取材・文 佐々木 千恵美  



パナデリアが行くで、毎年紹介している“ガトー・ア・ラ・ブロシュ”の会。プロのパティシエが薪火で焼くフランス版バウムクーヘンとお料理のイベントを今年も4月に開催しました。

(この会の経緯を知りたい方は、過去のレポートをじっくりご覧ください)

毎年頭を悩ませるのがお天気。季節の変わり目でもある4月の中頃は、暑い日が続くと思ったら急に雨風で冬が戻ったように寒かったりと、予報も日々変わるので、当日の天気は気をもむところ。9年間やってきて一度だけ大嵐に当たってしまい、その年は予定を変更し、ガトー・ア・ラ・ブロシュなしの室内プログラムになりました。そのとき悔しい思いをした方が、今年こそと参加表明されていたので、なおさら荒天にはなってほしくない。念力が天に届いたのか、前日の予報では傘マークだったのが、直前には取れました。

朝10時前、上郷森の家バーベキュー場に集合したメンバーは、いつも通り段取りよく準備を進め始めました。

ガトー・ア・ラ・ブロシュは「ラ・スプランドゥール」藤川浩史シェフが、お料理とデザートは「オ・プティ・マタン」武井晴峰シェフが中心となっての進行。一般参加者は、それぞれのチームを手伝ったり見学したり、おしゃべりしたり、次々出来上がる美味を頂きながら、新緑や小鳥のさえずりにリラックスしながら一日を過ごします。

さあ、今年もガトー・ア・ラ・ブロシュから見ていきましょう。
炉のセッティングはすでに手慣れたもの。広葉樹の薪火でじんわり火入れしていきます。一本目はプレーン生地にオレンジピールを混ぜ込んだもの。
2本目は昨年同様、特別に提供いただいたベルナッションのカカオプードルを使った贅沢なカカオ生地です。毎年感心することですが、20個分の卵白でメレンゲを手立てするパティシエの力量ってすごい。トライさせてもらいましたが5分立てくらいのところで初参加のショコラティエ男性二人にバトンタッチ。息の合った仕込みに見とれてしまいました。パティシエたちのチームワークで焼きも今回は順調です。


手づくりの串とコーンにアルミホイルを巻き付けて生地を焼く準備。

初参加のショコラティエ男性二人は軽々と泡立て、生地作りをこなしてくれました。

焼きを見極める藤川シェフ。

コーンを回す人と生地をかける人の息を合わせ、頃合いを見て生地で年輪を重ねていく。


ベルナッションのカカオプードル提供者である糸井寿史さんは、更にボナのクーヴェルチュール1sブロックをくださいました。さて、何を作ろうと事前にシェフと軽く相談はしていましたが、出来上がってきたものを見て感激。カカオプリンとカカオロールの2品。シンプルだけど品よくまとめられていてさすがです。こんなスイーツがBBQ場で食べられるなんて、毎年のことながら贅沢。屋外で食べると一層美味しく感じるのですよ。きっと自然光と美味しい空気のおかげでしょうね。準備もあるのに事前に仕込んでくださりありがたい限りです。

ボナのクーヴェルチュールを満喫。ショコラプリンは滑らかでありながら濃厚なカカオ風味が後をひく。

カカオロールにはクリームと生地の間にも薄いガナッシュが。そのおかげでエッジのきいた味わいに。上のコポーもボナのクーヴェルチュールと贅沢。


一方、料理はというと、今年もメインはジゴダニョ(仔羊モモ肉)ロースト。藤川シェフのテーマがガトーアラブロシュなら、武井シェフの定点観測はこれ。塊のまま串に巻いて焼くところは考えてみたら共通! 甘いのと塩味の串焼き(ブロッシュ)、これぞ会を重ねていく醍醐味です。

炉の火力を操りながら、子羊に火入れする武井シェフ。

今年も中は見事なロゼ。そして塊肉のおいしさは格別。


その串の下にかかった鍋には仕込み済みのスープ・ド・ポワッソン。ルイユソースをつけたバゲットを浮かせます。これが想像を絶する美味しさで、お代わり希望者続出。その後に作ったレモンのリゾットの爽やかで透き通る食味ったら…。元料理人の武井シェフ、半端じゃありません!

