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取材・文 佐々木 千恵美 |
“パナデリアが行く”で、毎年紹介している“ガトー・ア・ラ・ブロシュ”の会。プロのパティシエが薪火で焼くフランス版バウムクーヘンとお料理のイベント。 毎年4月のどこかの水曜日に開催するのですが、今年の開催日、4月25日はまさかの暴風雨。炉に屋根がある会場なので、大概の雨なら決行できるのですが、横殴りの雨には太刀打ちできませんでした。 この10年の間、大嵐で室内プログラムに予定変更となったのはこれで2回目。でも前回の室内編はレポートを公開しなかったので、今回初めて室内編を紹介しますね。 (この会の経緯を知りたい方は、過去のレポートをじっくりご覧ください) その前の日までは天気だったのに何故? 夜中から降り出した雨は朝にはピークとなり、おさまりそうにありません。 「ここまでひどいと、あきらめがつきますよね。」 会場のオ・プティ・マタンに集まった「ラ・スプランドゥール」藤川浩史シェフ、「オ・プティ・マタン」武井晴峰シェフたちとそんな風に話し、12時にみなさんを迎えるための準備をはじめました。 ざっくり話し合って変更されたプログラムはこちら。 * 予定していた武井シェフによるお料理をランチとして提供する。 * 藤川シェフによる、ゼラチンを使わないフレッシュチーズケーキのレシピ講習会をする。 * 武井シェフによる、フィナンシェのレシピ講習会をする。 * レユニオン島産のバニラを使った藤川シェフのアイスクリームと武井シェフのキャラメルバナナソテーのコラボスイーツ。 * 武井シェフによるクレープスフレのデモンストレーション。 ガトー・ア・ラ・ブロシュは場所的に焼くことができませんでしたが、お二人のシェフによるスイーツ講習会は、普通ではありえないこと。目の前で手つきや手順をかぶりつきでみることができる、雨のもやもやも吹き飛ぶ貴重な体験!と思ったのでした。 それでは当日の様子を見ていきましょう。 オ・プティ・マタンの厨房では、武井シェフがガス台にレンガを組み立て、炭火を起こし、ジゴダニョ(仔羊モモ肉)をロースト。毎年メインとなる肉料理で、武井シェフの定点観測的な串焼きの品。ガトー・ア・ラ・ブロシュがスイーツなら、ジゴダニョはサレの串焼き。3kgほどの塊肉の火入れがカギとなる、大勢が集まる会ならではの肉焼きです。 |
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若いパティシエたちはチーズケーキのデモンストレーション用の材料を計量。真剣な眼差しです。 |
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お昼、参加者がぞくぞくとお店に集まり、会はスタート。まずは藤川シェフのデモンストレーション。チーズケーキの土台となるサブレを仕込みます。アーモンド粉や小麦粉ベースの生地に、レユニオン島のバニラ塩やバニラシュガーを加えた生地。これをある程度の厚さにのして型どりして焼きます。 |
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のばした生地をセルクルで型抜き。 |
その後は、武井シェフのお料理でランチタイム。今年のメニューはこんな感じ。
* ハーブ&スモーク塩ポップコーン * アンディーブのサラダ * スープ・ド・ポワッソン ルイユ入りシュー添え * レモンのリゾット * カルツォーネ * ジゴダニョ マッシュポテト入りシュー添え * クレープスフレ * ショコラショ北欧紅茶風味 昨年大人気だったスープ・ド・ポワッソン。今年はルイユを詰めたシュー生地がバゲットクルトンの代わり。パティシエらしいというか、その発想にみなさん驚き。食感もスープに合います。シューはジゴダニョの付け合わせにも登場。こちらはマッシュポテト入りです。イギリスのヨークシャープディングを思わせる感じも面白い。 |
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スープ・ド・ポワッソンを盛り付ける二人のシェフ。 |
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前菜とスープのワンプレート。 |
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途中、藤川シェフのデモンストレーションが入りました。何しろ冷蔵庫で固めるタイプなので、食べて帰るためには先に仕込まなければなりません。差し替えはなしです。 フランス・ブルターニュ産のナチュラルクリームチーズを生クリーム等と合わせ、冷ましたサブレ生地にセルクルをあて、その中に詰めて固めます。ゼラチンも卵も使わず本当にシンプルなのですが、だからこそ素材の選択、配分、混ぜ方、見せ方にプロの加減が求められる、そんな仕事の美しさがありました。 |
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ブルターニュ産のナチュラルクリームチーズの風味を生かしたケーキを仕込む。 |
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焼きあがった生地にセルクルをのせ、チーズフィリングを詰めていく。 |
どんな風にできあがるのか、最後のお楽しみということで、再びランチのテーブルに。外ではあちこち様子を見に飛び回ってしまうので、今回のように参加者のみなさんとゆっくりお話しが出来るのも、室内でのイベントのうれしいところかもしれません。それぞれのテーブルでも会話がはずんでいて、和気あいあいとした雰囲気の中、会が進んでいきました。 |
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リゾットを仕込む武井シェフ。 |
