにこやかに話しかけてきている。ユカコはいつでも一番若く見えるらしく(実際には私と同い年だ)、
「マドモアゼル」
と、まずはユカコがちやほやされる(本当は結婚もしているれっきとしたマダムなのにっ)。
しかしさすがは一流店。私の嫉妬に気づいたのか、しばらくして、わたしのほうにも、ユカコとは別のサービススタッフがにこやかについたのだ。そして彼らは
「僕の担当はきみ」
と、お互い負けじと、競い合うようにユカコとわたしにサービスを始めたのである。フランス語で食材の呼び方を教えてくれたり、真っ赤なバラをくれたり!
「僕は君の先生」といって、ユカコ担当のサービスマンは、ユカコには親切に教えるフランス語を、決してわたしには教えてくれない。かと思うと、わたし担当のサービスマンが手にした真っ赤なバラは、わたしにしか渡らないのだ。えへへ


ユカコ担当のパトリック、わたし担当の眼鏡の彼(薄情なわたしは名前を忘れてしまったのである)も交えて、ばっちり記念撮影を


そんなやり取りがあまりに楽しくて、大笑いのうちに食事は進んでいった。エクルビスのスープも、見事な火入れの鹿の味も文句なかったし、ムッシュ三宅が大絶賛した36か月を経たコンテチーズに人参やクミンと合わせたお皿は本当に最高だった。
デザートももちろん文句なし。プティフールとして出てきたミルフィーユのおいしかったことといったらない。


メインにはしっとり焼いた鹿肉が。さすがにこれは力強い味わいだが、この頃にはシャンパーニュもどんどん開いてきて、お料理に負けないほどパワフルに


36ヶ月熟成のコンテチーズを薄くスライス。この旨みとにんじんの甘さ、クミンのオリエンタルな香りがよく合っていた






パンフルムースを使ったデセールなど、フルーツを使ったものや軽いキジのものはシャンパーニュにもよく合って、軽やかな食後

ワゴンサービスのプティフールは嬉しい。サクサクしたミルフィーユなどもチョイスできて、ついついまた調子にのってしまう・・・・・・だってどれもおいしいのだから!


しかしなんといってもこの店の魅力は、レストランとしての楽しさ、完成度の高さだ。スタッフ全員のプロ意識が半端ではなかった。フレンチ初心者から食べ慣れた人まで、誰にでも勧めたいと心底思えた店だ。


ランチを終えたあとは、レストランで紹介してもらったシャンパーニュメゾン「ラ・マルティエール」を見学。試飲やお買い物も



再び車を預けていた「レ・クレイエール」に戻ると馬田シェフが再登場。厨房やワインセラー、敷地内にあるカジュアルレストラン「ジャルダン」などを見学させてくれた。「ジャルダンで夕食とっていきたいな」というマダムまゆみの言葉は残念ながら却下。さすがにそれは食べすぎでしょう……


帰りには、ランスの街のクリスマスマーケットを見学


パリに戻ったのはもちろん夜。明日は日曜日で、週に一度だけ開催されるビオマーケットがある。午前中の予定はこれで決まり!