ジゴダニョを焼きつつ、スープ・ド・ポワッソンを温める。

スープ・ド・ポワッソンには自家製ルイユソースを絡めて。

レモンの皮と果汁で風味づけたリゾットは女性陣に大人気。


手づくり道具が次々登場するこの会。武井シェフの炉に何やら耐火煉瓦が両端に積み上げられ、天板がかけられました。ひょっとして即席オーブンでしょうか? 一昨年までは蓋付きの鍋を使ってピッツァを焼いていたのですが、前回から一歩進んで輻射熱を取り込み焼き上げるようになったのです。そして今年はピッツァもフランス式。アルザス地方名物タルトフランベ3種を焼きました。その具がこれまた凝っていて、オニオン&ベーコンの定番にはじまり、自家製シュークルート&ソーセージ、りんご&キャラメルといったデザート版まで楽しませてくれました。

タルトフランベ生地にオニオン&ベーコンをのせたら窯へ。

アルザス地方をイメージして自家製シュークルート&ソーセージのトッピングも。

りんご&キャラメルのデザートタルトフランベ。クリスピーで甘酸っぱくてヤミー!


この時点でお腹もいい感じに膨れていました。でもここで終わらないのがこの会の贅沢なところ。最後の最後に、この即席オーブンでスフレに挑みました。武井シェフにとってスフレはスペシャリテのひとつ。以前の会でも蒸し焼き式にしたり、昨年はお店のイートインメニューにも登場したほど思い入れのあるスイーツ。それをBBQ場でやってしまうなんて一体!?

泡立てたスフレを耐熱ココットに流して、天板ごと即席オーブンの中へ。
すると、みんなが窯の前に集まって撮影大会が始まりました。刻々と浮き上がっていく生地の様子は生き物のよう。5分かからなかったでしょうか? 焼き色ほどよく見事浮いたスフレ、これにはみな感動しました。熱々のてっぺんをスプーンで開けて、チョコレートソースを入れていただけば、ああ幸せの別腹。ちなみにこのソースのチョコレートも糸井寿史さん提供のベルナッション。力強い風味は薪火にも負けません。

銅製ボウルで泡立てたスフレ生地をココットのふちまで入れて。

集まって動画撮影しているのは…。

即席オーブンの中で膨らんでいくスフレの様子でした。

真ん中にベルナッションのチョコレートソースを入れていただきます。

爽やかさが口に広がるローズマリーとベルナッションのイヴォワール(ホワイトチョコレート)のアイスクリームとテリーヌショコラ。武井シェフが事前に仕込んできてくれました。


パン部門は今年もパナデリアがダッチオーブンを使って焼き上げました。何種類かの粉違いの生地にしたり、赤ワインで仕込んだりと、素材の個性を味わうパンで楽しませてくれました。やっぱりマニアックです。

宮崎県都城の国産小麦「せときらら」のパン

仕込んできたパンも何種類か登場。赤ワインで仕込んだパンはドライフルーツも入って彩もきれい。


午後3時をまわった頃、2台のガトー・ア・ラ・ブロシュにグラス・ア・ローがかけられました。いつもながら壮観です。乾かしている間に片付けをした後は、オ・プティ・マタンへ移動し試食会です。

アルマニャックのグラス・ア・ローを乾かし、コーンから外し立たせたカカオのガトー・ア・ラ・ブロシュ。高さ1mはありそう。

今年も2色のガトー・ア・ラ・ブロシュがテーブルに並びました。毎年のことながら、カットしたとき漂う香りと年輪の断面に酔いしれてしまいます。食べてみると、オレンジ入りプレーンはしっとりソフトでバターの風味がいきいき。カカオの方は、ややしっかり目な食感ながら、カカオの風味を存分に感じられる仕上がり。藤川シェフによると、カカオ生地はゆっくり火入れしたので、プレーンに比べ水分が飛んでいるとのこと。火加減と焼き時間、そのバランスを見極めること。ただ串を回しているだけではないことを改めて知りました。

2種類のガトー・ア・ラ・ブロシュ。外はカリッと中はしっとり〜焼いた日の美味しさも格別。

常連さんとの再会あり、新しい参加者との出会いあり。菓子だけでなく人の輪も重ねることができました。

藤川シェフ、武井シェフ、参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。2018年も、4月の水曜日に開催する予定でおります。ぜひいらしてください。


焼きあがったガトー・ア・ラ・ブロシュと一緒に、今年もいい顔!



参考までに、2016年の様子はこちら↓
http://www.panaderia.co.jp/event_report/partybroche2016/index.html

2015年の様子はこちら↓
http://www.panaderia.co.jp/event_report/partybroche2015/index.html

2013年の様子はこちら↓
http://www.panaderia.co.jp/event_report/partybroche2013/index.html

2012年の様子はこちら↓
http://www.panaderia.co.jp/event_report/party_broche2012/index.html

2011年の様子はこちら↓
http://www.panaderia.co.jp/event_report/party_broche2011/index.html






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