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カルツォーネ。 |
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ジゴダニョ マッシュポテト入りシュー添え。 |
いよいよ武井シェフのデザート、クレープスフレの実演です。昨年はBBQ場の炉を即席窯に作り変えた武井シェフ。今回も即席窯でこれを行う予定でしたがバッケン窯に変更です。それでも窓からフワッとあがるスフレの姿を見られることに変わりありません。窯から出したときの歓声はスフレならでは。ときめきの王道デザートですよね。 |
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新人、スタッフ達が手際よくお手伝い。 |
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クレープにスフレを絞る。 |
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焼きあがったクレープスフレはラズベリーのソルベを添えて。 |
ここでサプライズ! この日ちょうど誕生日を迎えた参加者に、シェフからプレゼントが送られました。「本日の主役」たすきにアイスクリームのフレームメガネ、ガレット・デ・ロワの王冠。粋な計らいです。 |
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当日がお誕生日だった参加者へのサプライズ! |
続いてレユニオン島産のバニラアイスクリームにキャラメルバナナソテーを添えたコラボスイーツが登場。今や超高価となった天然のバニラをたっぷり使ったアイスクリームは、食べた後にフワッと甘い香りが鼻に抜けます。ソテーしたバナナとの相性はいうまでもありません。後日テレビ番組で知ったのですが、これ、タヒチのバニラ農家の定番デザートらしいですね。それならレユニオン島でもきっと。 |
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コラボスイーツは初めて。レユニオン島産のバニラアイスクリームとキャラメルバナナソテー。 |
先ほどのチーズケーキが固まり、お待ちかねの試食です。ゼラチンを使っていないだけに、口当たりがなめらか、チーズの味わいが引き立ちます。クレメダンジュのように何かフルーツを合わせたくなるところをあえて引き算。素材の味をナチュラルに表現することがこのケーキのテーマなのだそう。焼き生地の輪郭があれば、それこそ飽きの来ないおいしさです。 |
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セルクルを外したところ。お店では「とろける濃厚レアチーズケーキ」として販売している(仕上げは異なる)。 |
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ラストは武井シェフのフィナンシェ講習会。ローストしたアーモンド粉とブールノワゼットで作る風味豊かなフィナンシェ。栗の入ったものはお店の看板商品でもあります。それを公開してくださるなんて太っ腹ですよね!本当にありがたい! 生地作りのポイントはもちろん、型にバターと粉を振る作業の仕方で焼き上がりに違いが出ることに目からうろこが落ちるようでした。焼きたてが食べられるのもめったにないこと。考えてみればすごい講習会です。 |
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フィナンシェの生地を仕込む。 | 特別にレユニオン島のバニラネクターを数滴たらしたら型に絞り出す。 |
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焼き上がり。生地の上りが斜めのものは型に塗ったバターと粉が均等でなかったためとのこと。 |
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底の輪もきれいな高さのあるフィナンシェ。焼いたその日はカリっとした表面とふんわり中身のコントラストが味わえる。 |
今回レユニオン島のバニラとベルナッションのショコラを提供してくださったのは昨年もお世話になった糸井寿史さん。世間ではバニラが非常識な勢いで高騰している中、ぎっしり詰まったバニラのボックスはパティシエにとってお宝のようなもの。フレッシュバニラ、バニリンの白くて長い結晶がバニラ棒に付着した状態のジブレ、バニラのフルールドセル、バニラシュガー、バニラネクター等、開いた瞬間のプロたちの驚きとリアクションといったら! |
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レユニオン島のバニラ製品色々。どんなふうに使いましょうか。 |
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ガトー・ア・ラ・ブロシュ用に用意していたお砂糖にはバニラ棒を差し込んでおいた。香りがすごい! |
本当はこれらバニラをガトー・ア・ラ・ブロッシュの生地とグラス・ア・ローに贅沢に使う予定でしたが、来年まで持ち越しです。
予想以上に盛りだくさんの内容となった雨の日プラン。お腹もパンパン。藤川シェフ、武井シェフ、参加してくださった皆さま、糸井様、本当にありがとうございました。 今年は水曜が雨降り確率が多いそうですが、来年はまたBBQ会場で開催できるよう晴れ男、晴れ女を募集します! 我こそはと思う方は、4月の水曜日をあけておいてくださいね。 |
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